米司法省、自動車部品カルテルで更に9社、2名と司法取引

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米司法省は9月26日、日本の9社(フランス企業の日本子会社を含む)と日本企業の役員2名(うち1名は米国人)が米国での自動車部品の価格カルテルで有罪を認めたと発表した。

9社の罰金額は744百万ドル、役員2名は禁固刑と罰金刑。

http://www.justice.gov/opa/pr/2013/September/13-at-1074.html

これによりこれまで有罪を認めた企業は20社(うち日本企業が17社+外国企業の日本子会社1社)となり、罰金総額は16億ドルを超える。
起訴された個人は21名(うち日本人20名)で、刑が決まったのは17名(日本人16名)となる。

今回有罪を認めた企業と罰金は下記の通り。

このうち、ミツバは調査開始を知って証拠を破棄しようとしたとする司法妨害の罪も認めた。(別に最高50万ドルの罰金が課せられる。)

  百万  
日立オートモティブシステムズ 195 starter motors ほか、自動車部品
ジェイテクト 103.27 bearings、electric powered steering assemblies
ミツバ 135 windshield washer systems ほか
三菱電機 190 starter motors, alternators、ignition coils
三菱重工 14.5 compressors、condensers
日本精工(NSK) 68.2 bearings
ティラド(T.RAD) 13.75 radiators
ヴァレオジャパン
(仏Valeoの子会社)
13.6 air conditioning systems
山下ゴム 11 anti-vibration rubber products
合計(9社) 744.32  
これまでのもの
古河電工 200 2011/9 wire harnesses
矢崎総業 470 2012/1 wire harnesses
デンソー 78 2012/1 electronic control units (ECUs)
heater control panels (HCPs)
ジーエスエレテック 2.75 2012/4 antilock brake systems
フジクラ 20 2012/4 wire harnesses
Autoliv Inc
(Stockholm)
14.5 2012/6 seatbelts, airbags, steering wheels
TRW Deutschland
(米社独子会社)
5.1 2012/7 seatbelts, airbags, steering wheels
日本精機 1 2012/8 自動車用計器
東海理化 17.7 2012/10 heater control panel
ダイヤモンド電機 19 2013/7 ignition coil
パナソニック 45.8 2013/7 switch 等
合計(11社) 873.85    
累計(20社) 1,618.17    

 
   2013/7/20    米司法省、自動車部品カルテル摘発を進める


個人は下記の通りで、17名+起訴段階4名=21名となった。
今回に限り、会社名が発表されていない。
これは、これまでに罪を認めた企業以外の可能性がある。

実際に、東洋ゴムは社員が司法省と合意したことを発表、同社自身が調査を受けていることを明らかにした。

  氏名  発表
or 合意書 
禁固 罰金
発表なし→東洋ゴム
(トヨタ向けanti-vibration rubber)
T.K. 今回 1年+1日 各人
2万ドル
発表なし(日系企業の米人)
(各社向けseatbelt)
G.W. 14か月
これまでのもの
古河電工 J. F. 2011/10/24 1年+1日 各人
2万ドル
H. N. 2011/10/13 15か月
T. U. 2011/11/10 18か月
矢崎総業 T. H. 2012/1/30 2年
R. K. 2012/3/26 2年
S. O. 2012/3/26 15か月
H. T. 2012/3/26 15か月
T. S. 2012/8/16 14か月
K. K. 2012/9/26 14か月
デンソー N. I. 2012/3/26 1年+1日
M. H. 2012/4/26 14か月
Y. S. 2013/5/21  16か月
H. W. 15か月
山下ゴム H. Y. 2012/11/16  1年+1日
Autoliv(日本人社員) T.M. 2013/7/16 1年+1日
ジーエスエレテック S.O. 起訴段階
フジクラ R.F.
T.N.
パナソニック S.K.


FBIでは、今回の起訴は、ルールを守る必要がないと考えている企業にメッセージを送るもので、米国で法を破れば、FBIは徹底調査し、米国の商業システムへの脅威を終わらせると述べている。

今回の自動車部品カルテル摘発は、日本の企業に対し、米国で価格カルテルが摘発されると大変なことになるとのメッセージを送るものとなった。

日本では公取委のカルテル処分では個人は対象とならない。
公取委が重大と考える事件の場合には刑事訴訟を行い、個人も対象となるが、有罪の場合でもほとんどの場合は執行猶予付きとなり、
重犯でなければ実刑はない。

米国の場合は個人も対象となるが、当初は罰金だけであった。

映画 The Informant で有名になったリジンカルテルでは、ADMの副会長等は禁固刑となったが、味の素、協和発酵は各1人が罰金刑であった。

しかしその後、米国はカルテルに対する罰則を強化、企業に対する罰金額が増大するとともに、個人も1年以上の禁固刑が普通になった。

日本の場合は、独禁法違反事件が日米犯罪人引渡条約の対象に該当しないため、日本にいる限り、起訴されても裁判が開かれず、米国での時効の中断状態となっている。
(他の国では犯罪人引渡条約の対象になる国が多く、米国以外に旅行して米国に引き渡される恐れがある。)

このため、多くの日本人が起訴されているが、日本人が米国の独禁法違反で禁固刑となるのは、これまで2名のみであった。

ダイセル社員のH. H.氏(防カビ剤のソルビン酸価格カルテル)
 海外に行けないのでは仕事にならないため、自ら渡米し、刑に服したもの。(同氏の上司は時効中断のままとなっている。)
 司法省はこれを評価し、「日本人で最初に服役」と誇らしげにこれを発表するとともに、禁固3か月の寛大な処分とした。

   2006/2/16
独禁法改正

ブリヂストンのM. H.氏(マリンホース国際カルテル)
 米国で秘密の会合に出席していて、現場で逮捕された。
   2008/12/12 マリンホース国際カルテル事件で日本人に有罪判決

多くの日本の企業は、「犯罪を起こしてはいないが、裁判が長期化するのを避けるため、罰金を払った」、と言い逃れている。

今回、日本人が20名起訴され、16名が禁固刑を受けており、今までの状況が一気に変わった。

このうちのほとんどは既に日本に帰国している筈で、従来どおりなら、米国で裁判が開かれない。

それが一挙に16名もが刑に服するのは、企業との和解交渉で、責任者が罪を認めて刑に服することを条件にしたのではないかと思われる。
企業がこれに応じない場合、和解ではなく裁判になり、有罪となれば
、独禁法の規定で賠償額が3倍になる恐れがある。

今後は、米国で独禁法違反となれば、責任者が禁固刑というのが一般的になると思われる。
責任者は会社のために犠牲になることを強いられることとなる。

企業側も「裁判が長期化するのを避けるため、罰金を払った」との言い逃れは出来なくなり、場合によっては株主から訴えられることともなる。

 



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