NuGen は仏エネルギー大手GDF Suez とIberdrola の50/50JVで、英中部Sellafieldで合計出力360万キロワットの原発建設を予定している。Iberdrola はスコットランドのScottish Powerを所有する。
2010年11月にGDF Suez、Iberdrola、Scottish and Southern Energy が夫々37.5%、37.5%、25%出資のJVを設立したが、2011年9月にScottish and Southern が撤退し、両社の50/50JVとなった。
しかし、Iberdrola が2012年に、事業再編と債務削減を進めるためにNuGenの保有株を売却する意向を明らかにしたことで、プロジェクトは頓挫していた。
東芝は子会社Westinghouse Electric の原発設備をNuGen に納入することを狙い、同社への出資を検討していた。
原発設備を納入した後に経営権を売却することを想定しているとされている。
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日立製作所は2012年10月30日、英国で原子力発電所の建設を計画している原発事業会社Horizon
Nuclear Power の全株式を、同社株主のドイツのエネルギー会社
No.1のE.ON及びNo.2のRWEから6億7000万ポンド(約850億円)で買収する契約を締結した。
Horizonが保有する北ウエールズのAnglesey島のWylfaとSouth
GloucestershireのOldburyの2カ所で、1,300メガワット級の原子力発電設備をそれぞれ2~3基建設する予定で、日立が世界で唯一運転実績を持つ第三世代原子炉である改良型沸騰水型原子炉(ABWR)技術を用いる。
2012/11/1 日立製作所、英の原発会社買収
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英国では19基の原発が稼働しているが、英国政府は2009年11月に原発拡大策を発表した。
10か所に原発を新設し、2025年までに全電力の25%を原発で賄う計画(当時は全電力の13%)。
稼働中 廃止 政府案 Berkeley 2基 Bradwell 2基 ◎ Calder Hall 4基 Chapelcross 4基 Dounreay DFR 2基 Dungeness 2基 2基 Hartlepool 2基 ◎ Heysham 4基 ◎ Hinkley Point 2基 2基 ◎ Hunterston 2基 2基 Oldbury 2基 ◎ Sizewell 1基 2基 ◎ Torness 2基 Trawsfynydo 2基 Windscale 1基 Winfrith SGHWR 1基 Wylfa 2基 ◎ Braystones ◎ Sellafield ◎ Kirksanton ◎ 合計 19基 26基
しかし、福島事故で原発の安全確保のためのコストが見直された結果、2012年以降、ドイツ、英国の企業が原発計画から撤退した。
ドイツのE.ONとRWEは2009年にHorizon Nuclear Power を設立し、英国西部の2カ所に建設用地を購入、原子炉6基(発電容量計6ギガワット以上)の建設を計画していた。
2012年3月に原発建設計画を断念し、共同出資会社を売却する方針を発表した。(→ 日立が買収)下記のEDFのHinkley PointとSizewell の計画に英国のCentricaが2008年に20%の出資を決めたが、その後、福島事故による新しい安全対策などのさまざまな理由でコストが跳ね上がり、撤退を決めた。これにより英国企業は全て新規計画から撤退した。
英国政府はこのたび、原発推進のため自然エネルギーの普及に使われている「固定価格買取制度」を原発に導入した。
英国では、再生可能エネルギー、原子力、CCS付火力など低炭素電源へシフトする政策を掲げているが、現行の卸電力取引制度(BETTA)は、このような政策を前提に策定されたものではなく、強力な施策が導入されない限り、開発コストが高いこれら電源は市場から締め出されることになる。
そのため、英国政府は2011年7月、これらの電源の支援を目的とした電力市場改革(EMR: Electricity Market Reform)に着手した。
現行の卸電力取引制度の枠組みはそのまま残すものの、卸電力市場に低炭素電源を導入する強いインセンティブを組み込むべく、以下の4つの施策の導入を掲げている。
これらの制度は2013年以降、順次導入されることになっている。
・ CO2排出権価格の下限値の設定:火力発電事業者が購入しなければならない排出権の価格を一定以上に保つことで、低炭素電源を相対的に優位に立たせる制度 ・ 低炭素電源からの固定価格買取制度の導入:再生可能エネルギーの他、原子力やCCS付火力なども対象とする方針 ・ 新設火力のCO2排出基準の設定:石炭火力に対するCCS設置を実質義務化するもの。 ・ キャパシティーペイメント制度の導入:再生可能エネルギーの大量導入によって、設備利用率の低下から投資不足が懸念される一般電源を確保する制度(設備に対する報酬制度) http://www.jepic.or.jp/data/ele/ele_05.html
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英国での原発新設は1995年完成したSizewell B 原発以来となる。2023年の運転開始を目指す。
総額160億英ポンド(うち建設費は140億英ポンド)を投じて、Hinkley Pointに欧州加圧水型原子炉(EPR) 2基(総出力320万kW)を建設する。
これに続いて、Sizewell に2基のEPRの建設を進める。
同型のものを建設することで、設計、購入、建設における経費節減を図る。("series benefit")
運営体制としては、機器メーカーのAREVA、提携している中国の中国広核集団(CGN:旧称中国広東核電集団)と核工業集団公司
(CNNC) に加え、他社の参加を交渉している。
EDF Group 45-50% AREVA 10% CGN & CNNC 30-40% その他(15%までの参加を認める)
広核集団はこれを海外原発事業への進出の足掛かりにしようとしている。
同社はHorizon 買収にも名乗りを上げた。
英国政府は安全保障上、懸念を示しており、Horizon では少数株主持ち分しか取得できないと主張し、最終的には日立製作所が取得した。
英国政府とEDFは今回、原子力発電での電力の固定価格買取価格(35年間)について、下記の通り合意した。
Sizewell での建設を決める場合 £89.50/MWh(約14.1円/kWh)
Hinkley Point単独の場合 £92.50/MWh(約14.6円/kWh)
これは現在の卸価格の約2倍になる。
英国の自然エネルギーの固定費買取価格は以下の通り。(いずれも 2014年)
・陸上風力 £100/MWh ・洋上風力 £155/MWh ・潮力・波浪 £305/MWh ・バイオマス £105/MWh ・太陽光 £125/MWh
原発に固定費買取価格制度を適用することに対する反対は強い。
反原発団体 Stop Hinkley は、「原発の固定価格は、現在の市場価格の約2倍と高い。原発にこの制度を導入するのは、事実上の補助金にあたる」と言う。
Hinkley原発での固定価格は、ほかの自然エネルギーより安いが、買い取り期間が通常15~20年程度の自然エネルギーに比べて、35年とかなり長い のも問題とされる。
これらの批判に対しては、「世界的なエネルギー需要の高まりで化石燃料が高騰するので、今は市場価格の2倍でも将来的には元が取れる」、「原発は60年使うからその6割を保証するだけで、自然エネルギーも運転期間25年に対し15年だから、変わりない」との反論がなされている。
英国の電力価格は、2005年を100として、2012年までに1.7倍、2000年と比較すると2倍以上に高騰しているという。 今後、どこまで上がるのだろうか。
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米国では、シェールガスの生産増加の影響で天然ガス価格が低くとどまり、発電コストの競争力が低下したことや安全性や信頼性向上のために多額の費用がかかることなどを理由に、既存の原発を停止したり、新設を中止するケースが出ている。(他の問題も絡むが。)2013/9/2 米・電力大手Entergy、Vermont Yankee原発の廃炉を決定
英国での今回の原発電力の買取価格の高さは驚きである。
まともに対策を取れば、こんな価格でないとやれないのであろうか。
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