欧州委員会は2013年12月18日、ドイツの再生可能エネルギー法(EEG:Erneuerbare-Energien-Gesetz )の2012年改正で、電力集約的な製造業者が賦課金を軽減されていることについて調査を開始すると発表した。
現在、BASF やThyssenKruppなど、ドイツの重工業の2,000社以上が恩恵を受けている。
合わせて、電力供給事業者が、供給する電力の50% 以上が再生可能エネルギーによる電力である場合、自社で消費する電力の賦課金が軽減されていること ("green electricity privilege") についても調査を行う。
欧州委員会が違法とみなせば、(これまでの分を遡及して支払いをさせる可能性が強く)、恩恵を受けていた各社は数十億ユーロを支払う必要が出てくる。
しかし、Merkel
首相は雇用に悪影響を与える法律改正は断固ブロックすると述べた。
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ドイツでは、1991 年に制定された電力供給法と、この法律を引き継いで2000 年に制定された再生可能エネルギー法(EEG)により、再生可能エネルギーによる発電を現在まで順調に伸ばしてきた。
EEGでは再生可能エネルギーの固定価格買取と、消費者の賦課金が決められている。
賦課金(2013年は1キロワットあたり5.3セント)については従来から軽減規定があるが、2012年法で一部改正された。
・電力集約的な製造業者 | ||
これまでも、電力集約的な製造業者の賦課金の支払義務は軽減されてきたが、この軽減措置を受けることができる対象の範囲が拡大された。 | ||
従来: | 直前の事業年度の電力消費量が10ギガワット時超、かつ、企業の粗付加価値に対する電力費用の割合が15% 超である企業 | |
改正: | 直前の事業年度の電力消費量が1ギガワット時以上、企業の粗付加価値に対する電力費用の割合が14% 以上 | |
賦課金軽減が開始されて以降、認定を受ける企業の数は上がり、軽減分の転嫁を受けて一般電気料金が上昇を続けている。 改正で条件が引き下げられた為、ますます多くの企業が免除の申請を行っている。 |
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・電力供給事業者 | ||
電力供給事業者は下記の場合、自社で消費する電力のすべてについて賦課金の支払いを免除されていた。 2012年からはこうした企業に対する減免の上限は1kWあたり2セントとなった。 |
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従来: | 電力供給事業者が供給する電力中、50% 以上が国内の再生可能エネルギーによる電力である場合 | |
改正: | これに加えて、20%以上が風力又は太陽光による電力である場合 | |
・自家発電等 | ||
従来: | 最終消費者が自家発電した電力を消費する場合 | |
改正: | 自家発電した電力を発電施設に近接した場所において自家消費する場合に限る。 |
2012年1月1日から施行された「2012年法」では、再生可能エネルギーによる発電を一層促進するために、エネルギー計画の目標が取り入れられ、再生可能エネルギーによる電力の買取価格(「補償金額」)が見直されたほか、再生可能エネルギーによる発電量が増大してきたことにかんがみて、再生可能エネルギーによる電力と従来電力との市場統合を促す規定が定められた。
2012年法での仕組みは下記の通り。
系統運用者は再生可能エネルギーによる発電施設を優先的に送配電網に連系し、その電力を買い取る。系統運用者は、送電系統運用者にこの電力を転売する。
送電系統運用者は、再生可能エネルギーによる電力を電力市場で差別なく販売する。
従来は、再生可能エネルギーによる電力を、電力供給量の割合に応じて電力供給事業者に再販売していた。
送電系統運用者は、補償のために必要な支出と再生可能エネルギーによる電力を販売して得た収入との差額=「賦課金」を、電力供給事業者に対して要求する。
参考
送電系統運用者
名称 Tennet Amprion Transnet BW 50 Hertz 管轄地域 中央部 旧西ドイツエリア 南西部 北東部 オランダの国営TSOが買収 株式の約25%をRWEが保有 EnBWの子会社 ベルギーのTSO Eliaグループ
四大電力会社
名称 E.ON AG RWE AG EnBW Energie
Baden-WürttembergVattenfall Europe 管轄地域 中央部 旧西ドイツエリア 南西部 北東部 ドイツ最大の電力会社(欧州2位)
株式の大半をエリアの州及び市町村が所有 スウェーデン国営会社のドイツ事業法人
欧州委員会は電力集約的な製造業者への軽減について、これまで問題視していなかったが、2012年の改正により、問題である可能性が出てきたとしている。
改正により、送電系統運用者4社が賦課金の管理を行い、政府がこれをモニターすることとなった。
軽減については多くの消費者や対象とならない業者から不満が出ているが、政府が関与する仕組みとなったため、政府の補助金の可能性が出てきた。
(以前のシステムでは単に購買契約に基づくもので、政府の補助金ではないとの欧州司法裁判所の判決がある。)
軽減は電力消費量が1ギガワット時以上で、企業の粗付加価値に対する電力費用の割合が14% 以上の企業に限定されており、EU市場内における競争を歪める恐れがあるとみている。
ただし、カーボン排出削減のために正当化できるかもしれないとの考えもあり、電力集約的な製造業者への軽減が正当化できるかどうか、不当に競争を歪めていないかを慎重に検討する。
再生可能電力に対する固定費買取価格そのものについては補助金であるが、欧州委員会は2008年のガイドラインで環境保護のための政府補助金を認めている。
"green
electricity privilege" については、電力供給事業者が供給する電力中、50%
以上が再生可能エネルギーによる電力である場合に軽減されるが、国内の再生可能エネルギー(20年未満の稼動のもの)に限られるため、同様の設備であっても、国内の電力であるか輸入電力であるかの差別がある。
輸入電力が地元で同様の支援を受けていない場合に、差別があるかどうかを調査する。
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