カネボウ化粧品、美白化粧品を自主回収

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カネボウ化粧品は7月4日、「美白効果」をうたった化粧品を使った際、肌がまだらに白くなるケースがあったとして、同社と子会社の製品、計約100万個を自主回収すると発表した。
利用者に肌がまだらに白くなる「白斑」と呼ばれる症状が39例報告された。

対象の製品には、同社が独自に開発した「ロドデノール」という成分が配合されていて、カネボウ化粧品では症状との関連性が心配されるとして、この成分が配合されている全ての製品の回収を決めた。  

同社では問題の製品を使用している顧客は約25万人いるとみている。

ロドデノールは白樺やメグスリノキの樹脂に含まれている天然物質 4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノールの美白効果に着目してカネボウ 化粧品が研究開発して、特許を取得した。
2008年には厚生省から薬用美白成分としての承認を得た。


メラニンは身体を紫外線から守り、悪性腫瘍の発生を防ぐが、シミの原因にもなる。
同社のロドデノールは3つのメカニズムでメラニン生成を抑える。

メラニンとは、フェノール類物質が高分子化して色素となったものの総称で、ヒトのメラニンには、 黒~茶褐色をしたユウメラニン(黒色メラニン)と、淡褐色~淡黄色のフェオメラニンの2種類があり、シミやくすみ等の色素沈着はユウメラニンによるものと考えられている。

血中から供給されたチロシンは、銅含有酵素のチロシナーゼによって酸化され、ドーパになり、さらにドーパキノンとなり、ユーメラニン とフェオメラニンが合成される。

ロドデノールの3つの作用:

  1.チロシナーゼ活性阻害作用

ロドデノールはチロシンのかわりにチロシナーゼと結合し、チロシナーゼの活性化を阻害する。

  2.チロシナーゼ分解促進

ロドデノールはチロシナーゼの分解を促進し、チロシナーゼの量を減少させる。

  3.黒色メラニン生成抑制作用

ロドデノールには、ユウメラニンの生成に関わる酵素に働きかけ、その発現量や活性を低下させることで、ユウメラニンを減少させる。

カネボウ化粧品では、シミの生成過程における複数のプロセスにアプローチできるというのがロドデノールの最大の魅力であり、これが他の美白成分と比べて非常に高いシミ予防の効果を示す根拠になっているとしていた。

肌がまだらに白くなることについて、「正直なところメカニズムがわからない」としている。

カネボウ化粧品の直近の年間売上高は約1900億円とみられ、自主回収対象の製品の売上高は国内だけで50億円、このほか、台湾や韓国、タイなどアジアで卸売額ベースで約10億円とされている。

この問題はカネボウ化粧品を買収することで化粧品事業の拡大を図っていた花王にとっても痛手となる。

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カネボウ化粧品は2006年に花王の100%子会社となった。

カネボウは伊藤淳二社長の下、繊維、化粧品、薬品、食品、住宅の5事業をベースに「ペンタゴン経営」といわれる多角化路線を取ったが、二度の石油危機と円高不況で収益環境が悪化した。
経営不振を補うため、「宇宙遊泳」と呼ばれる粉飾取引が行われた。

2004年2月、カネボウは産業再生機構に支援を要請した。

産業再生機構は多くの事業を順次売却、残る事業について入札の結果、カネボウ化粧品を花王に、残るカネボウをアドバンテッジパートナーズ、MKSパートナーズ、ユニゾン・キャピタルの国内投資フアンド3社の連合に売却した。

 

「カネボウ」ブランドはカネボウ化粧品だけが使える契約のため、カネボウ・トリニティ・ホールディングスグループは2007年7月1日付けで社名を「Kracie(クラシエ)」に変更した。

カネボウの歴史と産業再生機構による立て直しの経緯は
   
2007/3/6  カネボウ・トリニティ、社名をカネボウからクラシエに変更

2009年9月に染毛剤最大手のホーユーはクラシエの60%を購入、2012年3月に残る40%も取得し、完全子会社とした。

2009/9/25 ホーユー、クラシエグループ株式の60%を買収

 



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