Shell、LNG事業を強化、Repsolから事業買収

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Shellは2014年1月2日、RepsolのTrinidad & TobagoとPeruのLNG事業の買収を完了したと発表した。

買収金額は41億ドルで、他にLNG船のチャーターに係わる16億ドルの債務を引き受ける。

買収により、Shellが直接取り扱うLNGの数量は年間720万トン増え、LNG船の能力を飛躍的に増やす。
(能力持分の増加は420万トンで、Shellの全世界の能力持分は22百万トンから26百万トンに約20%増加する。)

一方でShellは本年に石油部門での売却を進める。
2013年11月にPeter Voser CEOはShell が
"a divestment phase"に入ったと述べた。2014年にも300億ドル (180億英ポンド) もの資産を売却するとしているが、背景には、精製マージンの低下やナイジェリアの石油窃盗で、純利益が大幅に減少したことがある。

売却候補は豪州のWoodside Petroleum (24%)の70億ドル、ナイジェリアの石油資産の20億ドル、その他の200億ドルと噂されている。

外資系企業にとって、ナイジェリアの最も大きな懸案事項は窃盗で、昨年の夏に、パイプラインから盗難された石油量は1日あたり190万バレルであった。同国における石油産出量は、4年連続で低下した。

Shellは、ナイジェリアの「運用上の課題」の影響で、第2四半期に2億5,000米ドルの損失があったことを明らかにした。「運用上の課題」とは、石油泥棒や当局による天然ガス輸出封鎖の影響である。

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今回買収する事業の概要は以下の通り。

1)Atlantic LNG Company of Trinidad and Tobagoの持分

同社は1995年に設立された。
Trinidad and Tobagoの周辺の天然ガスをパイプラインで 南西端のPoint Fortinに運び、4系列の液化設備でLNGにする。

4系列合計の能力は年間 1480万トン。


同社の出資比率、製品引取比率は下記の通り。

  出資比率 引取比率
Train 1 Train 2,  Train 3 Train 4
BP (AMOCO) 34% 34% 42.5% 37.78%
BG 26% 26% 32.5% 28.89%
Repsol 20% 20% 25% 22.22%
NGC 10% 10% 11.11%
Summer Soca LNG Liquefaction 10% 10%
能力   300万トン 330万トンx2 520万トン


NGCはTrinidad and Tobagoの権益を代表する国営の National Gas Company。
Summer Socaは中国のChinese Investment Corporationの子会社で、フランスのSuezから権益を買収した。当初の株主はCabot 。
 

2)Peru LNG の持分と引取契約

本プロジェクトはペルーの首都リマから南へ約170kmの太平洋沿岸Pampa Melchorita地区で天然ガスを液化、輸出するもので、原料となる天然ガスはペルー内陸部にあるカミセア・ガス田から供給される。

生産能力は年間445万トンで、Repsol は2010年のLNG生産開始から18年にわたり、LNG生産量の全量を購入する契約を締結している。

世界のLNG供給源の中で唯一南米地域に位置する本プロジェクトは、北中米西海岸に最も近く、極東地域にもアクセスが可能という地理的特性を持ち、今後も引き続き市場拡大が期待される環太平洋地域に競争力のあるLNGを供給できるというメリットがある。

同社の出資比率、製品引取比率は下記の通り。

  出資比率 引取
Hunt Oil 50%  
SK Energy 20%  
Repsol 20% 100%
丸紅 10%  


丸紅
は2007年8月にSKエナジーが保有する持分30%のうち10%分を購入した。

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Shell は全世界でLNG計画に参加している。

  能力 参加者
Pluto, Australia 480万トン  Woodside(Shellが24%出資)90%  
東京ガス 5%、関西電力 5%
North West Shelf Venture, Australia 1,590万トン BHP Billiton、BP、ChevronTexaco、Shell、Woodside Energy、Japan Australia LNG(三井物産/三菱商事)の6社が均等出資
Brunei LNG 671万トン ブルネイ政府 50%、Shell 25%、三菱商事 25%
Malaysia LNG 2,300万トン Malaysia LNG PETRONAS(90%)、サラワク州政府(5%)、三菱商事 (5%)
Malaysia LNG Dua PETRONAS(60%)、Shell(15%)、サラワク州政府(10%)、三菱商事 (15%)
Malaysia LNG Tiga PETRONAS(60%)、Shell(15%)、サラワク州政府(10%)、JX(10%)、Diamond Gas(5%)
* Diamond Gas は三菱商事80%、石油資源開発20%のJV
Nigeria LNG 2,200万トン Nigerian National Petroleum Corporation 49%, Shell 25.6%, Total 15%、Eni  10.4%.
Oman LNG 660万トン Oman政府 51%、Shell 30%、Total 5.54%、Korea Gas 5%、Partex (Oman) 2%、三菱商事 2.77%、三井物産 2.77%、伊藤忠 0.92%
Qatargas 4 780万トン Qatar Petroleum 70%、Shell  30%
Sakhalin 2 1,000万トン Shell 27.5%-1株、Gazprom 50%+1株、三井物産 12.5%、三菱商事 10%
Hazira, India
 再ガス化
  Shell 74%、Total 26%.
Altamira, Mexico
 再ガス化
  Shell 50%、Total 25%、三井物産 25%

 

* Shell は "a divestment phase"に入ったとし、2014年にも$30bn (£18bn) もの資産を売却するとしているが、売却候補にWoodsideが入っている。


 
2012年5月16日、シェルカナダ、韓国ガス公社(Kogas)、中国石油天然気(PetroChina)と三菱商事はLNG輸出計画「LNG Canada」構想を発表した。

4社でカナダのブリティッシュ・コロンビア州 Kitimat港周辺においてLNG輸出基地を共同開発する。

2012/5/17  Shell、三菱商事等の「LNG Canada」計画 

Shellは2013年1月28日、米国のエネルギー会社 Kinder MorganとのJVを設立して、ジョージア州Savannahの近くのKinder Morgan子会社のEl Paso Pipeline の既存のElba Island LNG Terminalに 2段階で天然ガス液化プラントを建設すると発表した。

2013/1/30 Shell、LNG輸出用の天然ガス液化プラント建設 

 


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