IneosのスコットランドのGrangemouthの石化コンプレックス が存続の危機に立っている。
Ineosによると、Grangemouthの石化事業は毎月10百万ポンド(約15億円)以上の損失を出しており、年金の赤字は200百万ポンド(約310億円)に達する。
更に、North Sea pipelineで供給を受けている北海の石化原料が減少している。
このままでは原料が枯渇し、遅くとも2017年末までには閉鎖するしかないとし、Survival Plan を作成、労働組合と政府(英国及びスコットランド)に協力を求めた。
Survival Planは以下の通りで、これは生き残りのための最終案であり、他には案はない("There is no plan B")としている。
1) 300百万ポンド(468億円)を投資して、事業継続に必須の米国からの輸入エタンのガスターミナルを建設する。
Ineosは2012年9月、欧州のエチレン原料用にエタンを輸入するため、独立系石油・ガス業者のRange Resourcesとの間で、2015年からエタンを購入する契約を締結した。
同社のエチレンプラントは下記の通り。
1. Grangemouth, UK
2. Köln, Germany
3. Lavéra, France (INEOS & TOTALの50:50 JVの Naphtachimie)
4. Rafnes, Norwayまず、ノルウェーのRafnes 工場(北海のガスが枯渇しつつある)で使用する。
2012/10/2 Ineos、米のシェールガスからのエタンを欧州のエチレン原料用に輸入
2) その条件として、労働組合に対し、製油所も含めた人員整理と賃金・年金の改正を要求
同社によると、Grangemouth での基本給は年間 £40,000 ~£43,000、手当やボーナスを入れると £55,000となり、スコットランド平均 の £26,000の2倍以上としている。これに年金が65%上乗せされ、1人当たり労務コストは£90,000 にもなる。
3) 同時にIneosはスコットランド政府と英国政府に対し、事業をサポートするため、合計150百万ポンドの補助金と借入保証を 要求
これに対し、組合は脅し戦術だとして強く反発、ストではなく順法闘争を行い、残業を拒否することを決めた。
これより前、製油所も含めた組合の委員長の政治活動に関して、Ineosが調査を開始したことから、組合が反発、投票の結果、賛成多数でストライキを決めていた。
現時点でも、ストライキを放棄したわけではないとしている。
一方、IneosはIneos Chemicals Grangemouthの9月決算で資産396百万ポンド(617億円)を評価減し、ゼロ評価としたことを明らかにした。
「過去4年間の赤字で石化事業は実質的に価値が無くなった。コストカットと新しい原料ソースが無ければ、遅くとも2017年に潰れる。資産の評価減以外のオプションはない」としている。
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Ineosは2005年末にBPから石油化学子会社Innoveneを買収した。
INEOS Refining:Grangemouth と Lavera の製油所
INEOS Olefins:Grangemouth, Lavera、Koln のC2, C3, C4 及び芳香族
INEOS Polyolefins:欧州、アジアのポリオレフィン事業
その他
Grangemouthの石化事業はInnoveneから買収した事業である。
エチレンクラッカーはエタンとナフサの両方を原料とする「G4」と、エタンを原料とする「KG」の2系列があり、合計能力は年産100万トンとなっている。
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隣接する製油所とフランスのLaveraの製油所も Innoveneから買収した事業である。
この2つの製油所については、2011年7月にCNPC(中国石油天然気集団 )子会社のPetroChinaとのJVとした。
両社は2つのJVを設立、PetroChinaは1,015百万ドルを出資した。 両製油所の製品の販売会社 PetroIneos Trading Limited PetroChina 50.1% 両製油所の運営会社 PetroIneos Refining Limited PetroChina 49.9%
2011/1/12 PetroChina とINEOS、欧州で石油精製JV設立へ
精製能力は日量20万バレル。
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