2013年 Ig Nobel 賞、日本の2チームが受賞

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2013年のIg Nobel 賞は9月12日に発表され、ハーバード大学で授賞式が行われた。


日本からは「心臓移植したマウスにオペラを聴かせると生存期間が延びた」との実験結果を発表した帝京大医学部外科の新見正則准教授のグループが「医学賞」を受賞した。

研究グループがマウスの着ぐるみを着て授賞式に現れ、「椿姫」の曲を歌うと会場から笑いが沸き起こった。

ハウス食品の今井真介研究主幹のグループも「タマネギの催涙成分をつくる酵素」の発見で「化学賞」を受賞した。発見に貢献した石川県立大の熊谷英彦学長が共同受賞者となった。

今井主幹が「これまでたまねぎに泣かされてきたすべての人々にこの賞を贈ります」とあいさつ、会場から喝采を浴びた。

日本人はこれまで、2005年までに11件、2007-2012年に1件ずつ計6件、合計17件の研究でイグ・ノーベル賞を受賞しており、7年連続の受賞となった。(合計 19件、うち1チームが2度受賞)


医学賞:帝京大医学部外科の新見正則准教授のグループ

心臓移植手術をしたマウスは免疫を抑制しないと拒絶反応が起き、平均7日で死んでしまう。

移植後7日間にわたりオペラ「椿姫」を聴かせると、平均で26日間生きた。最長約100日間も心臓が動き続けた。
モーツァルトなら20日間、アイルランドの人気女性歌手エンヤの歌だと11日間だった。
地下鉄の雑音ではだめ。
鼓膜を壊すと効果はないため、音楽が脳を介して免疫反応に影響していると考えられる。

長生きしたマウスの体内では、免疫を抑制する細胞が増えていた。

化学賞:ハウス食品の今井真介・研究主幹のグループ、石川県立大学の熊谷英彦学長

タマネギを切ると涙が出てくる成分は、タマネギやニンニクの風味をつくる成分と同じ酵素でつくられると考えられてきた。

レトルトカレーの製造過程でニンニクとタマネギを一緒に炒めると、緑色に変色する現象が起きた。
その理由を解明中に、タマネギの催涙成分としてすでに知られている酵素とは別に、もう1種類の新たな酵素を発見した。

この酵素と、たまねぎに多く含まれているアミノ酸を反応させると、涙を誘う「催涙物質」が作られ、目を刺激し、涙が自然と出てくる仕組みになっていることが分かった。

その後、この酵素の働きを止めることで、切っても涙が出ないタマネギを作ることに成功している。
また、この酵素をドライアイの検査に応用する研究が進んでいる。



今回の受賞一覧は下記の通り。

  受賞者 受賞理由 参考文献
医学賞 Masateru Uchiyama
Xiangyuan Jin
Qi Zhang
Toshihito Hirai
Atsushi Amano
Hisashi Bashuda
Masanori Niimi 
心臓移植したネズミにオペラを聞かせた場合の影響の評価

 

 

"Auditory stimulation of opera music induced prolongation of murine cardiac allograft survival and maintained generation of regulatory CD4+CD25+ cells"
 
Journal of Cardiothoracic Surgery, vol. 7, no. 26, epub. March 23, 2012.
心理学賞 Laurent Bègue
Brad Bushman
Oulmann Zerhouni
 Baptiste Subra
Medhi Ourabah
自分が酔っていると考える人は自分のことを魅力的と考えていることを証明
 

 

"'Beauty Is in the Eye of the Beer Holder': People Who Think They Are Drunk Also Think They Are Attractive"

British Journal of Psychology, epub May 15, 2012.
生物学賞&
天文学賞
Marie Dacke
Emily Baird
Marcus Byrne
Clarke Scholtz
Eric Warrant
dung beetles(フンコロガシ)が道に迷った場合、天の川を道しるべに帰巣することを発見

 

"Dung Beetles Use the Milky Way for Orientation"
 
