米金融最大手のJPMorgan Chase は11月19日、2008年の金融危機を招いた住宅ローン関連証券の不正販売を巡り、総額130億ドルを支払うことで米司法当局と合意した。
米金融当局はほぼすべての大手金融機関を対象に責任を追及しており、今後、他の金融機関にも責任追及の動きは広がる。
司法省や米連邦住宅金融庁(FHFA)、複数の州当局などは、JPMorgan、Bear Stearns、Washington Mutual が2008年末までに十分な情報を開示せずに住宅ローン担保証券(RMBS)を住宅公社や投資家らに販売、住宅バブルの崩壊で価値が急落し、多額の損失を被ったとしてJPMorganの責任を追及していた。
大手投資銀行 Bear Stearnsは2008年5月30日付けで、JPMorgan Chaseに救済買収された。
住宅金融大手 Washington Mutualは2008年9月25日に資産差押えとなり、入札により事業の大部分をJPMorgan Chaseが取得した。被害を被った連邦住宅貸付抵当公社(Federal Home Loan Mortgage Corporation=Freddie Mac)と連邦住宅抵当金庫(Federal National Mortgage Association=Fannie Mae)は2008年9月6日に米連邦住宅金融庁(FHFA)の公的管理下に置かれた。
政府によると、JPMorganが2006-07年に引き受けた住宅ローンの一部を外部機関が調べたところ、27%が引き受け基準を満たしていなかったが、同行はその少なくとも半分を
住宅ローン担保証券に組み込んで販売した。
JPMorganは、同行が扱った住宅ローンは基準を満たしているとしたが、従業員の一人が基準を満たしていなかったと語ったことは認めた。
司法長官は声明で「今回の調査で明らかになった行為は間違いなく住宅ローン危機の種をまくことにつながっていた」と述べた。
JPMorganのCFOは「いかなる違法行為も認めておらず、認めた事実が残りの訴訟に影響するとは考えていない」と語った。
JPMoraganは当初、住宅ローン担保証券の不正販売の大半は、同社が金融危機時の08年に救済買収した大手投資銀行のBear Stearnsと Washington Mutualが起こしたもので、ブッシュ政権の要請に基づき救済買収したものであるとして責任を減免するよう求めていたが、司法当局は要請を拒否した。
これまでWall Street - White House complex(Wall StreetのトップがFRBや財務長官などを勤め、退職後は再度 Wall Street に戻る)がWall Street重視の政策をとってきており、金融危機で政府の支援を受けた金融機関が高額の報酬を支払うなど、国民の不満が高まっている。
今回は不人気なオバマ政権が人気対策で強攻策を取ったとのコメントが多い。
特に、政権の要請で救済合併したところの責任をすべて負わしており、金融機関側に不満が出ている。
和解金130億ドルの内訳は以下の通り。
1) 住宅ローン担保証券の品質に関する不適正な情報開示の罰金 20億ドル
2) 住宅ローン担保証券の買い手に対する賠償金 70億ドル
米連邦住宅金融庁(FHFA) 40億ドル(Freddie Mac 27.4億ドル、Fannie Mae 12.6億ドル)
National Credit Union Administration 14億ドル
Federal Deposit Insurance Corporation (FDIC) 5.15億ドル
New York州など5州 計 10.57億ドル
3) 損害を被った住宅ローンの借り手への支援金 40億ドル
このうち、住宅ローンの評価損に少なくとも15億ドル、住宅所有者に対する月間返済金の軽減に最大5億ドルをそれぞれ充て、残り20億ドルは住宅危機で大きな打撃を受けた地域に住む低中所得者向け新規ローンや荒廃住宅の解体などに利用される。
なお、刑事上の免責は和解に盛り込まれなかったため、不正販売に関わった行員らに対する刑事訴追の可能性は残った。
今回の和解は住宅ローン担保証券に関する連邦政府、州政府との和解であり、他にも係争はある。
今回の発表に先行して、JPMorgan Chaseは11月25日、米連邦住宅金融庁(FHFA)に51.5億ドルを支払うことで和解したと発表した。
これには上記の住宅ローン担保証券に対する40億ドルのほかに、証券化されていない住宅ローン(whole loan ) 分が11.5億ドル含まれている。
Freddie Mac 4.8億ドル、Fannie Mae 6.76億ドルの合計 11.5億ドル
JPMorgan Chaseは11月15日、住宅ローン関連の金融商品を不正に販売した問題で、21の機関投資家に、合わせて45億ドルを支払うことで和解に達したと発表した。
以上を合計すると、JPMorgan Chase の支払額は186.5億ドルに達する。
JPMorgan Chase では和解に備えて2013年7-9月期に訴訟関連引当金を92億ドル追加しており、引当金残は9月末時点で230億ドルになっており、今回分はすべて引き当て済みとなっている。
住宅ローン問題とは別に、JPMorgan Chase は本年9月、昨年発覚した巨額トレーディング損失に関連し、連邦証券法に違反したことを認め、9.2億ドルを支払うことで合意した。
同行経営幹部は2012年4月の時点で、ロンドンのチーフ・インベストメント・オフィス部門が7.5億ドルの損失を隠蔽するためにトレーディング勘定の水増しを行っていたことを認識していた。幹部の一部は昨年、第1四半期の決算報告に署名するのに「難色を示した」という。
ロンドンの部門は日々大きなポジションを動かし、市場では「London Whale(ロンドンの鯨)」とニックネームをつけていた。
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