若杉冽著 「原発ホワイトアウト」を読んだ。
講談社から出版された「原発ホワイトアウト(若杉冽著)」という本が、登場人物は仮名ながら、原子力利権について赤裸々に書いてあると話題になっている。
役所の中ではきっと官僚が書いたに違いないと、犯人探しまで始まっているそうだ。(河野議員は同書で、保守党で原発反対の一匹狼議員 山野一郎 として登場する)
恐ろしくなる本である。
総括原価主義であることを利用し、コストに上乗せした金の一部を業者から預かり、政治に使う電力会社。
原発がなくなると、その金がなくなるため、原発再開に動く政治家。
電力会社と組んで原発再開の計画を立て、首相を動かし、首相を使って検事総長まで動かすエネ庁幹部。テロ対策や、中国でさえ導入されている炉心溶融に備える『コアキャッチャー』などを無視し、あっという間に再開承認。
真冬にテロが送電線の鉄塔を2本爆破するだけで炉心溶融に。
凍結で非常用発電機や電源車を動かせず、孫受けの判断による工事でベントの配管が漏れるなど。
避難する車の衝突多発で道路が不通に。(泉田新潟県知事の懸念していること)
驚いたことに毎日新聞夕刊(2013/10/22)に著者の若杉冽のインタビューが出た。
特集ワイド:「内部告発小説」の現役官僚に聞く 「再稼働いいのか」問いたい (全文)
■「日本の原発は世界一安全」はウソ
■政界への献金「モンスターシステム」
注目ポイント
「柱の部分は私の知る事実がベース。役所では表立って話題にしませんが、裏ではみんな『詳しすぎる。作者はだれだ』と大騒ぎです」。
「現実世界は原発再稼働に向けて着々と動いています。
一方で私は、電力業界のずるさや安倍(晋三)首相の言う『日本の原発は世界一安全』がウソなのを知っている。
私は公僕です。そうした情報は国民の税金で入手したとも言える。もちろん国家公務員として守秘義務もある。だから小説の体裁を借りて『みなさん、このまま再稼働を認めていいんですか』と問いかけたかった」。
(「モンスターシステム」と呼ぶ巨大な集金・献金システム)
「これは私が見聞きした事実を基にしています。東京電力福島第1原発事故後、東電の経営状況を調べた国の調査委は、東電が競争入札にした場合より1割強、割高な価格で業務発注していたことを明らかにしました。私は昔は2割だったと聞いていますが」。電力会社は資材や施設の修繕工事などを、随意契約で相場より割高な価格で業者に発注する。業者は割高分の一部を加盟する電力業界団体に預ける。団体はその預託金を政治献金やパーティー券購入に充て、「大学客員教授」などのポストを買い、浪人中の政治家にあてがう。
業界団体「日本電力連盟」に"上納"される預託金は年間400億円。これで業界に有利な政治状況をつくり出す、というわけだ。(公正であるべき官僚は)
「上層部ほど電力業界にねじ曲げられている。退職後の天下りポストが欲しいというのもありますが、一番の理由は出世です」(新規制基準の「穴」)
「欧州や中国で導入されている最新型原子炉は炉心溶融に備え、溶けた核燃料を冷却する『コアキャッチャー』という仕組みがある。抜本的な安全策ではないが、万が一の際にかなりの時間稼ぎができるのです。これが日本の新規制基準では無視された。電力業界や役所、原子炉メーカーも高額の費用がかかるから国民に知らせない。今や世界的に見ても日本の原発の安全性が劣るのは明らかです」(毎日新聞 2013/10/14 風知草)
原発は、送電線の中継鉄塔が倒壊するだけでメルトダウンに至る可能性がある。鉄塔を守れという議論は2011年の事故直後からあった。
原発につながる1000本以上の鉄塔は今も無防備のまま放置されている。
アメリカは核兵器と原発の維持管理に同じレベルのセキュリティーを施している。
原発従業員の徹底的な身元調査、思想調査、武装警備員による厳戒にもかかわらず、原発や関連施設の敷地に部外者が侵入してしまうことはある......。「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるんです。こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにもね」
若杉さんは再び街に溶け込んでいった。次回作の構想は「すでに固まりつつある」と言い残して。
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