田辺三菱製薬、仲裁裁定で117百万ドル受領

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田辺三菱製薬は8月8日、同社が日本で販売する抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤「レミケード®点滴静注用100」(REMICADE、一般名:Infliximab)に関し、Janssen Biotech(Johnson & Johnson子会社)に対して、開発販売契約に基づく供給価格の改定を求める国際商工会議所(ICC)への仲裁申立を行っていたが、これに対し、供給価格を低減すべきとの仲裁判断を受領したと発表した。

これに基づき、過年度分(2008年4月~2013年3月)の供給価格の精算金額として約117百万米ドルをJanssenから受領した。

レミケード®は、Janssen(旧 Centocor Biotech) が創製した関節リウマチ等の治療薬で、1993年に田辺製薬が、日本及びインドネシア、台湾における本剤の開発・販売に関する契約を締結し、2002年にクローン病治療薬として日本での販売を開始した。

田辺製薬は2007年10月1日に三菱ウェルファーマと合併し、田辺三菱製薬となった。

現在では、関節リュウマチ、クローン病、乾癬、潰瘍性大腸炎、ベーチェット病による難治性網膜ぶどう膜炎、強直性脊髄炎治療薬として販売され、2012年の売上高は前年比10.8%増の735億円となっている。

仲裁申立ての背景は明らかでないが、田辺三菱製薬は2009年に、田辺に日本での販売権を与えていた両社のDistribution Agreement をもとに、Centocor Ortho Biotechの親会社のJohnson & Johnson に対する調停申し立てを行った。

これに対し、相手側は供給価格の引き上げを提案した。

このことと、後述のMerckとJohnson & Johnsonの間の調停とを勘案すると、親会社となったJohnson & Johnsonが田辺製薬と三菱ウェルファーマの合併を理由に、販売権の打ち切りを提案したのではないかと推測される。

田辺三菱製薬は仮価格として相手側の提案価格で支払いを行い、調停を継続した。

Johnson & Johnson側の発表によると、調停パネルは2011年8月に、田辺三菱が供給価格引き下げを求めることができるとした。
2011年11月には価格を決めるヒアリングが行われ、2013年2月には田辺三菱に有利な判断が下された。

Johnson & Johnson側はこの時点で返金額の引き当てを行い、その後詳細が協議されてきた。

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Janssen Biotechは旧称 Centocor Biotechで、1979年にPhiladelphiaで設立された。

Centocorは1999年にJohnson & Johnsonの100%子会社となり、2008年にOrtho Biotechと合併してCentocor Ortho Biotechとなった。

2011年6月にCentocor Ortho BiotechはJanssen Biotechに改称した。

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Remicadeは当初、
 米国ではCentocor Ortho Biotech(現在のJanssen Biotech)
 日本、インドネシア、台湾では田辺三菱製薬
 中国では子会社のXian Janssen(1985年設立、Johnson & Johnson 子会社)
 その他地域ではSchering-Plough
が販売していた。

2009年にMerck & Co., Inc. がSchering-Plough と合併することで合意したと発表した。

2009/3/11 米Merck、米Schering-Plough を買収

2009年5月、Centocor Ortho Biotechの親会社のJohnson & Johnson はSchering-Plough のMerckとの合併を理由に、Remicadeの販売権の取り消しを求めて調停にかけた。
契約上、
Schering-Plough が売却された場合は、販売権を取り消すとの条項があった。

MerckはSchering-Ploughとの合併契約では、この条項は適用されないとして強く反発した。

調停の結果、両社は2011年4月に以下の点で合意した。

Schering-Ploughはカナダ、中南米、中東、アフリカ、アジア太平洋(売上高で30%)の権利を放棄する。
・欧州、ロシア、トルコ(売上高で70%)については従来通り、独占権を維持する。
・欧州、ロシア、トルコでの利益配分比率を変更する。
  従来はSchering-Ploughが58%、Centocor Ortho Biotechが42%、
  これを2014年に50/50となるよう、順次調整する。

詳細は不明だが、田辺三菱製薬の場合も、恐らく当初はJohnson & Johnsonが田辺製薬の合併を理由に販売権の取り消しを求め、これが無理と分かり、利益配分率の変更を求めたものと思われる。



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