日本企業連合、アサハンアルミから撤退

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1970年代に日本とインドネシア両国間の国家プロジェクトとして設立されたPTインドネシア・アサハン・アルミニウム(INALUM)について、日本の企業連合とインドネシア政府が12月9日、日本側が全保有株を同政府に5億5670万ドルで売却するとの合意文書に調印した。
合弁は解消され、インドネシアが事業を国有化する。

2011年度のアルミ地金生産量は246千トンで、その6割は日本向けであったが、インドネシアは今後、全製品を国内市場に回す意向を示している。

アサハンアルミについては操業30年を迎える2013年11月以降、インドネシア政府が日本の出資分を買い取る権利を持つ。
JV協定では、「生産開始」(1983年11月1日)から30年後に満了、設備は簿価などの補償を条件として、インドネシア政府に移管されることとなっている。

現在の出資比率は日本側 59%、インドネシア側 41%となっている。

日本側投資会社は「日本アサハンアルミニウム」で、下記各社が出資する。

国際協力機構(JICA) 50% 
旧精錬5社(
住友化学、昭和電工、日本軽金属、三菱化学、三井アルミ) 各7.5%、計37.5%
7商社 合計 12.5%

当初は国際協力銀行が出資したが、その後解散し、海外経済協力業務をJICAが承継した。

インドネシア政府と日本側は2011年2月18日、交渉を開始した。

計画概要と経緯については 2010/10/14  インドネシア、アサハンアルミの将来

2012年8月にインドネシアのハッタ・ラジャサ経済担当調整相は、INALUMの増産体制確立とIPO(新規株式公開)を支援するため、同社に最大12兆ルピア(約1000億円)の政府資金を投資する計画であることを明らかにした。

インドネシア政府では国内のアルミ需要が急増していることから日本側の株式の買い取りを決めたとし、政府が7兆ルピア(約580億円)で日本側の株式を全株買い取るとした。

しかし、複数の関係筋によると、「実際にインドネシアが提示した金額はそれを大きく下回っており」、交渉は難航した。

日本アサハンアルミニウムの岡本社長は本年9月に、株式売却交渉について、「譲渡価格や譲渡条件で未だ隔たりが大きい」ことを明らかにした。

合弁契約が終わる10月末までの合意を目指して交渉を継続するが、合意に至らない場合は世界銀行傘下の投資紛争解決国際センター(ICSID)に仲裁を求めるとした。
「JICAは国民に、民間企業は株主に、それぞれ説明責任があり、合理的な理由なくして相手方の要求はのめない」と指摘した。

その後、日本政府内から問題長期化が両国関係に悪影響を及ぼすとの懸念の声が上がり、一転して今回の合意に至った。


INALUMは、円高に伴う円建て借入金の金利負担増、渇水による稼働率の低下、アルミ市況の低迷などで収益が安定せず、稼働開始から30年に近付いた2010年度にようやく累積損失を一掃した。



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