日揮、日本初の二酸化炭素の分離回収・貯留実証試験事業にBASFのガス精製技術を導入

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BASFは8月22日、日揮との間で、BASF のガス精製技術 OASE®のライセンス契約を締結した と発表した。

日揮が苫小牧に建設する日本初のCCS (Carbon dioxide Capture and Storage:二酸化炭素の分離回収・貯留)トータルシステムの実証設備に技術をライセンスする。

出光興産北海道製油所の水素製造装置から供給される燃料ガスに含まれる二酸化炭素( CO2 )を回収するもので、年間約 20 万トンの CO2 を回収する。
また、この技術によるガス精製処理後の主に水素とメタンからなるクリーン・ガスを、CCS 設備で使用するスチームや電気などの生成に利用することができる。

BASF のガス精製技術は、その他の方法と比べて、分離回収にかかるエネルギー消費量が少なくて 済む。
ライセンスには、ガス精製技術に加え、必要な薬液と関連サービスも含まれる。

東洋エンジニアリングのホームページでは、同社は1984年にBASFのOASEプロセスのAuthorized Engineering Companyとなり、ライセンス及び基本設計の代行業務を行っているとなっている。

事情不明だが、今回は日揮が受注したため、日揮との間でライセンス契約を結んだと思われる。

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2008年5月、地球温暖化対策としてのCCSを推進するという国の方針に呼応する形で、電力、石油精製、石油開発、プラントエンジニアリング等、CCS各分野の専門技術を有する大手民間会社が結集して日本CCS調査株式会社が設立された。

経産省は2020年以降のCCS実用化(年間100万トン規模)に向けて実証試験を 計画、2008年度より複数の候補地で地質調査等を進め、2011年12月に北海道苫小牧を実証試験地として選定した。

2012年2月、日本CCS調査に二酸化炭素を含有する原料ガスから二酸化炭素を分離・回収し、圧縮から輸送、圧入、地中貯留、モニタリングまでを一貫して行う実証試験事業 を委託した。

日揮は日本CCS調査による入札の結果、原料ガスから二酸化炭素を分離・回収・圧縮し、圧入井への輸送を行う本事業の地上設備に係る設計、機材調達、建設工事および試運転役務を担当 する。

最大年間20万トンの二酸化炭素を分離・回収・圧縮する設備と地下へCO2を圧入する設備を設計・建設するとともに、2坑の圧入井 (海底下約1,000mと約3,000m)を掘削する。
納期は2016年1月末となっている。

概要は以下の通り。

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日本CCS調査のホームページでは世界の主なCCSプロジェクトを紹介している。(一部修正、補足)

  立地 圧入開始 貯留 圧入量  
ノルウェー Sleipnerガス田
(北海)
1996 海底下800m〜1000m
炭化水素貯留層の上にある深部塩水層
年間100万トン StatoilHydroが開発する天然ガスには基準(2.5%)より多い9%のCO2が含まれるため、余分のCO2を回収。

Snoehvit ガス田
バレンツ海)
2008 海底下2600m
塩水層
年間70万トン 天然ガスからCO2を分離、圧入

カナダ Weyburn

 

2000 地下1500m 年間100万トン North Dakotaで石炭ガス化で分離したCO2を323kmのpipelineで輸送し、油層に圧入 し、石油増進回収(EOR=enhanced oil recovery)に使用
アルジェリア In Salah
 
2004 地下1800m
深部の塩水層
年間100万トン 天然ガスからCO2を分離、圧入

フランス Lacq
(実証)
 
2009 地下4500m 12万トン/2年 発電プラントからのCO2を生産終了ガス田に圧入
(Totalが担当)

豪州 Otway
(実証)
 
2008 地下2050m 6.5万トン/3年 ガス田からのCO2を枯渇ガス田に圧入

米国 Mountaineer
(実証)
 
2009 地下2500m 3.7万トン/2年半 石炭火力発電プラントからのCO2を帯水層に圧入
American Electric Powerとエネルギー省がコストを 分担)

2011年に商業規模での事業化を凍結
米国での不明確な温暖化政策や経済状況の低迷を考慮




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