旭化成のポリカーボネートのグローバル展開戦略

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旭化成は世界で初めてのCO2からの非ホスゲン法ポリカーボネート(PC) 樹脂製造技術を開発、2002年6月から台湾のJVで商業生産を開始しているが、このたび、この技術を改良に成功した。

新技術では原料の一部を変えることで、これまで4段階あった工程を3段階に減らした。1工程分の設備や電気代を減らせるため、生産コストは既存技術より1割以上減らせるという。(2013/12/6 日本経済新聞)

世界のPC樹脂は全て一酸化炭素(CO)を原料とするものであり、大部分は一酸化炭素と塩素から製造されるホスゲンを原料としている。ホスゲン法はホスゲンの毒性問題や環境面での問題をもっている。

旭化成が非ホスゲン法の開発に着手したのは1977年で、1988年に実証プラントを稼働した。
エチレンオキサイドと副生CO及びビスフェノールAを原料とし、高性能のPC樹脂と高純度EGの2つの製品を高収率で製造するもの。

 

 















旭化成は、25年の歳月をかけて実用化に成功したこの独自技術を、国内でも海外でも自らは使用していない。
製造技術をPC樹脂メーカーに供与し、対価を受け取るライセンス契約を締結し、この技術を世界に展開
するというユニークな戦略を取っている。

後発の立場で参入するよりも、ライセンス契約で事業を展開した方が収益性が高いと判断したためで、「環境対応に優れた製造法として世界のPC樹脂メーカーに向けて技術を広めたい」としている。

同社のライセンス先は以下の通りで、合計能力は665千トンに達する。
同社では、
「ライセンス契約の拡大を通じ、15~20年をめどにノンホスゲン法による生産能力を100万トン以上に高め、約25%のシェアを確保したい」としている。

台湾 旭美化成
奇美実業90%、旭化成ケミカルズ10%
100千トン
第1期    50千トン  2002/6
第2期 50千トン  2006
ロシア Kazanorgsintez
タタルスタン共和国カザン市
65千トン 2007
韓国 Lotte Chemical 80千トン  
Samsung Cheil Industries 160千トン 第1期   80千トン  2008
第2期   80千トン  2012
Saudi Arabia Saudi Kayan Petrochemical
(Sabic 35%、Kayan Petrochemical 20%)
260千トン 世界最大規模
国 Daelim Industrial が建設
合計 665千トン  


旭美化成

ABS樹脂で世界No.1メーカーの奇美実業は、ABS樹脂に続く上級樹脂の事業化を希望し、旭化成はポリカーボネート樹脂(PC)の次世代製造技術の開発に成功し、その事業化の可能性を探っていた。
両社のニーズが合致し、1999年11月にJV設立で合意し、旭美化成を設立した。(奇美実業51%、旭化成49%)

2002年に第1期 50千トンが完成、2006年に第2期 50千トンが稼動、合計能力が100千トンとなった。

2004年に製品技術および工場運転技術の実証を完了し、所期の目的を達成、今後より迅速でフレキシビリティのある経営をするための最適体制を両社で検討した結果、出資比率を、奇美実業90%、旭化成ケミカルズ10%とした。

その後、旭化成はこの技術のライセンス活動への精力的な取り組みを開始した。

ロシア連邦タタルスタン共和国カザン市のカザンオルグシンテツ社(Kazanorgsintez)

2004年8月、旭化成はこの技術を高く評価した同社との間でライセンス契約の締結に至った。

カザン市に、ロシアで第1号となる年産65,000トンのPCプラントを建設し、2007年より生産を開始した。

韓国 Lotte Chemical

Lotte Chemical(旧 湖南石油化学)は旭化成から技術を導入、麗川に65千トンのプラントを建設した。
2010年に15千トンの増設を行い、能力を80千トンとした。

韓国 Samsung Cheil Industries

Samsung Cheil Industries は2006年に旭化成から技術導入を行い、2008年に麗川に第1期 80千トンを稼動させ、2012年に第2期 80千トンが完成、合計能力を160千トンとした。

サウジ Saudi Kayan Petrochemical

Saudi Kayan Petrochemical は2005年10月にSABIC 35%、Al-Kayan 20%出資で設立された。残り45%は公募した。

アルジュベイルに100億ドルを投じて、エチレン 1,350千トン、LDPE 300千トン、PP 350千トン、Bis-Phenol A  240千トン、PC 260千トン等の石化コンプレックスを建設するもので、2009年稼動を目指した。

2006/7/5  新しいサウジ石化計画スタートへ

PC能力は260千トンで、旭化成が技術を供与した。

工場建設は、スペインのTecnicas Reunidas が
Bis-Phenol A ( 240千トン)を担当、PCは韓国のDaelim Industrial が担当した。

 


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