トクヤマとセントラル硝子は10月31日、両社の創業当時からの製品であるソーダ灰と塩化カルシウムの販売について共同事業会社を設立し販売事業を移管・集約することで合意したと発表した。
国内ソーダ灰市場は、需要が大幅に縮小し、回復が見込めない状況で、 主用途であるガラスや粉末洗剤は慢性的な需要減少、ユーザーの海外移転等により今後も市場の成長・回復は厳しい。
両社はまず、2014年10月1日から販売事業を統合する。
2015年5月末にはセントラル硝子が生産から撤退し、トクヤマ1社が供給する体制にする。
販売会社(社名は検討中)はトクヤマが65%、セントラル硝子が35%を出資する。
両社の生産能力は以下の通り。
トクヤマ セントラル 合計 ソーダ灰 34万トン 25万トン 59万トン 塩化カルシウム 19万トン 18万トン 37万トン
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ソーダ灰とその副産品の塩化カルシウムは、現在の電解法苛性ソーダの以前の製法であったアンモニア法苛性ソーダの原料であった。
1961年11月に通産省が「アンモニア法か性ソーダの電解法への転換方針」(後記)を出し、各社がアンモニア法ソーダを停止した以降も、ソーダ灰の生産は続けてきた。
アンモニアソーダ法 以上をまとめると、
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ソーダ灰は幅広い分野で利用されている。
・板ガラス(自動車ガラス・建築ガラス・タッチパネルガラス等)、びんガラスの原料
・グラスウール(断熱材)の原料
・石けん、洗剤の原料
・かん水
・水処理助剤
副産の塩化カルシウムは、除湿剤、融雪剤、豆腐用凝固剤、食品添加物などに使用される。
途中で生産される塩化アンモニウムは肥料などに使われる。
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アンモニア法ソーダのメーカーは4社(トクヤマ:旧・徳山曹達、セントラル硝子:旧・宇部曹達工業、旭硝子、東ソー:旧・東洋曹達)で、各社とも苛性ソーダの製法転換後もソーダ灰の生産を続けたが、需要は減少した。
また、コストが安い米国の天然ソーダ灰の輸入もあり、その後は中国からの輸入も増大した。
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米国の天然ソーダ灰は炭酸ナトリウムを豊富に含んだトロナ鉱石(Na2CO3・NaHCO3・2H2O)を精製して製造される。
約5000万年前太古のアメリカ中西部にあった大きな湖が乾燥し始め、干上がった湖底に堆積した有機物から発生する炭酸ガスとまわりから流れ込むナトリウム塩が反応し、400万年の時を経てトロナ鉱石が作りあげられた。
国内市場は1979年度に
ピークの140万トンを記録したが、その後、新築住宅着工低迷による建築用板ガラス生産の減少、顧客の海外移転に伴う国内ブラウン管用ガラス生産の減少、アルミ缶やペットボトルへの移行による飲料用ガラス瓶需要の減少などの影響を受け、2012年度には59万トンに減った。
国内生産は32万トンで両社がほぼ半量ずつを生産、残る27万トンは中国や米国などからの輸入である。
近年は中国品の輸入が増加し、販売価格も下落傾向にある。
東ソーは1996年、南陽のプラント(32万トン)を停止、米国天然ソーダ灰の輸入販売に切り替えた。
旭硝子は、北九州工場・千葉工場の両工場のほか、1990年に米国天然灰生産会社Solvay Soda Ash J.V(Solvay 80%、旭硝子 20%) を設立、3拠点であったが、1997年に千葉を停止、2001年に北九州も停止した。
同社は2004年に、同じく米国産ソーダ灰を輸入販売する住友商事と折半で販売JVのソーダアッシュジャパンを設立したが、2007年に住商100%とした。
フッ素化学事業の更なる強化のために経営資源を集中していきたい旭硝子と、ソーダ灰事業に更に注力していきたい住友商事との考えが一致したもの。
なお、セントラル硝子は当初の社名は宇部曹達工業で1936年に設立された。
1958年に子会社セントラル硝子を設立したが、1963年にこれを吸収合併し、社名をセントラル硝子に変更した。
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1961年11月の通産省 「アンモニア法か性ソーダの電解法への転換方針」はPVCの増設、原料転換に対応するもので、内容は以下の通り。
① カーバイドのコスト引き下げは困難であるので,増設に当たっては炭化水素源をEDCなどコストの安いものに移行させる。
② EDC法の採用に当たっては極力カーバイド法のスクラッブ・アンド・ビルドを進める。
③ 塩素源については苛性ソーダとのバランスを取るためア法ソーダの電解法への転換を進める。
(PVC増産で塩素需要が急増。余剰ソーダ輸出、ア法ソーダ減産でも対応不可になってい。)
④ ア法メーカーのEDC計画を塩素消化の面から支援する。
この方針によりアンモニア法メーカーは先ず、EDCの外販から始めた。
東洋曹達/徳山曹達:1964年 周南石油化学設立 (両社にプラント) → 1978年解散
セントラル硝子 :1963年 セントラル化学設立(川崎)
各社とも、PVCへの進出を図ったが、PVC増設枠の配分取得で難航した。
徳山曹達(現・トクヤマ):
1966年に鉄興社(既存PVCメーカー)、ダイセルとのJV サン・アロー化学を設立、VCM・PVCの生産を開始。
後に徳山曹達100%とし、現在に至る。(PVCは新第一塩ビ)東洋曹達(現・東ソー):
1966年に独自でVCM生産開始
1969年に鉄興社(既存PVCメーカー)とのJV 四日市鉄興社を設立、PVCの生産を開始。
1975年に鉄興社を吸収合併、現在に至る。(PVCは大洋塩ビ)旭硝子:
1966年に米国PPGとのJV 旭ペンケミカルを設立、VCM生産開始。
1973年に独自でPVCの生産を開始。
2002年 国内PVCから撤退。
現在、VCMは京葉モノマー、海外PVCはインドネシアのAsahi-masで事業継続セントラル硝子:
1969年にセントラル硝子、東亞合成、東燃化学が川崎有機を設立。
1970年にセントラル化学がVCMを、川崎有機がPVCを生産開始。
2003年にセントラル化学がPVC事業から撤退。
21世紀に入り、日本ゼオン、住友化学、呉羽化学、三菱化学、チッソ、東亞合成などの各社がPVCから撤退する中、トクヤマと東ソーは健在である。
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