中国商務部、米国とEUの太陽光パネル用多結晶シリコンで異なる対応

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中国商務部は1月20日、米国から輸入の太陽光パネル用多結晶シリコンの反ダンピング及び反補助金調査でクロの最終決定を行った。
反ダンピング調査については、韓国からの輸入品も同様となった。

中国が輸入している多結晶シリコンの約4割が米国製で、2割は韓国製とされている。

この結果、下記のダンピング課税が行われる。(  )は仮決定時点での保証金

  ダンピング 反補助金
米国企業
   Hemlock Semiconductor 53.3% (53.3%) 2.1% (6.5%)
REC Solar Grade Silicon 57.0% (57.0%) 0% (0%)
REC Advanced Silicon Materials 57.0% (57.0%) 0% (0%)
MEMC Pasadena 53.6% (53.7%) 0% (0%)
AE Polysilicon 57.0% (57.0%) 2.1% (6.5%)
All Others 57.0% (57.0%) 2.1% (6.5%)
韓国企業
  Woongjin Polysilicon 12.3% (12.3%)  
OCI   2.4% (2.4%)
Hankook Silicon  2.8% (2.8%)
KAM Corp.  48.7% (48.7%)
Innovation Silicon    48.7% (48.7%)
All Others  12.3% (12.3%)

他方、商務部は1月24日、EUから輸入の太陽光パネル用多結晶シリコンの反ダンピング及び反補助金調査でクロの仮決定を行った。

発表では、ダンピングと補助金の損害を認め、被害で出ているとみなした。
ダンピング率も多くの企業が 68.9%としている。

しかし商務部は、「特殊な市場状況を勘案し」、ダンピング税・反補助金税(仮決定のため「保証金」)を課さないとした。

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これを受け(?)、米商務省は2014年1月23日、中国製の結晶シリコン太陽電池製品などに対して、再度、反ダンピング・反補助金調査を実施する決定を下した。

今回調査対象となった結晶シリコン太陽電池製品には、バッテリー、モジュール、合板、パネル、建築一体化材料などが含まれる。
中国大陸から輸入される同製品の調査のほか、台湾製も反ダンピング調査の対象となる。

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米国とEUは中国製の太陽光パネルに対し、反ダンピング、反補助金調査を行い、中国はこれに対抗して、太陽光パネル用の多結晶シリコンについて反ダンピング、反補助金調査を行い、対抗した。

2012/11/14 太陽光パネルを巡る貿易戦争

中国はEUに対しては、EU産ワインの反ダンピング、反補助金調査を行った。EUの反ダンピング課税を強く支持したフランスを標的にした報復である。

2013/7/5   中国、EU原産の輸入ワインで反ダンピング&反補助金調査を開始

これまでの経緯は下記の通り。(ADは反ダンピング、CVDは反補助金)

米国 対 中国

  対中国 太陽光パネル 対米国 同左用ポリシリコン 
  (ADは韓国も)
2011/11/9 AD、CVD調査開始  
2012/3/20 CVD仮決定  
2012/5/17 AD仮決定  
2012/7/20   AD、CVD調査開始
2012/10/10 商務部AD、CVD決定  
2012/11/7 ITC 被害認定
AD、CVD最終決定
 
2013/7/18   AD仮決定
2013/9/16   CVD仮決定
2014/1/20   AD、CVD最終決定
2014/1/23 AD、CVD調査実施の決定  


米国による中国製太陽光パネルのダンピング税率は下記の通り。

  最終決定
AD CVD 合計
Wuxi Suntech 21.19 14.78 35.97
Trina Solar 7.78 15.97 23.75
他の59社  15.42 15.24 30.66
他の全て 239.42 15.24 254.66


今回のポリシリコンへの課税は上記に対抗するものである。

EU 対 中国

  対中国 太陽光パネル 対EU 同左用ポリシリコン 
2012/9/6 AD調査開始  
2012/11/1   AD、CVD調査開始
2012/11/8 CVD調査開始  
2013/6/4 AD課税暫定適用
6/6から平均11.8%
8/6
までに改善がみられなければ 47.6%に引き上げ
 
2013/7/1   (ワインのAD、CVD調査開始)
2013/7/23 和解合意  
 
 
2013/8/6 価格協定メーカーは免税
非協定メーカーは47.6%
 
2014/1/24   AD、CVDクロの仮決定
(保証金はなし)

EUのDe Gucht委員(通商担当)は2013年6月21日、北京で中国の高商務相と会談し、太陽光パネル問題の解決に向け協議を続ける方針を確認した後、「中国製太陽光パネル摩擦をめぐり中国と合意できれば、欧州産ワインに対する反ダンピング調査をめぐる問題も解消される」との見解を示した。

EUは7月23日、中国の太陽光パネルのダンピング問題で中国側と和解に達したと発表した。
欧州委員会は8月2日、これを承認、これにより価格協定に参加する中国メーカーは8月6日以降、ダンピング課税を免れることとなった。

2013/7/28 EUと中国、太陽光パネルダンピング問題で和解

今回、中国はダンピングと補助金の存在とそれによる被害を認定する仮決定を行ったが、太陽光パネルでの和解を理由に仮課税を免除した。

おそらく、最終決定までの間にEUとの間で、価格協定その他による和解が行われると思われる。
合わせて、ワインについても妥協が行われると思われる。


米国が対中強攻策を採るのに対し、EU内部ではドイツなど中国との貿易を重視する穏健派の意見が強い。

和解合意前の2013年6月10日付の英Financial Times は「EUは中国への制裁課税を撤回せよ」と題する以下の内容の社説を掲載した。

欧州の多くの国は再生可能エネルギーを優先するため多額の補助金を支給している。そんな状況で太陽光パネルの価格を引き上げるのは、自らの不利益にしかならない。加えて欧州の消費者や中国への供給業者、報復措置による被害者も打撃を受ける。

当然のごとく中国は欧州産ワインの販売に標的を絞った調査で報復した。EU最大のワイン生産国であるフランスはDe Gucht 委員を支持した。対抗制裁は個人を狙ったものでもある。De Gucht 委員自身がワイン醸造業者だった。

現時点での最善策は、De Gucht委員はひとまず方針を撤回し、地に足のついた対応を考えるべきだろう。

 

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