11月9日から12日に中央委員204人、中央委員候補169人が出席して三中全会(中央委員会第三次全体会議)が開かれ、11月15日に「改革の全面的深化における若干の重大な問題に関する中共中央の決定」が発表された。
概要は以下の通り。
意義と指導思想 | ||
・ | 改革開放は新しく偉大な革命であり、現代中国の最も際立つ特色 | |
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改革には、中国の特色ある社会主義という偉大な旗幟を高く掲げ、 マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論、「三つの代表」という重要思想、科学的発展観を指導の柱とする。 |
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・ | 中国が長期的に社会主義の初期段階にあるという最大の現実に立脚し、発展は依然として中国のあらゆる問題を解決するための要 |
2020年までに、重要な分野と要となる部分の改革で決定的な成果を上げ、系統的で整った、科学的で規範的な、効果的な運用が可能な制度体系を形成し、各方面の制度をさらに成熟してさらに形の整ったものとする。
6つの主眼
経済体制改革 | 資源配置で市場に決定的役割を果たさせる | |
政治体制改革 | 党の指導と人民主体 | |
文化体制改革 | 社会主義の核心価値体系と社会主義文化強国の建設 | |
社会体制改革 | 国民生活のさらなる保障と改善、社会の公平と正義の促進 | |
エコ文明体制改革 | 美しい中国の建設 | |
党の制度建設改革 | 科学的な執政と民主的な執政、法律に従った執政の水準の向上 |
改革の要点
1.基本的な経済制度の堅持・改善: | ||
公有制を主体とし、さまざまな所有形態の経済が共同で発展するという制度は、中国の社会主義市場経済体制の根幹 | ||
・ | 財産権の保護制度を完備 | |
・ | 混合所有制経済を積極的に発展させる | |
・ | 国有企業の近代的企業制度の完備を推進 | |
・ | 非公有制経済の健全な発展を支援 | |
2.近代的な市場体系の完備を加速:資源配置における決定的役割を市場に果たさせる | ||
・ | 公平、開放的、透明な市場ルールを打ち立てる | |
・ | 市場が中心となった価格決定の仕組みを整備 | |
・ | 都市と農村の統一的な建設用地市場を構築 | |
・ | 金融市場体系を完備 | |
・ | 科学技術体制改革を深化 | |
3.政府の職能転換を加速:科学的なマクロ調整と政府による効果的な統治 | ||
・ | マクロ調整体系を整備 | |
・ | 政府の役割を全面的かつ正確に果たす | |
・ | 政府の組織構造を改善 | |
4.財政・税務体制改革を深化:科学的な財政・税務体制 | ||
・ | 予算管理制度を改善 | |
・ | 税収制度を改善 | |
・ | 権限と支出の責任とが相互に見合った制度を構築 | |
5.都市と農村の発展の一体化に向けた体制・仕組みを整備: 都市と農村との二元構造は、都市と農村の発展の一体化を制約する主な障害 |
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・ | 新型農業経営体系の構築を加速 | |
・ | 農民により多くの財産権を与える | |
・ | 都市と農村における生産要素の平等な交換と公共資源の均衡配置を推進 | |
・ | 都市化の健全な発展のための体制・仕組みを整備 | |
6.開放型経済の新体制を構築 | ||
・ | 投資条件を緩和:国内資本と外資の法律法規を統一し、外資をめぐる政策の安定性・透明性・予見可能性を確保 | |
・ | 自由貿易区の建設を加速 | |
・ | 内陸部や辺境地区の開放を拡大 | |
7.社会主義民主政治の制度建設を強化:人民の主体的地位を保証することを根本 | ||
・ | 人民代表大会制度の時代に伴う前進を促す | |
・ | 協議と民主との幅広く多層にわたる制度化発展を推進 | |
・ | 基層における民主を発展させる | |
8.法治中国の建設を推進 | ||
・ | 憲法と法律の権威を維持 | |
・ | 行政・法執行体制の改革を深化させる | |
・ | 法律にのっとった独立的で公正な審判権・検察権の行使を確保 | |
・ | 司法権の運用の仕組みを整備 | |
・ | 人権司法保障制度を改善 | |
9.権力行使の制約および監督体系の強化 | ||
・ | 科学的で効果的な権力の制約・協調の仕組みを形成 | |
