薄熙来被告に有罪判決

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収賄や横領、職権乱用の罪に問われた元重慶市共産党委員会書記、薄熙来に対する判決公判が9月22日、山東省済南市中級人民法院で開かれ、「国家・国民に重大な損失をもたらした」として、無期懲役と全財産没収、政治権利の終身剥奪を言い渡した。

薄被告は、8月22日から5日間開かれた公判で起訴内容を全て否認し、検察当局の姿勢を「一方的、独断的、主観的」として全面的に争う姿勢を示していた。

判決内容は以下の通り。

  犯罪内容

判決

懲役 政治権利 罰金
収賄罪 2044万7376元(≒334万米ドル)の収賄
・起訴は約2179万元
・家族が受け取った約134万元は証拠不足
無期懲役 政治権利の
 終身剥奪
全財産没収
横領罪 500万元(≒820千ドル)の横領 懲役15年   100万元没収
職権乱用罪
(特に重大)
王立軍の公安局長解任
(妻の殺人事件の再捜査厳禁の意図)
王立軍の米領事館駆け込みで
  「休養・治療」との虚偽情報発表
懲役7    
総合判決   無期懲役 政治権利の
 終身剥奪
全財産没収


収賄に関しては、罪を認めた被告の上申書などの内容は証人の証言や関係証拠と一致し、真実性が認められ、自白が捜査機関の不当な圧力と誘導によるものとは言えない とし、横領についても、意図は明らかとしている。

職権乱用については、
・王立軍・元重慶市公安局長を叱責し、解任した行為は、妻の殺人事件の再捜査を厳禁する意図が明らか。
・王が米総領事館に駆け込んだのは、自身の立場が危ないと考えたからで、被告の職権乱用行為と直接関連する。
・王の駆け込みを知りながら「休養・治療」していると虚偽情報を発表し、社会に悪影響を与えた
としている。

被告の行為は収賄、横領、職権乱用罪を構成する、国家・国民に重大な損失を与えた職権乱用罪の情状は特に重大とし、被告を無期懲役、政治権力の終身剥奪、全財産没収とした。

なお、裁判で問題視したのは、大連市や遼寧省時代の不正が中心で、重慶時代については職権乱用だけだった。重慶時代を問題視すれば、習指導部との路線対立が浮き彫りになると判断したためとみられる。

薄煕来と周永康が組んだ、習近平に対するクーデター未遂計画などが噂されている。

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王立軍は2012年2月2日、公安局長を辞任し副市長に就任したが、2月6日に突然アメリカ合衆国駐成都総領事館に駆け込んだ。

王は薄の妻・谷開来のイギリス人殺害事件を中央政府に報告したと報じられた。薄の親族の犯罪も捜査しており、公安局長の職を解かれて、身の危険を感じたためとされる。

重慶市政府(薄熙来が重慶市共産党委員会書記)は、駆け込みを誤魔化し、王が休職したと発表した。

  2012年9月、成都市中級人民法院は、収賄や職権乱用などの罪で王に懲役15年を言い渡した。
  谷開来は、英人殺害の容疑で2年間の執行猶予つき死刑判決を受けている。


過去の政治家の裁判例は下記の通り。

    罪状 判決
陳希同・中央政治局委員 1998/7 汚職と職務怠慢 懲役16年
成克傑・全国人民代表大会副委員長 2000/7 収賄 4109万元 死刑 (2000/9死刑執行)
陳良宇・上海市党委書記 2008/3 収賄と職権乱用 懲役18年、財産没収30万元
劉志軍・鉄道相 2013/7 収賄と職権乱用
  収賄総額 6460万元
死刑・執行猶予2年


政治局委員経験者に対する判決としては、陳良宇・元上海市党委書記(懲役18年)よりも重くなったが、収賄額が大きいにも関わらず、成克傑(死刑執行)や劉志軍(執行猶予付き死刑)などよりも軽い判決となった。政治的な要素が考慮されたのではないかとされている。

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習主席は昨年11月の就任以来、国民の不満が大きい汚職や腐敗の摘発を政権運営の柱の一つとし、権力の基盤固めを進めてきた。
「ハエも虎も一掃する」と腐敗取り締まりを宣言している。

現在、CNPCと子会社PetroChinaの人脈が取り調べを受けている。

CNPC副総経理の王永春ほか3人
前CNPCの会長のであった蒋潔敏・国務院国有資産監督管理委員会主任(閣僚級)
天津ガス集団の金建平会長(天然ガスの供給をめぐってCNPCと事業提携)

中国共産党指導部がCNPCの総経理の周永康・前政治局常務委員の汚職をめぐる調査を開始することで合意したと報じられた。

習指導部は、腐敗取り締まりで石油業界にメスを入れたが、調査を受けているのは、薄被告の後ろ盾と目されてきた周永康前常務委員の人脈である。

中国共産党の新指導部体制は、太子党(高級幹部の子弟)、共産主義青年団(共青団)、上海閥の3派が並存するトロイカ体制である。

習近平国家主席は太子党
胡錦濤前主席や温家宝前首相、「リコノミクス」の李克強首相は共青団
江沢民元国家主席、周永康、薄熙来らは上海閥

習国家主席が自らの権力基盤を固めるため、周永康のラインに焦点を合わせたとの憶測が流れている。

2013/8/31  中国政府、元CNPC総経理(前政治局常務委員)の汚職をめぐる調査を開始




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