ガス絶縁開閉装置事業のカルテル制裁金に関する欧州司法裁判所の判決

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欧州司法裁判所は12月19日、欧州のガス絶縁開閉装置(GIS : gas insulated switchgear)市場における欧州競争法違反による制裁金に関し、三菱電機と東芝、及びSiemens(ドイツ) が行っていた上訴を却下した。

これにより、Siemensについては2007年1月の欧州委員会の制裁金が確定した。

三菱電機と東芝については、2011年7月に欧州一般裁判所が計算誤りとして制裁金を無効にしたため、欧州委員会が2012年6月に新しい制裁金の支払いを命じ、両社がこれを不満として欧州一般裁判所に訴えており、これの判決待ちとなっている。

この判決により、日本企業が欧州市場で販売をしない約束をすれば、カルテルに参加していると判断され、制裁金を命じられることとなった。

経緯は以下の通り。

(単位:千ユーロ) 2007/1
 制裁金
2011/7
一般裁判所
  2012/6 
 制裁金
2013/12
司法裁判所
制裁金
Siemens(ドイツ)   396,563 却下 上訴   却下 2007/1分
確定
Siemens(オーストリア)    22,050          
ABB(スイス)       0          
三菱電機 2002/10  JV
 
TMT & D
  118,575

取り消し
(違反有・
 計算誤り)

上訴 74,817

連帯
  4,650

却下 2012/6分
一般裁判所
審議中
東芝    90,900 56,800
Alstom(フランス)    11,475          
Areva/Alstom(フランス) 53,550          
日立製作所    51,750 却下        
Schneider(フランス)    8,100          
富士電機システムズ    3,750 情報提供
減額→3,550
       
日本AEパワーシステムズ
(富士電機システムズ、
日立、明電舎のJV)
   1,350          
合計   750,713          
   
1) 2007/1 欧州委、制裁金支払い命令
   
  欧州委員会は2007年1月24日、電力用ガス絶縁開閉装置で国際カルテルを結んでいたとして日欧10社に7億5千万ユーロの制裁金支払いを命じた。


少なくとも1988
からカルテルを結んでいたとされる。各社が連絡をとりあって割当数量比率で受注できるよう調整し、最低価格を決めていた。また、日本企業は欧州で販売せず、欧州企業は日本で販売しないことも決めていた。

日本企業は欧州での販売実績はほとんどないが、上記の取り決めに従って欧州で応札せず、直接的に欧州での競争を制限したため制裁金が課せられた。

  2007/1/26 EU、電力用ガス絶縁開閉装置のカルテルで1200億円の制裁金

なお、日本とEUには「独占禁止協力協定」があり、違反行為の調査などを相互に通報する規定が設けられているが、欧州委が通報を忘れたため、公取委は制裁金の発表でカルテルの存在を把握したが、既に時効となっていた。

  2008/4/19 電力用ガス絶縁開閉装置のカルテルの日本での扱い

   
2) 欧州一般裁判所(一審)への提訴
   
  日本企業各社は欧州競争法に違反する行為を行っていないとして提訴。
  Siemensは、「制裁金の額は無茶苦茶で、どうしてこんな額になるのか理解できない」として提訴した。
   
3) 2011/7 欧州一般裁判所
   
  EUの一般裁判所(General Court:第一審裁判所を改称)は2011年7月、東芝と三菱電機への制裁金を無効とし、富士電機への制裁金を減額した。
日立製作所の提訴は却下した。
Siemensの訴えも却下した。

  http://europa.eu/rapid/press-release_CJE-11-70_en.htm

先ず、欧州で販売していない日本企業に制裁金が課せられたことについては、欧州市場は欧州企業に、日本市場は日本企業とという(書類にはない)合意があり、日本側は欧州市場への参入を行わず、欧州側は欧州市場割当の結果を日本側に連絡していること、欧州側は日本市場への不参入を約束するとともに、一部の海外市場に参入しないことを約束していることから、カルテルに参加していると認めた。

制裁金の計算に際し、欧州委員会が三菱電機と東芝には2001年の売上高を使用し、欧州企業には2003年の売上高を使ったことを問題とし、平等な扱いでないとみなし、無効とした。
(東芝と三菱電機は2002年10月に両社の電力系統・変電事業を統合して50/50の合弁会社
TMT & Dを設立したが、カルテルにはJVではなく、東芝と三菱電機として参加していたため、欧州委は、JV設立前の両社の売上高を採用した)

富士グループについては、情報提供による協力があったのに評価しなかったとして、2002年10月以前の分の制裁金を240万ユーロから220万ユーロに減額した。

Siemensの訴えも却下した。

  2011/7/15 欧州一般裁判所、東芝・三菱電機への電力用ガス絶縁開閉装置カルテル制裁金を取り消し

   
4) 司法裁判所への上訴
   
  東芝と三菱電機及びSiemensは判決を不服として司法裁判所に上訴した。
   
5) 2012/6 欧州委員会
   
  欧州委員会は東芝と三菱電機に対し、制裁金の計算をやり直し、新しい制裁金の支払いを命じた。一部は連帯での支払いとなる。
   
6) 一般裁判所への提訴
   
  東芝と三菱電機は新しい制裁金を不満とし、一般裁判所に提訴した。現在、審議中。
   
7) 2013/12 司法裁判所判決
 

 

 


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