米国の予算問題、債務上限問題が解決したが、これは来年早々までの一時のものであり、問題を先延ばししただけである。
ネジレ議会で野党共和党がObama Care(米医療保険法案)の廃止を求め、予算と債務不履行を人質にする戦術をとった。
医療保険法は2010年3月に議会を通り法律となった。
これが憲法に違反するとする訴訟に対しては、米最高裁判所が2012年6月28日に違反でないとの判断を下した。
10月1日にはこの柱の一つの、経済的に余裕のない人に安価な保険を提供する保険市場が発足することになっていた。この時点で医療保険法関連の項目を含めた予算を認めないというのは不当である。
実際には、強硬なのは共和党の中のTea Partyである。
Tea Partyは人口比率が低下しつつある白人中低所得層の意見を代表するグループで、米議会ではTea Party系は下院約50人、上院5人で全員共和党に属している。
正式な党ではなく、個人により考え方は異なるが、共通の主張点は以下の通りで、基本は「小さな政府」である。
・不法移民は違法な存在
・国内雇用は不可欠
・強力な軍は必須
・銃の所有権は尊い
・小さな政府
・連邦予算は歳出入の均衡が必要
・増税反対:Tea Party のTea は Taxed Enough Already(税金はもう沢山だ!)の意味だとされる。
・伝統的な家族の価値観の奨励
医療保険法については、ヒスパニックが主な対象であり、自分たちの税金が不必要に使われるということからの反対である。
根源には、グローバル化により製造業が中国等海外に奪われて職を失い、残る職業も移民や不法移民に奪われる白人中低所得層の不満がある。
Tea Partyの強硬な姿勢に対し、上院民主党トップのリード院内総務は「異様な集団だ」と不快感を示し、下院民主党のペロシ院内総務は「共和党は自分の党を取り戻せ」と呼び掛けた。
Tea Party系への世論の支持率は2割程度で、共和党穏健派からも不満が強いとされる。
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Tea Partyは、グローバル化により製造業が中国等海外に奪われて職を失おうとする白人中低所得層の意見を代表するグループで、更に下層のヒスパニック系や不法移民等に敵意を示している。
しかし白人中低所得層が対抗すべきなのは、彼らより経済的に下層のヒスパニック系や黒人、不法移民ではなく、トップのたった1%が全所得の25%を得ているという不公平な状況と、それを正当化する政官財とマスコミの一体の体制である。
これに対する不満は増大しつつあるが、強硬な体制であるため、これに対抗できず、当面、より弱い方に不満のはけ口を求めているように思われる。
不満が更に増大し、爆発すると、米国は収拾がつかない混乱に追い込まれる。
以下は下記の本による。
Robert Reich Aftershock:The next economy & America's Future
Jeffrey Sachs The Price of Civilization
Robert Reichはその著 "Aftershock"で、米国の不況の原因は富の偏重 であるとし、このまま放置すると以下のようなことが起こり、米国のみでなく全世界に悪影響を与えると予測、こうならないような対策の実施を求めている。
時は2020年11月3日。その年の大統領選で新党である「独立党」は、共和党、民主党の両候補を尻目に、独自候補マーガレット・ジョーンズを擁立。一般投票で大差をつけ、選挙人投票でも勝利し、次期大統領の座を獲得した。
独立党は議会でも、共和党、民主党の議席を大量に奪い取った。独立党の政治要綱とメッセージは、明快で妥脇を許さない。その内容は以下のとおりだ。(分類はブログ筆者)
(雇用の確保)
・不法移民に対するゼロ・トレランス(いかなる例外もなく取り締まる)政策
・ラテンアメリカ、アフリカ、アジアからの合法移民の凍結
・全輸入品の関税引き上げ
・米国企業の外国への事業移転や海外へのアウトソーシングを禁止
・利益の出ている企業には労働者の解雇や給料カットを禁止
(モンロー主義への復帰、小さな政府)
・海外の政府系ファンドによる米国への投資の禁止
・国連、WTO、世界銀行、IMFから脱退
・外国への政治的「関与」はすべて禁止
・連邦政府予算は常に均衡させる
・連邦準備制度も廃止(中国への不満)
・中国に対する負債の利子支払いを今後拒否し基本的には債務不履行とする
・中国が変動相場制へ移行しない限りは同国との取引を停止(金融機関への不満)
・銀行は預金と融資のみを扱うことができるものとし、投資銀行は禁止
・インサイダー取引、株価操作、証券詐欺に関与した者は10年に及ぶ禁固刑(金持ち優遇への不満、政府予算均衡のため使用)
