Dow Chemical、PP ライセンス・触媒事業を売却

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Dow Chemicalは10月11日、Global PP Licensing & Catalysts 事業をW.R.Graceに5億ドルで売却する契約に調印したと発表した。

売却対象には知財、顧客とのライセンス契約、触媒製造工場(ルイジアナ州 NorcoのUCCの工場内)、触媒在庫などを含んでいる。

PP Licensing and Catalystsは下記のPP技術、触媒を扱っている。

  UNIPOL PP 技術
  SHAC Catalyst
  CONSISTA D7000 Donor
  Advanced Donor Technology (ADT) 
  (Donorは触媒性能を向上させる添加物で、下記組み合わせで使用)

Dowは本年3月に、今後1年半で15億ドルの資産を売却すると発表、その対象としてPP Licensing & Catalysts 事業とプラスチック添加剤事業を挙げていた。

但し、同社は9月17日の説明会で、プラスチック添加剤事業については買い手の価格が安すぎるため、売却を中止すると発表した。

2013/3/19  Dow Chemical、非中核事業の資産売却を促進

同社では、引き続き全ての事業の見直しを行っており、事業価値の最適化を図るため、戦略に合わないものや採算が合わないものを洗い出し、売却するとしている。

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売却先のW. R. Grace はスペシャリティケミカル会社。

1854年にWilliam Russell Grace が南米ペルーで W. R. Grace & Co. を設立 した。
当初は北米と南米の間の船輸送を行った。

1865年にニューヨークに移転、米国、欧州、南米の三 角貿易を開始した。1884年には自由の女神像をフランスからNew Yorkに輸送している。

1954年にDavison Chemical を買収 した。
同社は1832年にWilliam T. Davison が Davison, Kettlewell & Co. として設立したもの。

現在のW. R. Grace Catalysts Technologies、Materials Technologies 、Construction Products の3部門を持つが、前二者は2012年初めまではGrace Davison 部門と呼ばれていた。

各部門の内容と売上高(2012年、百万ドル)は以下の通り。

Catalysts Technologies Fluid Catalytic Cracking Catalysts 986.8
Hydroprocessing Catalysts
Polyolefin Catalysts 281.3
Sub-total  1,268.1
Materials Technologies Silica-based engineered materials  478.3
Packaging materials(缶関連)  384.3
Sub-total 862.6
Construction Products Construction Chemicals 680.7
Building materials 344.1
Sub-total  1,024.8
Total  3,155.5

Catalysts Technologiesの地域別売上高比率は以下の通りで、グローバルに販売している。

北米   30.1%
欧州・中東・アフリカ   42.8%
アジア・太平洋   20.3%
ラテンアメリカ   6.8%

同社ではCatalysts Technologiesの実力を下記の通り評価している。


 

PE触媒ではMarket leader、PP触媒ではStrong positionと自認しているが、同社では今回の買収により、世界中のPPメーカーに幅広い技術を供給できるようになるとしている。

なお実現しなかったが、2008年にBASFがW. R. Grace の買収を検討していると報じられた。

BASFは2006年6月に触媒メーカーのEngelhard を48億ドルで買収したが、2007年にBASFのCFOはインタビューで、新しい買収のために100億ユーロを新規に借り入れる用意があることを明らかにしていた。

2008/8/1 BASFがW. R. Grace 買収?

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W.R. Graceは20014月にアスベスト関連で13万件の訴訟を受け、Chapter 11 (会社更生法)を申請した。

2000年以前は、交渉や裁判で20年間で裁判費用を含め20億ドルを支払って解決してきたが、その後訴訟が急増し、止むを得ずChapter 11を申請した。

その後現在に至るまで、裁判所の承認を得たつなぎ資金(debtor-in-possession)で運営している。

裁判所からは好意的な判断を得ており、同社では近く Chapter 11 から離脱できると見ている。




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