Solvay、サウジのSadara Chemical とのJVで過酸化水素工場建設

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Solvayは9月2日、Sadara Chemical (DowとSaudi Aramcoの石化JV)との50/50 JVでJubail Industrial City IIに大規模な過酸化水素工場の建設を開始したと発表した。

JVはSaudi Hydrogen Peroxide Companyで、能力は年産30万トン、2015年のスタートを目指す。サウジで初めての過酸化水素工場となる。

Sadara Chemical は過酸化水素を同社が建設中の過酸化水素法酸化プロピレン(HPPO)の原料とする。
同社ではPOを原料にポリオールやプロピレングリコールなども生産する。

Solvayにとっては、これは3つ目の大規模過酸化水素JVとなる。

  立地 能力

目的

製品 能力 メーカー
Solvay/Dow/BASF JV Antwerp
(ベルギー)
 23万トン HPPO  30万トン Dow/BASF JV
MTP HPJV (Thailand)
  Solvay/Dow JV
Map Ta Phut
(タイ)
33万トン HPPO 39万トン MTP HPPO Manufacturing
(Dow/Siam Cement JV
)
外販HP Solvay Peroxythai 経由販売
Saudi Hydrogen Peroxide
 
Solvay/Sadara (50/50)
Jubail
(サウジ)
30万トン HPPO

未発表

Sadara Chemical
(Dow/Saudi Aramco JV)


Solvay Peroxythai は東南アジアの過酸化水素の主メーカーで、Map Ta Phutに35千トンのプラントを持ち、過去20年以上にわたり、高純度品を食品やエレクトロニック業界に供給している。新プラントからの製品で、供給能力は従来の2倍以上となる。

ーーー

POの生産にはこれまで、3つの方法があった。

1)塩素法

従来からの製法でプロピレンに塩素と水を反応させ、生成したクロルヒドリンを水酸化カルシウム或いは水酸化ナトリウムで処理する方法。

日本では現在、旭硝子(鹿島)とトクヤマ(徳山)が生産している。

2)ハルコン法

イソブタン又はエチルベンゼン酸素と反応させて得られたハイドロパーオキサイドでプロピレンを酸化する方法で、イソブタンを使った場合はTBA or MTBE、エチルベンゼンを使った場合はスチレンモノマーを併産する。

日本では日本オキシランがSM併産で生産している。
アジアでは韓国でSKCケミカル(当初ARCOが出資)、シンガポールでSeraya Chemical (Shell) 及び Ellba Eastern (Shell/BASF)が、いずれもSM併産で生産して
いる。

3)住化新法

上記2)の方法でイソブタン或いはエチルベンゼンの代わりにイソプロピルベンゼン(クメン)を用い、生成するクミルアルコールを脱水/水素化してクメンに戻すことにより、併産物を生成しない新しいプロセスの構築に成功した。

住友化学は千葉で新法によるプラントを建設した。また、サウジのPetro Rabighで新法によりPOを生産する。


DowとBASFは2006年3月、アントワープで過酸化水素法でPOプラントを建設すると発表した。

過酸化水素法はBASFが1995年頃から研究してきたもので、副産物がなく、最終製品であるPOと水しか発生しないこと、プラントの設置面積が小さく、必要インフラストラクチャが少ないことが特徴とされている。
(但し、多量の過酸化水素
を使用するため、過酸化水素のプラント建設が必要で、またエポキシ化触媒をリサイクルするためにメタノールを使用しており水とメタノールの分離に多量のスチームも使用する。)

Dowは2001年にEnichemとの間でポリウレタン事業とPolymeri(UCC/EnichemのPEのJV)持分を交換した際にこの技術を取得しており、2002年8月にBASFとの共同開発を決めた。

タイの計画にはBASFは参加していない。(経緯不明)

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Solvayは過酸化水素の世界最大のメーカー。

過酸化水素は、製紙用の漂白剤が主用途であったが、HPPO用に大量に使用されるようになり、この分野の需要が急拡大した。
この用途は現在、Solvayのみのため、同社のシェアは更に拡大した。

従来の用途向けでは、中国の需要の伸びが大きい。

SolvayはHuatai Group(华泰集团)とのJV、Shandong Huatai Interox Chemicalを設立し、2011年に山東省東営市に年産5万トン設備を建設した。同社では中国南部に第二拠点の建設を検討している。

南米でも、ブラジル(現地のProdutos Quimicos MakayとのJVのPeróxidos do Brasil )の能力を2000年の5万トンから2010年位は16万トンに増強、現在は18万トンとしている。

Solvayは2012年4月、年産5~15千トンの小規模設備を低コストで生産する技術を開発し、需要家の工場に設備を設置するシステムを考案したと発表した。遠隔地のパルプ、製紙工場に最適で、Peróxidos do Brasil 内にパイロットプラントを建設する。


参考 Solvay's position and strategy in hydrogen peroxide




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