中国の習近平主席は9月7日、訪問先のカザフスタンの大学での講演会で、「シルクロード経済ベルト」と呼ぶ中央アジア諸国などとの経済協力の構想を明らかにした。
「人口30億人のシルクロード経済ベルトの市場規模と潜在力は他に例がない」と述べ、太平洋からバルト海に至る物流の大動脈の整備や、人民元と各国通貨の直接交換取引の拡大を挙げた。
中国と中央アジアのほか、ロシアやインド、パキスタンなども含めた広範な地域を想定しているとみられる。
9月11日のキルギスの国会議長との会談でも、「歴史的なシルクロードに沿って新たな時代条件下の『シルクロード経済ベルト』を建設して、共同発展・繁栄を促したい」と表明した。
習主席は9月3日から13日にかけて(途中、9月5日のサンクトペテルブルグでのG20サミットを挟み)、トルクメニスタン、カザフスタン、ウズベキスタン、キルギスの4カ国を公式訪問し、9月13日にキルギスのビシュケクで 開かれた第13回上海協力機構首脳会議に出席した。
各国との間で、戦略的パートナーシップの構築、深化を話し合った。
王外相によると、今回の歴訪で、
・元首間の緊密な友情と高度な信頼を確立した。
・中国と中央アジア4カ国の関係のレベルを全面的に高めた。
・『シルクロード経済帯』を共同で建設するという戦略的な構想を打ち出した。
・上海協力機構の健全で実務的な発展を推進した。
「習主席が中央アジア4カ国を歴訪し、かつ上海協力機構首脳会議に出席したことは、地域諸国間の善隣友好協力の新しい見通しを開き、シルクロードの共同発展の新しい紀元を創った。これは、中国の西へ向けた開放の足取りを加速させ、良好な周辺環境を構築し、重要な戦略的チャンスの時期を維持・発展させることに重要な意義を持たせ、深い影響をもたらした」としている。
習主席は今回の歴訪で中央アジア経由の石油・天然ガス輸入促進でも手を打っている。
1)石油
9月7日、カザフスタンで同国のナザルバエフ大統領と会談し、全面的戦略パートナーシップを深めることについて重要で幅広い合意に達したが、両首脳の見守るなかで、KazMunaiGasと中国のCNPCは、Kashagan 油田の権益 8.33%を約50億ドルでCNPCに売却する契約に調印した。
中国とカザフスタンを結ぶ石油パイプラインが完成しており、CNPCはこれを経由して原油を中国に送ることができる。
2013/9/14 カザフスタンのカシャガン油田、生産開始
2)天然ガス
9月4日にはトルクメニスタンでガルキニシュ(Galkynysh:「復活」)ガス田の第一期工事の竣工・生産開始式典に参列した。
同ガス田は、埋蔵量が13.1~21.2兆m3あるといわれ、イランのサウスパース・ガス田/カタール・ノースフィールド・ガス田の合計51兆m3に次ぎ、世界第2位である。
生産能力は年間100億立方メートルで、中国のCNPCが建設を請け負うとともに、生産量全量を購入し、中国に輸送する。
習主席は式辞で次の通り述べた。
ガルキニシュ・ガス田は中国とトルクメニスタンのエネルギー互恵協力の新たな成功の模範であり、協力による発展促進という両国民の真摯な願いを乗せており、両国のエネルギー協力の新たな、強大な原動力となる。
中国・中央アジア天然ガスパイプラインの完成・運営からアムダリヤ川右岸ガス田の生産能力のたゆまぬ拡大、そして本日のガルキニシュ・ガス田第 1期工事の生産開始へと、わすか数年で両国のエネルギー協力は飛躍的発展を遂げ、世界の注目する輝かしい成果を収めた。
これによって中国とトルクメニスタンのエネルギー協力が両国および両国民の根本的利益に完全に合致し、大きな潜在力と広大な将来性を備えることが改めて力強く証明された。
前日のトルクメニスタン大統領との会談でも、
中国・中央アジア天然ガスパイプラインのC線の建設およびD線の早期着工を加速し、アムダリヤ川右岸ガス田およびガルキニシュ・ガス田開発プロジェクトをしっかりと実施し、協力規模を拡大し、協力分野を開拓する
ことで合意している。
現在、トルクメニスタンと中国との間には、Central Asia Gas Pipeline
A & B があり、年間300億立方メートルの輸送能力がある。
Gas Pipeline C は能力 250億立方メートルで本年末に完成の予定。完成により合計能力は550億立方メートルとなる。
更にGas Pipeline D を建設中。
Central Asia Gas Pipeline は2009年末に完成した。CNPCが投資している。
トルクメニスタンとウズベキスタンの国境地帯のアムダリア(アム川)のトルクメニスタン側の西岸を起点に、ウズベキスタン、カザフスタンを経由して、中国の新疆ウイグル自治区のコルガス(霍爾果斯)に至る全長1833キロメートル のパイプライン。
コルガスからは中国の西気東輸 第三パイプラインで東部に輸送される。
カザフスタンと中国との間にも、石油パイプラインに加え、 天然ガスパイプラインが通じている。
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上海協力機構は1996年4月に初めて集った上海ファイブを前身とする協力機構で、加盟国が抱える国際テロや民族分離運動、宗教過激主義問題への共同対処の外、経済や文化等幅広い分野での協力強化を図る。
2000年の会議にウズベキスタンがオブザーバーとして参加し、翌年に6カ国によって発展発足した。
正規加盟国 |
中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン(以上 上海ファイブ) ウズベキスタン(2001年加盟) |
オブザーバー |
モンゴル、インド、イラン、パキスタン(以上 2005年) アフガニスタン(2012年) |
対話パートナー |
ベラルーシ、スリランカ(以上 2009年) トルコ(2012年) |
客員 | トルクメニスタン、独立国家共同体(CIS)、東南アジア諸国連合(ASEAN) |
9月13日の上海協力機構首脳会議で、習主席は以下の通り述べた。
上海協力機構はまたとないチャンスに直面するとともに、厳しい課題にも直面している。
「3つの勢力(国際的テロ組織、民族分裂主義の勢力、宗教原理主義の勢力)」、麻薬の売買、国境を越えた組織的な犯罪が、加盟国の属する地域の安全や安定にとって重大な脅威になっている。
国際金融危機の影響を受けて、各国の経済発展はそれぞれに困難に遭遇している。われわれはお互いに助け合い、ともに利益を獲得するという意識をうち立て、協力を強化し、手を取り合って自国を強くし、上海協力機構を加盟国の運命共同体および利益共同体に発展させるとともに、加盟国がともに安定をはかり、共同で発展するための確かな保障および戦略的なよりどころとしなければならない。
実務的な協力の発展に力を入れる。シルクロードの精神を伝え、大いに発揚する。
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