同社では石油や石炭などの化石資源への依存度を最小限にすることを目指した「石油外天然資源タイヤ」の開発に2001年から取り組んでおり、2006年には石油外天然資源の使用比率を70%に高めた「エナセーブ ES801」を、2008年には同割合を97%にまで高めた「エナセーブ 97」を発売した。
天然ゴムの比率を多くするとブレーキ性能等のグリップ力の低下や耐磨耗性の悪化が避けられず、タイヤとしての性能は確保できないのが問題であった。
ダンロップは天然ゴムの分子構造を改良してその難関を克服した。「エナセーブ 97」は従来のトレッド部に加え、天然ゴムの使用が難しいサイドウオールやインナーライナの部分にも、天然ゴムを改質して使用できるようにし、脱石油資源を大幅に進めた。
その一方で、タイヤの「転がり抵抗」を従来品と比べて35%も削減し、燃費も格段に向上させた。このほか、鉱物油を植物油に、合成繊維を植物性繊維に代替、カーボンブラックの一部をシリカに代替し、97%まで高めた。
残り3%の原材料を天然資源化する研究を進めてきた結果、
「老化防止剤」と「加硫促進剤」については、原材料化合物をバイオマス資源から特殊触媒により合成に成功、
「カーボンブラック」については、植物由来の油分から、従来と同等の性能を有するカーボンブラックを製造することに成功した。
同社の特許に下記がある。
グルコースを微生物によって安息香酸・安息香酸誘導体に変換
(または植物から安息香酸・安息香酸誘導体を抽出)
↓
得られた安息香酸・安息香酸誘導体をアニリン・アニリン誘導体に変換
↓
老化防止剤、加硫促進剤を製造
2011年に開催された「第42回東京モーターショー2011」で「100%石油外天然資源タイヤ」のプロトタイプを発表、その後、耐久性などの信頼性の評価と量産化技術の確立に向けた開発を進めた結果、11月の「第43回東京モーターショー2013」で発表し、同時に発売を開始する。
一般タイヤ 石油外天然資源タイヤ 合成ゴム 天然ゴム
改質天然ゴム鉱物油 植物油 カーボンブラック シリカ
植物由来の油分からのカーボンブラック合成繊維 植物性繊維 老化防止剤
加硫促進剤バイオマス由来原料化合物
同社では今後、石油外天然資源タイヤからの進化技術として、高機能バイオマス材料を開発し、商品化につなげていくとしている。
高機能バイオマス材料による商品化技術は、2016年に第1世代、2020年に第2世代を確立する予定。
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ブリヂストンも、再生可能原料のみを使った理想のタイヤ技術を目指している。
2012/5/30 ブリヂストン、再生可能原料のみを使った理想のタイヤ技術を目指す
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住友ゴム工業は当初、英国のDunlop
Rubber の日本工場としてスタートした。
1963年に住友ゴムとなり、1999年にGoodyearと全世界のタイヤ事業で提携、2003年にオーツタイヤと合併。
この結果、ダンロップ、グッドイヤー、ファルケンの3ブランを持つ。
英国 Dunlop Rubber |
日本 住友ゴム工業 |
米国 Goodyear Tire & Rubber |
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1888 | John Boyd Dunlop が空気入りタイヤを発明 | ||
1889 | Dunlop Rubber 設立 | ||
1898 | 設立 | ||
1909 | Dunlop Rubber の神戸工場 | ||
1917 | 法人化、ダンロップ護謨(極東) | ||
1960 |
住友グループが30%出資 (住友電工、住友商事) |
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1961 | 長銀出資(日本側50%) | ||
1963 | 日本側56%、住友ゴム工業に改称 | ||
1980代 前半 |
経営悪化 | ||
1983 | 住友ゴム持株40%全てを売却 | 日本側100% | |
1984 | 英独仏6工場を住友ゴムに売却 | Dunlopの英独仏6工場を買収 | |
1985 | BTRがDunlop 買収 タイヤ部門は住友ゴムに売却 (他の部門も順次売却) |
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1986 | Dunlop USAを住友ゴムに売却 | Dunlop USA 買収 | |
1999 | (左により) Dunlopタイヤ部門は Goodyear 75%/住友ゴム25% |
欧州、北米、日本でのタイヤ事業のアライアンス 日本を含むアジア市場は住友ゴム |
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2003 | オーツタイヤと合併 (ファルケンブランド) |
現在の状況
住友ゴム(SRI) 持株
Goodyear Dunlop
Tires Europe 30%
Goodyear Dunlop Tires North America 30%
Goodyear-SRI Global Purchasing Co. 20%
住友ゴムへの出資 Goodyear 1.3%
1999年のGoodyearとの提携について、当時、「住友ゴム救済のための提携」と噂された。
住友ゴムは1980年代前半に欧米で工場を買収し、その設備更新などに資金をつぎ込んだため、資金収支が悪化しており、メーンバンクの日本長期信用銀行が1998年に国有化されたこともあって、同社の安定性が問題視されていた。
住友ゴムは欧米での主導権をGoodyearに渡した。
見返りとして、欧米での合弁会社2社設立で、製造設備などを現物出資して、25%出資としたが、資産価値と出資分との差額の9億3600万ドルをGoodyearから受け取り、負債返済に当てた。
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世界のタイヤの現在のシェアは以下の通り。
Goodyear/住友連合としては14.9%となり、ブリヂストン、ミシュランと並んだ3強となる。
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