ブリヂストンは2月18日、2013年12月期の決算を発表した。
この決算には特異な点がいくつもある。円安と原料価格安で営業利益が大きく増加したこと、多額の特別損失を計上したことである。
売上高は3兆5681億円(前年比 5284億円増)、営業利益は4381億円(前年比 1521億円増)、当期利益は2021億円(前年比 304億円増)となり、2005年以来8年ぶりに最高益を更新した。25円の増配とする。
単位:億円、配当は円 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
この決算には、特異な点がいくつもある。
1) 円安
同社は円安効果をフルに受けている。
売上高は前年比 5283億円の増となったが、このうち為替変動によるものが 5290億円ある。
すなわち、売り上げ増は全て円安によるものである。営業損益も、前年比で1521億円増となったが、このうち円安によるものが1140億円ある。
為替変動以外の売上高の影響(売価、数量、売上ミックス)は逆に 629億円のマイナスである。
営業損益 前年比 前年比 増減内訳
為替変動 原材料 売値・数量・
売上Mix戦略商品 その他 2010 1,665 907 -270 -1,310 2,527 300 -340 2011 1,913 248 -370 -2,550 3,138 210 -180 2012 2,860 947 -120 920 226 -50 -29 2013 4,381 1,521 1,140 1,000 -629 150 -140 2014予 4,600 219 210 -230 488 290 -539
2)原材料
日本の石油化学会社の場合、円安によりナフサ等の価格が上昇し、コストアップとなっている。
それに対し、同社の場合、上の表の通り、原材料価格差で前年比1000億円もの差益となっている。
報道では、このうち天然ゴム価格の下落で500億円の益とされる。天然ゴム市況は下記の通りで、2010年、2011年の差損も理解できる。
天然ゴム以外でも500億円程度の原料価格差益がある。
2013年では、ブタジエン市況の下落に伴い、合成ゴムの海外市況が下落している。
3)特別損失
営業損益、経常損益が大きく増加しているのに対し、当期損益の増益幅は小さい。
これは特別損失によるものである。
特別損失 (億円)
2012 2013 減損損失 140 113 米国独禁法関連損失 448 リコール関連損失 225 国内生産体制再編費用 87 欧州生産体制再編費用 50 その他 101 74 合計 241 997
1)米国独禁法関連損失:448億円
米国で日本企業を中心とした自動車部品のカルテルの摘発が続いている。
司法省は2014年2月13日、ブリヂストンが自動車の防振ゴム部品の価格カルテルで有罪を認め、罰金425百万ドルの支払いに同意したと発表した。同社は米国でマリーンホースカルテル事件で有罪となったが、その際に本件について開示しなかったため、高額の罰金となった。
これで自動車部品カルテルでの摘発は26社と29名となった。 詳細は https://www.knak.jp/blog/2013-10-1.htm#cartel
ブリヂストンは以下の通り発表した。
マリンホースに関する2007年5月のカルテル捜査及び(ラテンアメリカその他での)外国公務員に対する不適切な支払の可能性についての自主公表を受けて、種々の施策により再発防止策を実行してきた。
今回のカルテル行為は、これらのガバナンス・コンプライアン体制の強化・改革をきっかけに2008年に終了した。
しかしながら、2008年時点で本件を見つけ出すことができなかった。同社は本件の影響を勘案し、社内取締役全員及び関連執行役員が本年3月に支給される予定の賞与全額を辞退し、更に代表取締役は月次報酬の50%を6か月、関連執行役員は月次報酬の25%を6か月の自主返上を行う。
2)リコール関連損失:225億円
栃木工場と普利司通(瀋陽)輪胎で製造した中・大型トラック及びバス用タイヤの一部でリコールを実施
3)生産体制再編費用:137億円
日本:黒磯工場の閉鎖
欧州:Bridgestone Italia のバリ工場における競争力向上計画
コメントする