カネカは2月10日、マレーシアのパハン州ゲベン工業団地にある100%子会社
Kaneka (Malaysia) Sdn. Bhd の敷地内にアクリル系繊維(カネカロン®)の製造設備を新設すると発表した。
建設費は約90億円で、能力は年産12千トン、2015年10月の稼動を予定している。
カネカロンはカネカ(当時は鐘淵化学工業)が1957年に事業化した国産技術による合成繊維の代表的素材で、アクリロニトリル 50%と塩化ビニルモノマー(VCM) 50%を共重合し、溶剤で溶かして紡糸する。
カネカは高砂工業所に年産61千トンの工場を持っており、合計能力は73千トンとなる。
製品は全量、黒人の女性の間で必需品として使用される頭髪用の付け毛(エクステンション)用にアフリカ向けに販売する。
サブサハラ(サハラ砂漠より南の地域)は今後も着実な人口増加が見込まれ、2040年には中国、インドを抜いて世界一の人口を擁する地域になると推定されており、旺盛な需要の増加が見込まれる。
エコファーを中心としたパイル分野及び防護服やインテリア商品に使われる難燃分野などについては引き続き日本からの供給を拡大していく。
カネカはマレーシアに多くの工場を持ち、経営リソースが集約されていることに加えて、原料を安定的に調達できるメリットがあり、さらに、世界的なハブ港であるシンガポールに隣接していてアフリカへの輸出も容易であるなど利点が多いことから、同国を新工場の建設地に選んだ。
なお、カネカは国連WFP(World Food Programme)の『飢餓と貧困を撲滅する』という使命に賛同し、その活動を支援するため、WFPコーポレートプログラムへ参加している。
アフリカでの売り上げの一部を国連WFPに寄付し、学校給食プログラムを通じてアフリカの女性と子供たちをサポートする。
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鐘淵化学工業は1949年に鐘紡の非繊維部門が独立して出来たが、鐘紡のVCM、PVC試験設備を引き継ぎ、1950年に大阪でVCM、PVCの生産を開始した。
このVCMの利用のため、1957年にカネカロンを事業化した。VCMが50%のため、アクリルが主体であるアクリル繊維とは区別され、モダアクリル繊維と呼ばれる。
重合速度が大きく異なるVCMとアクリロニトリルモノマーの共重合のため、技術的にも生産的にも難しく、繊維としての品質的にも、紡績性が悪いこと、染色性に劣っていること、耐熱温度が低いことなどの劣性がある。
カネカはVCMの新しい用途の一つとしてこれを開発したが、明確な用途を想定して事業化したのでなかったため、最初からつまずいた。
その後、カネカロンを含むアクリル繊維は一時、ウィッグのブームで巨大な利益を得たが、ブームの終焉で価格が急落、各社は撤退した。
しかし、カネカは撤退がVCMの大幅減産につながるため、撤退せず、再建する道を選んだ。
カネカは顧客のニーズを把握して、ウイッグに加え、頭髪用の付け毛用を開発した。
現在、頭髪装飾用では、他の製品も開発している。
カネカロン Kanekalon 塩ビ繊維 Advantage 難燃ポリエステル繊維 Futura コラーゲン蛋白繊維 ULTIMA
マレーシアの100%出資子会社のKaneka Innovative Fibersでは頭髪装飾製品用難燃ポリエステル繊維を生産している。
これは主として米国市場で高い評価を受けている。
更に、人毛・獣毛のようなタッチを利用したエコファー(fake fur) を中心としたパイル分野や、燃えにくい特性(火源がなくなると自己消火)を生かしたカーテン用、防護服用素材などの分野に進出した。
カネカロンの開発については、阪大Knowledge Archiveに「コア・コンピタンスに基づく市場の特定 : 合成繊維カネカロン事業の再建」という論文がある。
http://ir.library.osaka-u.ac.jp/dspace/bitstream/11094/17130/1/oep057_1_043.pdf
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カネカはマレーシアのパハン州ゲベン工業団地に以下の100%出資子会社を持つ。
社名 | 設立 | 製品 | 能力 | 備考 |
Kaneka (Malaysia) | 1995 | MBS樹脂「カネエースB」等 | 30千トン | 日米欧を合わせ、4拠点合計203千トン |
カネカロン(今回) | 12千トン | 日本と合わせ、73千トン | ||
Kaneka Electec | 1995 | マグネットワイヤー | 2009年10月閉鎖 | |
Kaneka Eperan | 1996 |
発泡ポリオレフィン樹脂 「エペラン」「エペランPP」 |
3.6千トン | |
Kaneka Paste Polymers | 1999 | ペーストPVC | 60千トン | |
Kaneka Innovative Fibers | 2010 | 難燃ポリエステル繊維 Futura |
頭髪装飾製品用(主に米国市場向け) | |
Kaneka Apical Malaysia | 2012 | ポリイミドフィルム | 600トン | 日・米を合わせ、合計 3,200トン |
グラファイトシート |
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