牛の筋肉組織の幹細胞から作った人工肉(Cultured Beef )のハンバーガーを調理、試食するデモンストレーションが8月5日、ロンドン市内で開催された。
オランダのMaastricht UniversityのProfessor Mark
Post が開発したもので、幹細胞を培養し、3カ月かけて作った筋肉組織2万本分の人工肉に、パン粉と粉末卵を加えて味を調えた。
人工肉の色は白のため、赤かぶの汁とサフラン、それにカラメルを入れて、焼いても肉と同じような色になるように調製した。
作製にかかった費用は375千ドルで、Googleの創業者の一人Sergey Brin が資金を提供した。
牛の筋肉組織からとった幹細胞に栄養と成長を促進する化学物質を与えて培養し、3週間後の数百万個になったところでペレットにして冷凍する。これを何度も繰り返して、たくさんできたところでハンバーガーパテにしたという。
製法の詳細は下記YouTubeにある。
http://culturedbeef.net/resources/#video
牛の筋肉組織から採取した幹細胞を培養し、Myotube(筋管)をつくる。
筋管は gel hub に入れると成長し、筋繊維に成長する。
培養された筋肉繊維には栄養を運ぶ血管は存在しないため、成長過程では細胞に人工的に栄養素が与えられた。
人工肉は自発的には運動しないため、筋肉が衰えないよう、人工肉に対してストレッチやマイクロエクササイズも施された。
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これを集める。
人工肉には血液が含まれないため着色された。
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本事業の発想を ホームページで次のように述べている。
国連食糧農業機関(FAO)によると、次の40年で肉の需要は2/3以上増大し、現在の畜産方法では対応できない。
何か代替方法を見付けない限り、近い将来に需要増大により肉も他の主食も高価な贅沢品となってしまう。また家畜(特に牛、羊のゲップ)は一酸化炭素より20倍以上強いメタンを放出するため、地球温暖化の原因の一つであり、畜産増大はメタン、一酸化炭素、窒素酸化物のレベルを増大させることともなる。
人工肉(Cultured Beef )はよりサステナブルなオプションとなりうる。
環境負荷がどうなるかについて、2011年に環境評価(Life
cycle assessment)が発表されている。
http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/es200130u?journalCode=esthag
大規模生産の場合で、筋肉組織の成長の栄養・エネルギー源としてCyanobacteria hydrolysateを使うとしている。
池などで増やした藍藻を採取し、殺菌、乾燥させて、それを人工肉の培養器に入れる。
(栄養・エネルギー源として太陽エネルギーを利用していることとなる。)
結果は以下の通り。
Cultured beef 1,000kg生産での消費量、排出量
エネルギー 26-33 ギガジュール
土地 190-230 m2
水 367-521 m3
温室効果ガス排出 CO2換算1900-2240 kg
これを畜産(牛、羊、豚、鶏肉)と比較すると、エネルギー消費でのみ鶏肉に劣るが、他の点ではすべて人工肉が優れている。
温室効果ガス排出と土地・水利用はほとんど無し。
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