FDAは9月13日、Ranbaxy Laboratoriesのインドのパンジャブ州のMohali 工場で生産された医薬品の輸入を差し止めるという輸入警告(import alert)を発表した。これはRanbaxy がFDAが定める米国の製造規範 CGMP (Current Good Manufacturing Practices)に適合するまで継続される。
FDAは2012年の9月と12月のMohali工場の検査で、 製造上の問題点を適切に調査しなかった、品質確保のために適切な手順を作らなかった等の、重大なCGMP違反を発見した。
FDAの責任者は、「FDAは米国市場で使用される医薬品が政府の決めた品質基準に適合することを保証するため、権限をフルに活用する。米国の消費者に対し、医薬品が高品質であると確信してもらいたい。FDAは安全でない可能性がある医薬品が米国に入るのを防ぐため、努力を続ける」としている。
FDAはまた、2012年1月のRanbaxyの終局的差止の同意(下記)にMohali工場を含めることを命じた。
この結果、Ranbaxyは、Mohali工場での医薬品製造の方法、設備、管理がCGMPに従がって確立、運営、管理されるまでの間は、Mohali 工場でFDA承認医薬品の製造や、同工場から米国に医薬品を輸出することを禁止される。
第三者の専門家を雇い、Mohali工場の完全な査察を行わせ、設備、製法、プロセス、管理が、今後継続してCGMPに準拠しうるに適切であることをFDAに認証させることが求められる。
FDAが満足した時点で、Mohali工場でのFDA承認医薬品の製造、出荷の再開が認められる。
付記 第一三共は9月24日、以下のコメントを発表した。
第一三共はランバクシーとともに、パオンタサヒブ工場ならびにデワス工場に関する同意協定書に基づき、データの信頼性確保および品質保証の強化に取り組んでまいりましたが、今回のFDA の措置を真摯に受け止め、今後更に、量的にも質的にも一層踏み込んだ取組みをグループの総力をあげて強化し、FDA が抱く懸念を解消するために必要なあらゆる対策をとってまいります。
Ranbaxyは2012年4月、高コレステロール血症治療剤アトルバスタチンカルシウム錠(アトルバスタチン錠:PfizerのLipitorの後発品)
を「最先端技術を結集した」Mohali経済特区の工場から米国向けの輸出を開始したことを発表した。
米国向け製剤の輸入禁止措置が講じられて以来、初のインド工場からの米国向け製剤輸出再開となる。
第一三共は2011年12月1日、Ranbaxy Laboratoriesが高コレステロール血症治療剤アトルバスタチンを米国にて発売したと発表した。
11月30日にPfizerのアトルバスタチン(商品名Lipitor)の特許が切れた。Ranbaxyは同日付で、略式新薬承認申請に対する販売承認を米国食品医薬品局(FDA)より取得した。また、同社は発売から180日間の独占販売期間を得た。
Ranbaxyは当初、後発品の原体をインドでの生産を検討していたが、米国への輸入が未承認のため、Teva Pharmaceuticalに原体の生産を委託し、製剤は米国子会社のOhm Laboratories, Inc. で行うこととした。
2011/12/5 第一三共子会社 Ranbaxy、米国で「リピトール」の後発品を発売
Mohali製剤工場は2011年10月に米国食品医薬品局(FDA)から承認された。その後、2012年第1四半期にアトルバスタチン錠の同工場における製造販売承認を受領した。
今回の差止めにより、米国での販売は従来通り、Teva Pharmaceuticalに原体の生産を委託し、製剤は米国子会社のOhm Laboratories, Inc. で行うと思われる。
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米国食品医薬品局(FDA)は2008年9月16日、ランバクシー・ラボラトリーズの医薬品30種以上の輸入を一時停止した。
医薬品の安全性に問題はないが、ランバクシーのインドのDewasとPaonta
Sahibにある2つの工場で、製造器具の洗浄状況、生産管理、品質管理などに関する記録の保存に関して問題が改善されていないためとしている。
また、FDAが1月から3月にかけて問題の2工場を査察した際、抗生物質の取り扱い方法にも問題が発見されたという。
2009/1/8 第一三共、ランバクシーの評価損計上
第一三共は2011年12月21日、インド子会社のRanbaxy Laboratoriesが米国FDAと同意協定書を締結したと発表した。
Ranbaxyは、データの信頼性を確実にするための手段や方針を更に強化し、現行の適正製造基準を遵守することを確約することとなった。
2011/12/28 ランバクシー、米FDAと同意協定書締結
この同意協定書は、メリーランド地区合衆国連邦地方裁判所の承認を条件としているが、司法省は2012年1月にFDAに代わり、終局的差止の同意(consent decree of permanent injunction)を提出し、承認された。
Ranbaxyはその後、虚偽請求禁止法(False Claims
Act)の違反に関し、米国政府その他関係する州との間で民事上の和解に関する合意を行い、また、これに加え、Ranbaxy USA
Inc.は、連邦食品医薬品化粧品法等の違反について有罪を認めた。
これにより、Ranbaxyと司法省の協議は2013年5月に終結に至った。
Ranbaxyの支払額は、合計で約500百万米ドルとなった。
第一三共は2013年5月に、「当社は、Ranbaxyの特定の以前の株主が、DOJおよびFDAの調査に関する重要な情報を隠蔽したものと判断し、現在、法的な措置を講じております」と述べた。
第一三共は2008年6月11日、Ranbaxy Laboratories 及び創業家一族との間で、同社の議決権総数の50.1%以上を取得する契約を締結したと発表した。
2008年8月16日から2008年9月4日までの間、公開買付けを行ったうえ、創業家一族からの取得、第三者割当増資、新株予約権の引受けを行い、11月7日に、ランバクシー株の63.9%を取得したと発表した。
FDAによるRanbaxyの医薬品30種以上の輸入の一時停止はTOB直後の2008年9月16日で、6月の契約締結までに調査があった筈で、その事態を第一三共に伝えていなかったのではないかと思われる。
第一三共は2009年3月期第3四半期に、Ranbaxyについて、3,540億円ののれん一時償却を行った。
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