鳥インフルエンザ抗体

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日本国内では人の発症例がない毒性の強い鳥インフルエンザ(H5N1型)のウイルスに作用する抗体を、愛知県内の60代男性が体内に持っていることが、藤田保健衛生大の研究グループの調査で分かった。

インフルエンザへの抵抗力は、感染やワクチンで体内に「抗体」が作られることでできる。
ただ、インフルエンザウイルスは遺伝子変異を繰り返し、過去に得た抗体では、変異したウイルスには抵抗できないとみられており、H5N1型は国内で抗体を持つ人はいないと考えられていた。日本では発症した人は確認されていない。

米オンライン科学誌 PLOS One で2月5日に発表した。

Two Types of Antibodies Are Induced by Vaccination with A/California/2009pdm Virus: Binding near the Sialic Acid-Binding Pocket and Neutralizing Both H1N1 and H5N1 Viruses
http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0087305


愛知県豊明市の藤田保健衛生大の抗体プロジェクト研究部門(黒沢良和教授:学長)は、各種疾患に対する治療用ヒトモノクローン抗体開発を研究室のメインテーマに掲げて研究を展開している。

各種固形癌に対して、治療用ヒト抗体を開発することを最大の目標としているが、ヒト体内のインフルエンザウイルス中和抗体レパートリー解析にも成功しており、新型インフルエンザウイルス対策に貢献することを目指している。

男性は1947年生まれで、子供の時に数度インフルエンザ(恐らく H1N1とH2N2:アジアかぜ) にかかっており、1968年にも一度インフルエンザ(恐らくH3N2:A香港型)にかかった。
その後41年間、インフルエンザにかからず、インフルエンザワクチンも打っていなかった。

研究グループは、2009年に流行したインフルエンザ(H1N1型)のワクチンを男性に接種し、接種前と、接種から1カ月後にそれぞれ血液中の成分を取り出し、体内で作り出された抗体を調べた。

その結果、H1N1型に作用する抗体とは別に「VH1-69」という抗体も作られていた。
これは、H1N1型のほかH5N1型など複数のインフルエンザウイルスの感染を阻害する効果のあることが確認された。

黒沢学長は以下のように述べた。
・2種類のウイルスはH5N1型と形がよく似ている。男性は過去にインフルエンザ感染を繰り返す中で、H5N1型に作用する抗体を作る能力を自然に身につけたと考えられる。
・さまざまな型があるインフルエンザ全てに抵抗できる『万能抗体』を作るワクチンの作製が期待できるのではないか。
・多くの人が同じように抗体を作り出せる可能性がある。世界的な大流行に対応するため、もっと多くの人の調査を進めるべきだ。


鳥インフルエンザ(H5N1)の感染動物は鳥類(主に水禽類)で、ヒトは、感染した鳥やその排泄物、死体、臓器などに濃厚に接触することによってまれに感染することがある。

日本では発症した人は確認されていない。

鳥類では東南アジアを中心に、中東・ヨーロッパ・アフリカの一部地域などで感染が確認され、ヒトでの症例はアジア、中東、アフリカを中心に報告されている。



 








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