・ | 腐敗撲滅のための体制・仕組みの革新と制度的保障を強化 | |
・ | 正しいやり方が常態化するような制度の整備・改良を進める | |
10.文化体制・仕組みの革新を推進:国家の文化ソフトパワーを増強 | ||
・ | 文化管理体制をさらに完全なものとする | |
・ | 近代的な文化市場体系を構築・整備 | |
・ | 近代的な公共文化サービス体系を構築 | |
・ | 文化開放の水準を高める | |
11. 社会事業の革新改革を推進:人々のニーズをさらに適切に満たす | ||
・ | 教育分野の総合改革を深化させる | |
・ | 就業・起業を促進する体制・仕組みを改善 | |
・ | 合理的で秩序ある所得分配の局面を形成 | |
・ | さらに公平で持続可能な社会保障制度を構築 | |
・ | 医薬衛生体制改革を深化させる | |
12.社会管理体制の革新 | ||
・ | 社会の管理方式を改良 | |
・ | 社会組織の活力を引き出す | |
・ | 社会矛盾を効果的に予防し解消する体制を革新 | |
・ | 公共安全体系を整備 | |
13.エコ文明の制度建設を加速 | ||
・ | 自然資源資産の財産権制度と用途管理制度を整備 | |
・ | 生態保護のためのレッドラインを引く | |
・ | 資源の有償使用制度とエコ補償制度を実行 | |
・ | 生態環境の保護管理体制を改革 | |
14.国防・軍隊改革の深化 | ||
・ | 軍隊の体制編制の調整・改革を深化させる | |
・ | 軍隊の政策制度の調整・改革を推進 | |
・ | 軍と民との融合のさらなる発展を推進 |
トピックス
・ | 国有企業改革は不十分(事前に大幅な改革が行われるとの観測があった) |
公有制を主体とするのは中国の社会主義市場経済体制の根幹 | |
そのなかで、非国有資本の出資を認める、石油や電力などは「競争性のある価格」にすることを目標 国庫納付金(配当)を2020年までに利益の30%に引き上げ (現在、たばこ20%、石油・電力15%など5段階、平均10%程度) |
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・ | 出産政策を徐々に調整・改善し、人口の長期的な均衡発展を促す |
計画生育政策という基本的な国策を堅持し、一方が一人っ子である夫婦は2人目の子どもを出産可能に | |
・ | 定年年齢を徐々に引き上げる |
・ | 農業移転人口の市民化を推進し、条件に合致する農業移転人口を徐々に都市部住民としていく |
戸籍制度改革を加速し、建制鎮と小型都市の移住制限を全面的に緩和、中型都市の移住制限を秩序よく緩和 特大型都市の人口規模を厳しくコントロール |
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・ | 指導幹部の勤務生活保障制度を規範的かつ厳格に実施 |
基準を超えた公務接待を禁止し、規定や基準に反した待遇享受などの問題を厳しく取り締まる | |
・ | 所得分配の秩序を規範化 |
違法な収入を取り締まり、低所得者の収入を増加させ、中等所得者の比重を拡大 | |
都市・農村間や地域間、業種間の所得分配の格差縮小 | |
ラグビーボール型の分配局面を形成 |
付記
国有企業改革が不十分であったことについて、毎日新聞(11月21日)は「リコノミステリー」として報じている。
「リコノミクス」とは中国の首相、李克強氏の経済改革政策である。今年3月、全国人民代表大会(議会)で表明した。
中国の成長力も落ちた。規制緩和によって国有大企業の特権を廃し、市場経済化を進めて民間活力を引き出そうというのがリコノミクスだ。となると、「大型国有企業」と結びついた共産党内の特権集団から激しい抵抗が出る。石油閥あり、電力閥あり、不動産業界、金融業界、通信業界との癒着あり......共産党内でそれぞれの権益集団代表がにらみをきかせている。
(今回)リコノミクスの具体化になると思われていたが、結果は大違い。李克強首相が関与していなかった。リコノミステリーだ。
中国では、経済政策の提案は首相か副首相が行うのが慣例だ。今回の3中全会では習近平総書記が自ら決議案の趣旨説明演説をした。あまり普通のことではない。
習氏は演説のなかで「公有制経済を守る」と断言した。要するに国有企業の権益を守る一方で、国有企業からの国庫上納金を増やそうという改革案だ。
習近平政権は構造改革という険しい道を避けて、目先の安定を求めた。持続的成長への挑戦を回避した。
リコノミクスは消え去るのみ。
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