「水俣条約」採択

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水銀の使用を国際的に規制する「水銀に関する水俣条約」が10月10日、熊本市で開催中の外交会議で採択された。
参加 141カ国・地域のうち、議長国の日本や最大の排出国の中国を含む87カ国・地域が条約に署名した。

2013年1月にスイスのジュネーブで「水銀条約政府間交渉委員会第5回会合」が開催され、水銀の使用や貿易、排出を国際的に規制する条約の条文案に合意するとともに、日本の提案を受け、条約の名称を「水銀に関する水俣条約」(Minamata Convention on Mercury)とすることを決めた。

今回、条約の採択・署名のための外交会議が開催されたもの。

条約の発効は50カ国の批准が必要で、国連環境計画は2016年をめざしている。

安倍首相はビデオメッセージで、水銀を含む環境汚染対策のため、ODAなどを通じ、来年から3年間で20億ドルの支援実施を約束した。大気汚染や水質汚濁、廃棄物処理で日本の技術を生かす。

このほか石原伸晃環境相は、条約の早期発効を目指し、途上国で水銀の法規制や人材育成を進めるために100万ドルを拠出し、工業分野で水銀を使わない製造技術などの支援も行うと表明した。

水銀条約の内容については、2013/2/12 水銀規制条約で合意、「水俣条約」と命名

 

水俣条約の採択を受け、WHOは2020年までに各国の医療機関で水銀を使った体温計や血圧計などの使用をやめるとする指針をまとめた。各国の政府や国際機関に水銀を使う製品の製造や輸出入をやめるよう働きかけ、世界で「水銀を使わない医療」の確立を目指す。

日本では、水銀を使わない血圧計や体温計が普及しており、照明器具も蛍光灯から発光ダイオードへの転換が進んでいる。
但し、学校保健安全法施行規則は「(職員の健康診断で)血圧は、水銀血圧計を用い、聴診法で測定するもの」と定めている。

一方、金属製錬の過程で副産物として発生した水銀や、蛍光管、乾電池のリサイクルで出る水銀を、インドやシンガポール、香港などに輸出しており、輸出量は2012年は84トンとなっている。水銀の使用量が少ない国への輸出は他国に再輸出されているとみられている。(EUや米国は2008年に水銀の輸出禁止を決めている。)

条約が採択されれば、輸出できなくなった水銀を国内で安全に保管する技術の開発が急務となり、保管費用を誰が負担するかも問題となる。

EUでは水銀と硫黄を反応させ、固形化して地下の岩塩層に埋設するが、日本では難しい。

水俣には広大な公園「エコパーク水俣」があるが、その公園の地下には、高濃度の水銀が埋まる。チッソが垂れ流した25ppm以上の水銀を含む汚泥を湾の底から除去、特に汚染がひどい湾奥部に集めて埋め立てた。

報道によると、水銀が海に染み出さないよう、巨大な鋼鉄製の円柱50個をならべ、海との間を仕切っているが、円柱の耐用年数は50年で、既に20年以上たち、腐食や老朽化、地震での崩壊などが懸念されている。

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安倍首相のビデオメッセージでの「日本は水銀による被害を克服した」との発言が波紋を呼んでいる。

「加害者である国が克服と断言してはならない」、「水俣病はまったく終わっていない」との声が出ている。

水俣病未認定患者の遺族が熊本県に認定を求めた2件の訴訟の上告審判決が4月16日、最高裁第3小法廷で言い渡され、いずれも患者側の勝訴となった。

環境庁の「手足のしびれや視野狭さく、運動障害など複数の症状の組み合わせ」を条件とするという「昭和52年判断条件」に基づく高裁判決を破棄した。

政府はこれまで、「52年判断条件」に基づいて水俣病収拾策を行い、収拾を図ろうとしてきたが、前提が崩されたことになる。

2013/4/17  水俣訴訟、最高裁判決 

救済されていない患者はまだまだ多く、とても「克服した」とは言えない。

なお、「水銀条約」に関する外交会議の行事として10月9日に水俣市で行われた水俣病犠牲者追悼式に、当初、石原伸晃環境相が欠席することが分かり、問題となった。長崎県・五島沖での風力発電実証機の完成式典に出席するためとされた。

批判を受け、最終的に環境相は追悼式に出席したが、省内からも「水俣病の教訓を世界に伝え、悲劇を繰り返さないことを誓う大切な追悼式だ。国内の行事を優先させ、ホスト国の大臣が来ないのは外交の重要性から考えてもおかしい」との批判が出ている。

 

 


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