ミドリムシが地球を救う!

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伊藤忠商事と㈱ユーグレナは10月10日、微細藻類のユーグレナ(euglena:ミドリムシ)を配合したヨーグルト「ユーグレナ&ヨーグルト」を発売すると発表した。 ミドリムシを原料に用いたヨーグルトは世界初で、59種類の栄養素を含むミドリムシにアロエ果肉を加えた。

ユーグレナが沖縄県石垣島で生産するミドリムシを提供、伊藤忠が商品の企画から製造・販売先の確保を担当し、協同乳業が製造・販売元となり、ファミリーマートをはじめ全国 のコンビニエンスストアやスーパーで販売する。

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ユーグレナ(ミドリムシ)は湖沼、池、水たまりなどの淡水域に生息する微細藻類で、植物として葉緑体を持ち、光合成を行うが、鞭毛運動をする動物的性質を持つ。

この動物と植物の両方の特徴を併せ持つ微生物は、59種類もの栄養素を生み出し、光合成により二酸化炭素を吸収し、しかも「バイオ燃料」を取り出すこともでき。

人間の体内に入ると、生活に必要なほぼ全ての栄養をカバーできる。

ビタミン類 14種 α-カロチン、β-カロチン、ビタミンB1、B2、B6、B12、C、D、E、K1、ナイシン、パントテン酸、ビオチン、葉酸
ミネラル 9種 マンガン、銅、鉄、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、カリウム、リン、ナトリウム
アミノ酸 18種 バリン、ロイシン、イソロイシン、アラニン、アルギニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン、スレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、ヒスチジン、チロシン、トリプトファン、グリシン、セリン、シスチン
不飽和脂肪酸 11種 DHA、EPA、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコサジエン酸、アラキドン酸、ドコサテトラエン酸、ドコサペンタエン酸、ジホモγ-リノレン酸
その他 7種 パラミロン、クロロフィル、ルテイン、ゼアキサンチン、GABA、スペルミジン、ブトレッシン
合計 59種  

東大発バイオベンチャーの㈱ユーグレナの創設者、出雲 充社長は、学生時代にバングラデシュのGrameen Bankで働いたが、バングラでは飢えはないが、栄養失調が多いことを知った。炭水化物はとれるが、肉・魚・野菜・果物などをとれないためである。

炭水化物は世界の人口を賄えるが、肉・魚・野菜・果物などはそれだけの量を賄えないし、輸送や貯蔵も出来ない。

東大で農学部に移り、ミドリムシに出会い、これが解決策になるのではないかと考えた。

ミドリムシは1980年代から研究されていたが、培養が困難で、かつバクテリアなど他の生物に捕食されるため、実用化は無理とされた。

仲間との共同での長期の研究の結果、ミドリムシが増殖しやすい環境であるが他の生物にとっては生きづらい環境を構築することにより、2005年12月に世界で初めて研究室外での培養に成功した。
(2005年8月に「人と地球を健康にする」を経営理念として㈱ユーグレナ社を設立)

培養プールにCO2を吹き込んで、ミドリムシの光合成を活発にしている。
(CO2を吹き込むと水が酸性化するが、ミドリムシ以外の藻類は酸性に弱いため、
この方法は使えない。)

大量培養技術は詳細の公開を避け、秘匿情報とし、特許を申請していない。

同社では当初、機能性食品、医療品素材としての販売を試みたが、1社も採用しなかった。

最後に接触した伊藤忠商事が同社の事業に注目、資本・業務提携をし、食品販売を自社の流通網を通じて実施するとともに、様々な支援をした。伊藤忠の支援で、石垣島に培養プールを建設した。

そして、伊藤忠との提携後には、いろいろの分野の多くの企業が開発に参加している。

①食糧問題、②環境問題(二酸化炭素を吸収・固定化)、③エネルギー問題 の解決を狙う。

㈱ユーグレナは2012年12月、東京証券取引所マザーズに上場した。

2003年10月1日に初の海外拠点として創業のきっかけの地・バングラデシュの首都ダッカに「バングラデシュ事務所」を開設した。
栄養問題の解決を目指したユーグレナ入り食品の普及を行うための拠点とし、バングラデシュ国内の企業やNGOとの連携構築を行う。
当面、母親と子供に錠剤を配布する。

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㈱ユーグレナは、バイオマスとしての多岐に及ぶ利用可能性を重量単価が高いものから順次参入する戦略をとっている。

まず、ヘルスケア分野で収益をあげ、エネルギー・環境事業の研究開発を他社と共同で実施している。

 
燃料開発  

油脂を多く含むユーグレナを活用したジェット燃料開発

飼料開発 

高蛋白質ユーグレナを活用した水産、家畜飼料開発

CO2固定化技術開発

高濃度CO2耐性ユーグレナを活用したCO2固定化技術開発

水質浄化技術開発

水中有機物を活用するユーグレナによる水質浄化技術開発

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化粧品

ユーグレナの加水分解エキスを活用した化粧品事業

バイオジェット燃料の開発体制は下記の通り。

ジェット燃料は軽質油であることが必要だが、他のバイオ燃料はこれに向かない。ミドリムシがつくり出す油はジェット燃料に近い。

燃料供給のためには、現在の食品生産のレベルとはけた違いの量が必要になるため、量産用の大きなプールで安定生産ができるかどうかがキイとなる。培養に必要な機器は日立プラントテクノロジー、培養に必要な管理技術はユーグレナが担当する。

抽出した油脂は脂肪酸のため、水素化により液体燃料に転換することが必要で、JX日鉱日石が担当する。

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出雲社長の本

ダイヤモンド社
僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。――東大発バイオベンチャー「ユーグレナ」のとてつもない挑戦

 

 

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