中国政府は9月29日、経済の中心都市上海に貿易や金融などの規制を大幅に緩和する自由貿易試験区
(Shanghai Pilot Free Trade Zone) を設立した。
高虎城商務相は「自由貿易試験区の設立はグローバル経済の発展の流れに順応し、積極的に対外開放を進める重大な出来事だ」と挨拶した。
中国国務院常務会議は7月3日、「中国(上海)自由貿易試験区全体プラン」について審議し可決、国務院は8月17日に中国(上海)自由貿易試験区の設立を許可した。
国務院は、サービス分野を対外開放するとともに、人民元に交換性を持たせて金利を自由化するなど、大胆な金融改革を行う実験台とする方針を表明していた。
自由貿易試験区に指定されたのは上海郊外の4つの地域およそ29平方キロメートル。
上海市外高橋保税区 | 1990年、中国で最初に保税区の認可を受けた保税区。 | 10 km2 |
外高橋保税物流パーク | 2004年7月15日に正式に運営開始したを始めた保税区物流パーク | 1.03 km2 |
上海浦東空港(机场) 総合保税区 |
2010年9月28日に運用開始 航空機のリース基地、メンテナンス基地として発展 IT製品や航空機材を中心とした貨物の配送、中継基地としての地位を確立 |
3.59 km2 |
洋山保税港区 |
大洋山島と小洋山島に属する島々の間の海を埋め立てて作られた。 上海市との間を長さ32.5kmの東海大橋で結ぶ。 東海大橋の本土側の浦東新区では、埋立地に新都市・臨港新城が建設された。 |
14.16 km2 |
合計 | 28.78 km2 |
洋山保税港区 | |
洋山保税港区は国務院の批准を経て設立された最初の保税港区で、使用開始は2005年12月10日。
浙江省嵊泗小洋山港口区域、上海市南匯区陸上区域、双方をつなぐ東海大橋により構成されている。 |
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試験区内では、通関業務が簡素化されるほか、国外との資本の取引など金融分野での規制が緩和される。
また外資系企業に対しては、ゲーム機の販売を認めたり、医療機関の設置を許可するなど、サービス分野でも開放が進められる。
国境を越えた証券投資については従来、投資枠に制限を設ける適格外国機関投資家および適格国内機関投資家制度を通じたものに制限されてきたが、試験区内の投資家へは外国勢、中国勢ともに直接投資を認める。試験区内の外銀は国内市場での起債が可能になる。
試験区で国際原油価格先物の取引プラットフォームを開設し、外国勢の参入を促す。
保険規制当局は、外国の健康保険会社が試験区内で営業できるよう支援するとともに、人民元建ての国境を越えた再保険の開発も後押しする。
中国銀行業監督管理委員会は、試験区内の銀行の国境を越えたファイナンスに関連して預貸比率その他の規制基準を修正する。
加えて、外国銀行が試験区内で代表事務所を本格的な支店に格上げする場合の規制緩和も検討する。外銀による元建て決済認可資格の申請を迅速化する。
国務院は9月27日、「中国(上海)自由貿易試験区全体プラン」を発表したが、注目点として以下の4点が挙げられる。
(人民網日本語版 2013年9月29日)
(1)「ネガティブリスト管理」:投資・貿易がより便利に
ネガティブリストとは投資分野で例外的に開放されていない分野のリストを指し、このリストに記載されていない項目は、法律で禁止されていない限り、規制されないことになり、事前の審査・認可も不要となる。
政府の権力を制限して、市場や企業により大きな役割を発揮させようとしているといえる。
(2) 「境内関外モデル」:貨物の流通がスムーズに
上海自由貿易試験区の建設は保税区を基礎としているが、保税区では税法上は国内扱いであるのに対し、試験区では本格的な「境内関外モデル(国境内にあるが関税は外国扱い)」を目指す。
保税区の場合、貨物が保税区に入る場合は事前申請が必要で、しかも関税は『徴収を一時留保』されるだけで、免除されるわけではない。
これに対し、自由貿易試験区は『一線(国境線)を徹底的に開放し、二線(試験区以外のエリアとの境界線)を効率よく管理』との要求に基づき、まず貨物を搬入してから申告することを許可する。
国際的慣例に合致する貨物はスムーズに入ることができ、関税障壁・非関税障壁は存在しない。
(3) 「サービス業の開放」:外部競争者の参入で国民に利益
中国のサービス業の発展はこれまで、開放度の不足や国による一定の保護などにより、日に日に増加する国民のニーズを満たせていなかった。
競争者が多元化することで、国民には利益がもたらされる。
政策による保護の撤廃と競争意識の改善に伴い、サービス業の企業も本気を出さないわけにはいられなくなり、自由貿易試験区の良い効果を十分に引き出すことができる。
(4) 「金融革新」:全国に先駆け金利の市場化を推進
資金など核心的要素の価格は依然としてコントロールを受けているが、試験区がこの方面で全国に先駆けて試行を行った意義は大きい。
試験区は金融の革新を奨励しており、金融機構の業務モデルチェンジを後押しすることになる。
上海市政府は9月30日、外資系企業に対する禁止・制限措置リスト(ネガティブリスト)を発表した。
http://www.shftz.gov.cn/WebViewPublic/item_page.aspx?newsid=635158957941988294&coltype=8#
1069項目ある外資規制策をもとに決めたが、190項目あり、規制緩和ペースは思ったより緩いとの声もある。
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