三井化学は2月6日、ポリウレタン材料事業とフェノール事業、高純度テレフタル酸(PTA)の再構築を発表した。
いずれもかつては同社の主力製品であった。
これに伴い、事業構造改善費用として206億円を特別損失に計上した。
今回の対策により、3事業の赤字 230億円を先ず(市況回復のない場合で)140億円改善、更なる合理化で早期の黒字化を図る。
1)ポリウレタン材料事業
TDI及びMDI事業は、中国を中心とするアジアでの大規模な新増設による市況悪化のため収益が低迷している。
同社のウレタン部門の営業損益は2012年度が -26億円であったが、2013年度予想(2月6日発表)では -40億円と悪化している。
今回、特徴ある特殊イソシアネートで、コーティング・機能材事業、メガネレンズモノマーの更なる強化・拡大を図り、
汎用ウレタン原料は、国際競争力が劣位の鹿島TDI、大牟田MDIを2016年12月末に停止し、国際競争力を十分有する他のプラントで、最適生産体制による同事業での勝ち残りを図る。
対策:
鹿島工場 2016年12月末 閉鎖
TDI(年産117千トン) 停止
無水マレイン酸(32千トン)、フマル酸(151千トン) 停止、事業終了
特殊イソシアネート群(2400トン) 大牟田工場に生産移管
大牟田工場
MDI(年産60千トン) 停止 2016年12月末
特殊イソシアネート群の大型プラント(5000トン)新設 2015年10月稼動
なお、三井化学は2012年2月26日にSABICにTDI及びMDI製造技術をライセンスした。
Al-Jubail地区でのプラント運転開始時期は2016年の予定で、合弁事業への参画を含めた提携検討で合意 している。2012/3/2 三井化学、ウレタン事業でSABICとの提携を検討、ウレタン事業を再構築
また、三井化学は2013年8月29日に、非可食植物由来のひまし油を主原料とした「バイオポリオール」の製造会社をインドに設立する合弁会社設立契約を締結した。
インドは世界のひまし油の8割を生産する。社名:Vithal Castor Polyols Pvt. Ltd.
立地:インド グジャラート州
株主:Jayant Agro-Organics Ltd 50% 世界最大のひまし油メーカー
三井化学 40%
伊藤製油 10% 日本におけるひまし油事業のパイオニア
能力:年産 8,000トン
営業運転開始:2015年1月
三井化学グループのポリウレタン材料生産能力は以下の通り。(千トン) |
2001年4月に三井化学と武田薬品はウレタン事業を統合し、三井武田ケミカルを設立した。(三井 51%、武田 49%)
設立当初の契約に従い、2006年4月1日に三井化学が武田薬品の持分全株式を取得し、三井化学100%出資の子会社 三井化学ポリウレタンとし、2009年4月に三井化学に統合した。
鹿島工場は武田薬品の工場で、1972年にTDIおよび無水マレイン酸の生産を開始し、その後、フマル酸、XDI、HDIと製品を増やしてきた。
三井化学鹿島工場となったが、今回、全工場が閉鎖される。
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2)フェノール事業
2011年頃には、同社ではフェノール・チェーンを、グローバルに拡大させる競争優位5事業の1つと位置付けていた。
2011/9/8 三井化学、フェノール・チェーンを強化・拡大
現在、フェノール及びビスフェノールA事業は、中国での新増設ラッシュによる市況悪化のため収益が低迷している。
国内では、国内需要の減少(30万トンの供給過剰)と輸出採算の悪化(中国向けはアンチダンピング課税、高い輸送コストで大幅赤字)により、稼働率が低下しており、設備能力削減による事業再構築が課題となっている。
対策:
出光興産とのJVの千葉フェノール(フェノール 250千トン、アセトン 80千トン) 2014年9月末に停止、解散
市原工場のビスフェノールA(90千トン) 2014年3月末に停止なお、出光のビスフェノールA(70千トン)用の原料フェノールは三井化学が供給
これらにより、国内の需給ギャップは解消され、収益が改善する。
シンガポールのビスフェノールAの1基 70千トンを停止
石炭系用役に切り替え、徹底的コストダウン、中国向け輸出を停止し全量ASEAN域内で販売
中国は、2014年5月稼働予定のSinopecとのJV(上海中石化三井化工)によりカバー
三井化学及び出光興産の生産能力は以下の通り。(千トン) |
参考:上海中石化三井化工
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3)テレフタル酸
中国での新増設で、2013年以降大幅余剰が継続する(供給過剰 1500万トン)
対策:
インドネシアのJV P. T. Amoco Mitsui PTA Indonesia 持分をBPに売却立地:西ジャワ州 メラク
株主:BP 50%、三井化学 45%、三井物産 5%
能力:450千トン
生産開始:1997売却:2014年3月末(三井物産も同時に株式を手放す方針)
三井化学のPTA関連生産能力は以下の通り。 (千トン) |
日本及びタイについては、将来、ベトナムのNghi Son 計画からの安価な原料調達を期待。
2013/6/11 出光興産と三井化学、ベトナムのNghi Son 製油所・石油化学コンプレックスへの最終投資決定MCTペットレジンについては、2010/8/10 三井化学と帝人、国内のボトル用PET樹脂事業を統合
三菱化学も2009年2月にテレフタル酸事業の事業構造改革を発表した。
国内生産から撤退、本社機能を海外に移した。
2009/2/24 三菱化学、テレフタル酸事業の事業構造改革
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