旭化成ケミカルズと三菱化学は8月2日、2011年4月1日から西日本エチレン有限責任事業組合として運営している水島地区の両社のエチレンセンター(いずれもエチレン能力 50万トン/年:非定期修理年)の集約について合意したと発表した。
両社は2009年6月に水島コンビナートでエチレン事業を統合することを検討していることを発表した。
2009/5/19 三菱化学と旭化成、水島でエチレン統合
その後、中国需要の急回復で統合を急ぐ必要性が薄れたこと、3年後をメドに2基のうち1基を停止・廃棄する考えだったが、どちらの設備を止めるかで交渉が難航したことで、一時は破談の危機を迎えたとされる。
設備能力削減については将来の需要をみて統合会社で柔軟に判断するとの方針に転換し、1年遅れで合意にこぎ着け、2010年5月に水島地区エチレンセンターの統合について発表した。
2010/6/2 三菱化学と旭化成、水島地区エチレンセンター統合の共同出資会社の設立
両社は折半出資で西日本エチレン有限責任事業組合を設立し、2011年4月から、水島地区の両社のエチレンセンター事業の一体運営を開始した。
エチレン需要3割減を前提とした減産体制を取り、更にエチレン需要が縮小すれば、その時点でエチレンを1基に集約するとした。2011/3/1 三菱化学と旭化成、水島地区エチレンセンター統合のためのLLP設立
国内需要の縮小、中東・中国での供給能力拡大、シェールガス革命を背景とした米国での供給能力拡大など、石油化学事業を取り巻く環境は今後も厳しさを増していくものと予想されることから、両社は現行の体制のままでは事業存続が困難になるとの共通認識のもと、両社の水島地区におけるエチレンセンターを1基に集約し、最適生産体制による効率的な事業運営を確立することで合意したもの。
概要は以下の通り。
集約時期の目処 : 2016年春 対象製品 : エチレン、プロピレン
C4、分解ガソリン、粗水素その他の副生ガス(メタン、エタン、プロパン)、ヘビーエンド集約の方法 : 三菱設備(50万トン/年:非定期修理年)に集約 運用の形態 : 50/50JVで共同運用
JV形態は今後検討
設備の集約により、各社50億円ずつ、合計100億円のコスト削減を見込む。人員は配置転換などで対応する予定。
会見で、誘導品をどうするかについての質問には「ノーコメント」であった。
集約時期を2016年春としたことについては、「誘導品でどう対応していくかや顧客への説明、サプライチェーンを構築するのにその位は当然かかる」としているが、上記の通り、2009年6月には既に統合を検討している。
どちらを止めるか決められず、エチレン需要3割減を前提とした減産体制を取り、更にエチレン需要が縮小すれば、その時点でエチレンを1基に集約するとしたため、1基に集約する検討はこれまでしていなかったものと見られる。
三井化学と出光興産の千葉ケミカル製造有限責任事業組合についても、1基への集約ではなく、稼働率を70%まで落としても高効率な安定運転を維持できる改造を行った。
2012/9/7 三井化学、千葉地区における石化事業の構造改革
日本の現在のエチレン能力は定修スキップ年ベースで8,000千トンとなっている。(定修ベースでは7,210千トン)
これまでに発表された三菱化学鹿島、住友化学千葉と今回の旭化成水島の停止を加算すると、能力は6,741千トンとなる。
工場別能力一覧表 定修スキップ年 単位:千トン/年 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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能力はMETI発表による。(公称能力と若干異なる)
これに対し、2012年のエチレンの内需は4,941千トンであった。
(エチレン生産 ーエチレン換算輸出+エチレン換算輸入)
このため、3工場が停止しても、定修スキップベースで170万トン、定修ベースで100万トンがまだ過剰となる。
国内需要の縮小、中東・中国での供給能力拡大、シェールガス革命を背景とした米国での供給能力拡大などを考えると、更なる縮小が必要である。
従業員を移転できるかどうかがキイとなるが、出来ないからといって放置すると、共倒れになるのは必至である。
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