・個人の年収は50万ドルを上限とし、これを超える収人は税率100パーセントで課税
・25万ドルを超える収入は税率80パーセントで課税
・キャピタルゲイン税も80パーセント
・10万ドルを超える純資産には一律年間2パーセントの財産税を課税
・海外での資産隠しが発覚した場合は米国籍を剥奪
ジョーンズ次期大統領は、挑戦的な勝利宣言スピーチを行った。国民のみなさん、みなさんは米国を立ち直らせるために投票したのです。
大きな政府、大企業、そして大手金融機関からアメリカを取り戻すために投票したのです。
私たちから自由を奪う政治家から、
私たちの雇用を奪う外国人から、
国家への忠誠心を持たない金持ちから、
そして私たちの重労働に寄生する移民から、この国を取り戻すために。(大喝采)私たちは米国を立ち直らせるのです。
自分に利するよう制度を不正に操作するエリートたちの手から取り戻すのです。
ウォール街でカネを操る人々や、企業の重役室にいる強欲な雇用主の手から。
ワシントンの利権や腐敗した輩の手から。
つまり私たちに対する陰謀を企ててきたすべての特権階級と権力あるものの手から、この国を取り戻すのです。(大喝采と歓声) 彼らはもはや、国民をグローバルマネーに売り渡すことはできません。また私たちの仕事と生活を奪い去ることにより、私腹を肥やすこともありません。
米国では国民のたった1%が全所得の25%を得ている。
1980年代初めには10%程度に過ぎなかったが、その後、急増した。Reagan大統領の時代である。
一方、米国の生産性は上昇を続けているのに対し、労働者の所得は1980年代から横ばいになっている。
米国の所得税は累進税であるが、最高税率の推移は以下のとおり。
第二次大戦後、最高税率は90%であったが、Reagan大統領は就任時に70%であったのを、退任時には28%まで下げた。その間、福祉は大幅にカットした。
その後、39.6%に戻ったが、Bush減税で35%に下げた。
2012年末にBush減税の期限切れで、大騒ぎをしたうえで、年末ぎりぎりにObama大統領が共和党を押し切り、金持ち限定で減税をやめたが、元の39.6%に戻しただけである。
これに加え、金持ちにはキャピタルゲインが多いが、キャピタルゲインの税率はたった15%である。
ヘッジファンドマネージャーは通常、管理報酬と成功報酬を受け取るが、「
投資には当然、益も損も出るが、益のときに膨大な報酬を稼ぎ、損が出れば報酬がないだけである。
IRSのルールで、管理報酬に対しては35%が課税されるが、成功報酬には15%のキャピタルゲイン課税が適用されるため、納税額はきわめて少ない。
ヘッジファンドマネジャーの高収入をみて、大企業の経営者が自分たちももっともらっても当然と考え、互いに就任している社外取締役として報酬アップを提案して決めているとされる。
法人税についても、大企業の場合はTax Haven を利用して税金を免れている。
Googleがアイルランド子会社を利用して欧州の事業の利益にほとんど課税されていないことが問題となったが、Jeffrey Sachsによると、2006年にIRSとGoogleが秘密協定を結び、米国本社からアイルランド子会社に非常に安い4つの対価で技術をライセンスするのを認めたという。
米国の政治の最大の問題は、4つのグループが選挙費用の寄付を通じて政治家を動かし、米国を牛耳っていることである。
Obama大統領も庶民の寄付で選挙を戦ったとされるが、多額の選挙費用はそれだけでは全く不足で、大口寄付に頼っている。
1)軍産複合体(Military-industrial complex)
2)Wall Street - White House complex
Wall StreetのトップがFRBや財務長官などを勤め、退職後は再度 Wall Street に戻る。3)Big oil - Transport - Military complex
公共輸送に反対、京都議定書から離脱。元HalliburtonのCEOであったDick Cheney副大統領が、シェールガス開発で危険物質を使用するのを認め、物質の開示さえも不要とした。「Halliburtonの抜け穴」と呼ばれる。
4)Healthcare Indstry
Obama大統領もObama Careから薬価基準を除外し、医薬品会社は特許を理由に自由に薬価を決められる。
企業や団体が特定の候補者の選挙費用を支出することを連邦法は制限していたが、米連邦最高裁は2010年1月21日、企業の選挙資金拠出を制限した連邦法は言論の自由を保障した憲法に違反するとの判断を下した。
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