中国金融危機説

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中国の7月金融危機説がささやかれている。

中国の富裕層の多くは財テクの一環として、投資顧問会社や信託会社などが発行する高利回りの『理財商品』 を購入しているが、ほとんどが不動産投資に流れている。

不動産の値崩れで、その一部は満期を迎えても償還が難しいと懸念されているが、その償還が6月末から7月に集中しているためである。

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中国政府は銀行に厳しい規制を課しているが、信託会社や投資顧問会社などには緩やかで、理財商品のように銀行を経由しない金融取引は「シャドーバンキング」と呼ばれる。

Shadow Banking はPIMCOのManaging DirectorであったPaul. McCulleyの造語で、最初に講演で使用し、後に彼のレポート「Global Central Bank Focus」の中で紹介され、2007年頃から広まるようになった。

地方政府の開発とこれが結び付き、異常に膨張した。(それぞれについては後記)

理財商品残高は中国当局公表では2013年3月末で8兆2000億元(130兆円、GDPの16%)だが、実際には36兆元(GDPの7割) との説もある。

金融当局も規制・介入できない状況で、情報開示も不足しており、当局も含め誰も実態を把握しきれていない。

不動産バブルの崩壊で返済が不能となる恐れがあるが、 これらの商品では、債務不履行時の損失を誰が負担するかが曖昧なまま、高利回りをうたって資金を集めている。

米国のサブプライムローンと同じ構造である。

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背景には2つの問題がある。

1)人民銀行の金利規制

現在は、1年物の定期預金は基準金利が3.0%、金利上限が3.3% となっている。
(貸出金利は基準が6.0%、金利下限が4.2%)    

定期預金金利は2012年初めまでは消費者物価を下回っていた。現在でもネットでは1.3%程度である。

このため、富裕層は10%程度の高金利を謳い文句にする理財商品を購入した。

また、国営企業などは、幾らでも銀行から金を借りることができるため、多額の余裕資金を抱えており、資金を有利に運用するため、これを利用した。

2)地方政府の開発投資

2008年のリーマン・ショック時に中国政府は4兆元の経済対策を打ったが、地方政府は競って大規模投資を行った。
この時、地方政府は「融資平台」と呼ばれる開発会社を設立、資金調達と開発を行わせた。

運用先を探していたシャドーバンキングの資金がそこに流入した。

実際には、地方政府が建設した巨大なマンション群は多くが売れ残っている。
江蘇省常州市や内モンゴルのオルドス市、遼寧省営口市などには「鬼城」(Ghost town)がある。

 

中国の金融危機は経済危機につながり、日本や米国の経済にも大きな影響を与える可能性がある。

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中国の国務院は7月5日、シャドーバンキングの膨張で起こりかねない金融リスクを厳しく防ぐことなどが柱の金融行政・政策の指針を公表した。

声明では、中国経済は安定しているが、構造的問題はあり、資本の不適正配分が構造改善を妨げていると述べ、指針は先進的な製造業や新興産業などの"real economy"が必要な資金面のサポートを得られることを目的としている。

過剰能力を抱える産業では差別的支持政策をとり、競争力のある企業が資金サポートを得る。

信用供与はリーズナブルなレベルを維持するとしており、成長のために流動性を高めるのではなく、経済安定化のためのリストラクチャーリングに重点を置く。

経済安定化のため、多くの種類の財政的リスクを防ぐとし、シャドーバンキングの管理を強化する。


付記

中国人民銀行は7月19日、貸出金利下限規制を撤廃すると発表した。

貸出金利の下限撤廃で銀行間の競争を促し、企業の資金調達コストを引き下げる狙いがあるとみられるが、預金金利については自由化を見送ったため、預金金利の3%が事実上の下限となる。

これまではは基準金利が上限となっていた。今回、これを1.1倍までとした。

 

   預金金利

貸出金利
基準 上限 基準 下限
従来      3.50% 基準x1.0   3.50%   6.56% 基準x0.9 5.904%
2012/6改正      3.25% 基準x1.1  3.575% 6.31% 基準x0.8  5.048%
2012/7/5追加

3.00%

基準x1.1  3.30% 6.00% 基準x0.7 4.200%
2013/7/19改正   ↓      ↓  ↓

下限撤廃

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