本年2月にOccidental Chemical (OxyChem) がシェールガスを利用し、VCM原料用にエチレンを新設することを報じた。
立地:テキサス州 Ingleside
能力:年産 545千トン
原料エタン:隣に新設する液状天然ガスの分解装置からパイプラインで輸送
製品エチレン:隣接する100%子会社OxyVinylsのVCMプラントにパイプラインで輸送
2013/2/11 OxyChem、シェールガス利用でエチレン新設
OxyChemは10月31日、このエチレンプラントをメキシコのPVC、コンパウンド、塩ビパイプメーカーのMexichemとのJVで建設することを発表した。
両社50/50出資でIngleside Ethylene LLCを設立し、年産545千トンのエチレンクラッカーをOxyChem のIngleside工場に建設する。他に、テキサス州 Texas にパイプラインとタンクも建設する。 建設費は15億ドルとされる。
建設と操業はOxyChemが担当する。同社では、2014年央の建設開始、2017年第1四半期の商業生産を予定している。
発表によると、「両社間の長期の戦略的供給関係の一部として」、生産したエチレン全量を隣接する既存のVCMプラントに送り、原料とする。
生産したVCMはMexichemに輸送、MexichemでPVCを生産、更にPVCパイプに加工する。
Mexichem は塩ビなどのプラスチックパイプのグローバルリーダー。
OxyはEquistar設立時に3つのエチレンコンプレックスを拠出しており、現在、InglesideのVCM用のエチレンは(恐らく LyondellBasell のCorpus Christiの旧自社工場から)購入している。これをシェールガスからの低コストのエチレンに切り替える。
Mexichemはメキシコでは塩素/苛性ソーダとPVCは生産するが、エチレン、VCMは生産しない。
塩素をPemexに供給し、PemexからVCMを購入している。Mexichemにとっては安価なVCMの取得は念願であった。
今回の発表には明らかにされていない疑問点がある。
エチレン全量をVCMにするとVCMは100万トン以上となるが、発表では「VCMはMexichemに輸送」とあるが、全量なのか、一部なのか(その場合、何割位なのか)が明らかでない。
実は、Mexichemは本年9月にPemexとのVCMのJVを発表したばかり で、塩素を供給しVCMを購入しているPemexのVCMプラントをJVとした上で、20万トンの増強を行うことが決まっている。
PemexがPajaritosのVCMプラントを現物出資 (228百万ドル)、Mexichemが現金(200百万ドル)と資産(90百万ドル)を出資し、Pemex 44%/Mexichem 56%出資のJV Petroquimica Mexicana de Viniloを設立、 工場の手直し増強を行って現在の年産20万トンを2015年第4四半期に40万トンにする計画。
Mexichemが今後、OxyChemとPemexをどのように扱うのかは不明である。
また、VCMとPVCのメーカーであるOxyChem が、シェールガスを原料とする低コストのVCMを 自社のPVC用に使用せず、Pemexに外販する理由も不明である。
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現在、米国ではシェールガスを利用するエチレン計画が目白押しである。
米国の場合、原料の塩は工場周辺の地下の膨大な岩塩層から低コストで入手できる。
電力やエチレンは現在でも日本と比べて低価格だが、今後はシェールガス利用で更に大幅に安くなると見られている。
日本でのVCM、PVCの生産コストとの格差が更に拡大する。
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OxyChemの塩ビ関連事業は以下の通り。
OxyChem 塩素、苛性ソーダ
炭酸カリウム(世界最大)
塩化カルシウム(世界最大)
有機塩素化合物、そのOxyVinyls EDC
VCM(世界最大)
PVC(世界3位、北米2位)
OxyChemとGeon(1993年にGoodrichから独立)は1999年に塩ビ樹脂事業を統合し、OxyVinylsを設立した。(Oxy 76%)残るGeonはコンパウンド事業を行っていたが、2000年にコンパウンド会社のM.A. Hannaが合併統合し、Polyoneとなった。
この結果、OxyVinylsはOxyChem とPolyoneの76/24%のJVとなった。2007年にOxyChemはPoly OneからOxyVinyls株式を261百万ドルで買収し、100%子会社とした。
Mexichem は1998年にQuímica
Pennwalt とPolímeros
de Méxicoが合併して設立された。
フランスのElf Atochem
とメキシコのGrupo Empresarial
Privado Mexicanoが共同で所有したが、後者は1999年にCamesa
Groupと合併し、2003年にTotal (Elf
Atochem)の持株を買収し、メインの株主となった。
現在の同社の事業はビニルチェーンとフッ素チェーンの2つに分かれている。
1)ビニルチェーン:現在ラテンアメリカ最大の塩ビ樹脂、コンパウンド、塩ビパイプメーカー
Mexichemは2004年にメキシコ最大の塩ビレジン、コンパウンドメーカーのPrimexを買収した。
2006年に米国の塩ビコンパウンドメーカーBayshore Groupを買収。
2007年にはコロンビアの塩ビメーカーPETCOを買収、また、コロンビア最大の塩ビコンパウンドメーカーGeon Polímeros Andinosの株の50%を買収した。
2012年2月、欧州の塩ビパイプメーカーWavinを531百万ユーロで買収した。
現在の体制(子会社)は以下の通り。
子会社 工場 Mexichem Derivados メキシコ Coatzacoalcos 塩素 260千トン、ソーダ 286千トン、次亜塩素酸ソーダ 20千トン
塩素はVCM用にPemexに供給El Salto 塩素/ソーダ 40千トン、次亜塩素酸ソーダ 70千トン、塩酸 26千トン Mexichem Derivados Colombia コロンビア Zipaquira 苛性ソーダ、次亜塩素酸ソーダ、塩化鉄(5千トン) Quimir メキシコ 燐酸、燐酸ナトリウム、活性炭 Mexichem Resinas Vinilicas メキシコ Altamira I、II、
Tlaxcala、
La Presas-PVC 349千トン、e-PVC 12,500t Mexichem Resinas Colombia コロンビア 3工場 PVC 400千トン Mexichem America 米国 コンパウンドとリサイクルPVC
2006年にBayshore Vinyl Compounds、Bayshore Rigids、Ricicla の3社を買収Mexichem Compuestos メキシコ Altamira PVC compounds 60千トン Tlaxcala PVC compounds 12千トン C.I. Mexichem Compuestos Colombia コロンビア PVC, PE その他のコンパウンド 50千トン AlpahGary 米国 Compounds
2010年にRockwood Holding から買収
2)フッ素チェーン
Mexichemは2004年にQuímica Flúor を買収し、世界最大の蛍石埋蔵量を誇るCompania Minera Las Cuevasと統合してMexichem Fluorとし、フッ化水素酸の世界最大の垂直統合メーカーとなった。
・Mexichem Fluor -
San Luis Potosí:
世界最大の蛍石メーカー
能力はmetallurgic gravel
が350千トン、acid-grade
concentratesが280千トン
北米、南米、欧州、日本に輸出
・Mexichem Flúor
- Matamoros:
世界第二位のフッ化水素酸メーカー
能力 95千トン
98%を米国に輸出
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