Current Biology, epub January 24, 2013.
安全工学賞 Gustano Pizzo
(2006年
死去)
飛行機のハイジャック犯を捕える装置の発明

犯人を通路に仕掛けた穴に落とし、箱に閉じ込め、特別に装備した爆弾倉の ドアから落とし、パラシュートで落下した犯人を無線で知らせを受けた警察が逮捕するシステム

US Patent #3811643
"anti hijacking system for aircraft"
(May 21, 1972)
物理学賞 Alberto Minetti
Yuri Ivanenko
Germana Cappellini
Nadia Dominici
Francesco Lacquaniti
人によっては、池の表面を走れる身体能力がある可能性を発見、ただし、月面であることが条件 "Humans Running in Place on Water at Simulated Reduced Gravity"
 
PLoS ONE, vol. 7, no. 7, 2012, e37300.
化学賞 Shinsuke Imai
Nobuaki Tsuge
Muneaki Tomotake
Yoshiaki Nagatome
Toshiyuki Nagata
Hidehiko Kumgai
玉ねぎを切って涙が出るのは、これまで科学者が考えていたよりもっと複雑な生化学プロセスがあることを発見 "Plant Biochemistry: An Onion Enzyme that Makes the Eyes Water"

Nature, vol. 419, no. 6908, October 2002, p. 685.
考古学 Brian Crandall
Peter Stahl
湯通ししたトガリネズミの死骸を噛まずに飲み込み、その後数日間排泄物を入念に観察し、人間の消化器系内でどの骨が消化され、どの骨が消化されないかを確認 "Human Digestive Effects on a Micromammalian Skeleton"


Journal of Archaeological Science, vol. 22, November 1995, pp. 789-97.

平和賞 Alexander Lukashenko
(Belarus大統領)
公共の場で拍手をすることを違法とした大統領と、腕が1本しかない男性を拍手をした罪で逮捕した同国の警察が共同受賞。  
確率賞 Bert Tolkamp
Marie Haskell
Fritha Langford
David Roberts
Colin Morgan
ウシは横たわっている時間が長くなればなるほど、もうすぐ立ち上がる確率が高くなるが、1度立ち上がったウシがいつになったら次に横たわるかを予測するのは難しいことを発見
 

 

"Are Cows More Likely to Lie Down the Longer They Stand?"

Applied Animal Behaviour Science, vol. 124, nos. 1-2, 2010, pp. 1-10.
公衆衛生賞 Kasian Bhanganada
Tu Chayavatana
Chumporn Pongnumkul
Anunt Tonmukayakul
Piyasakol Sakolsatayadorn
Krit Komaratal
Henry Wilde
切除ペニスの再吻合技術
但し、切除されたペニスの一部がアヒルに食べられた場合は適用できない。


1983年の論文。
タイでは1970年代に浮気をした夫のペニスを妻が切断するのが流行った。

タイの家庭ではアヒルを飼うのが一般的であった。

"Surgical Management of an Epidemic of Penile Amputations in Siam"


American Journal of Surgery, 1983, no. 146, pp. 376-382.

 

過去のイグ・ノーベル賞については、下記を参照。

2006/10/13 ノーベル賞とイグ・ノーベル賞
2007/10/8  2007年イグ・ノーベル賞
2008/10/4  2008年イグ・ノーベル賞
2009/10/3 
2009年イグ・ノーベル賞
2010/10/7  2010年ノーベル化学賞とイグ・ノーベル賞
2011/10/1  2011年度イグノーベル賞 
2012
/9/25   2012年 Ig Nobel 賞に日本人の「スピーチジャマー」

 

このうち、中垣俊之教授らのチームは、2008年に真正粘菌変形体という巨大なアメーバ様生物が迷路の最短経路を探し当てることができることを発見し認知科学賞を受けたが、2010年にはその延長で、粘菌が交通網を整備することを発見し、交通計画賞を受賞した。

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