Braskemの米国エチレン計画、エタン原料とメタン原料

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ブラジルのBraskemの親会社のOdebrecht は2013年末に、SABIC Innovative PlasticsからWest Virginia州 WashingtonにあるSABIC Innovative Plasticsの工場用地を11百万ドルで購入し、最近登記された。

工場はOhio州との州境のオハイオ川沿いに立地し、Marcellus Shaleエリア内にある。


SABIC Innovative Plastics は2013年11月にこの工場を2015年に閉鎖すると発表している。
同社では熱可塑性樹脂の米国での生産統合を図っており、この工場での生産は2015年にイリノイ州Ottawaとミシシッピー州Bay St. Louisに移す。


Odebrecht は2013年11月に同州知事と共同で、同地にエタンクラッカーと3つのPEプラント及び水処理、コジェネレーションなどの付帯設備を建設する計画を発表した。この計画はAppalachian Shale Cracker Enterprise(略称 Ascent)と呼ばれる。

この計画は最終決定されていないが、土地の買収が明らかになったことで、今後計画が進行すると期待されている。

Odebrechtが全体の計画と資金及び水処理、コジェネレーションを担当し、Braskemが石油化学関連を担当する。

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Braskem2010年に米国の石油会社Sunocoからポリプロ事業を買収し、ペンシルベニア州Marcus Hook、テキサス州La Porte、ウエストバージニア州Neal3工場を取得した。

2010/2/3 Sunoco、ポリプロ事業をブラジルのBraskemに売却

Braskemは2011年7月にはDowからポリプロ事業(米国の2工場とドイツの2工場、および、在庫、事業ノウハウ、特定の技術、需要家リスト)を340百万ドルで買収した。
米国の工場はテキサスの
Freeport Seadriftにあり、合計能力は50万トン。(後者は100%子会社のUCCの工場)
ドイツの工場は
Schkopau Wesselingにあり、合計能力は54.5万トンとなっている。

Braskemは今回の買収で米国の能力は5割増しの140万トンになるとしている。

2011/7/28 Dow、ポリプロ事業をブラジルのBraskemに売却 

BraskemのCEOは2011年4月、シェールガスを利用して米国でエチレンとポリエチレンの製造を行いたいと述べた。

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本件とは別に、Braskemは2014年1月15日、Siluria Technologies との間で、天然ガスのなかのメタンを直接エチレンに変換するSiluria のメタン酸化結合(OCM:oxidative coupling of methane) 技術を展開するための幅広い協力関係を締結した。

Siluria Technologies のCEO Edward J. Dineenは 2013年1月にバイオ燃料会社LS9のCEOを退任し、マサチューセッツ工科大学(MIT)Dr. Angela Belcher が開発したメタンをエチレンに変換するOCM技術の商業化に取り組んでいる。

OCM技術:

Siluria TechnologiesのOCM技術は、Steam cracking とは異なり、触媒プロセスであり、メタンを直接エチレンに転換する。

2CH4 + O2 → C2H4  + 2H2O

Crackingするのではなく Coupling することにより、エネルギーを使わず、逆にエネルギーを産み出す。

触媒製造に当たってはBiomaterial templating、Nanowire Synthetic という独自の技術を使用する。通常、触媒のスクリーニングに当たっては、触媒ごとに1~2日かかるが、同社の High-throughput screening では同じ時間で数百の触媒のスクリーニングが可能である。
同社ではこの3つの技術を組み合わせ、新しい触媒を次々に手に入れている。

両社はBraskemの テキサス州La Porteの工場にデモンストレーションプラントを建設し、2014年第4四半期から共同で メタンからのエチレン製造のテストを行う。Braskemが土地、インフラ、操業でサポートする。

また、Siluriaの技術をBraskemが利用する非独占権利を与えるとともに、将来の SiluriaのプラントからBraskemがエチレンを購入するオプション、OCM技術を使用するBraskemの計画に Siluriaが資本参加する可能性などのことが含まれている。

 

現在、Braskemを初め、各社が計画しているシェール由来のエチレン計画は、シェールガスに付随して出るNGL(天然ガス液)のなかのエタンを原料にする 。

OCM技術が完成すれば、シェールガスのメタン(殆どが燃料として使用される)からエチレンが製造できることとな り、更に大幅にコストダウンできることとなる。


 


 



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