日本軽金属は3月14日、静岡市清水区の蒲原製造所におけるアルミニウム電解事業を、本年3月31日をもって終了すると発表した。
同社のアルミは平均純度99.95%と、一般の地金(純度99.7%程度)よりも純度が高く、主に電機・電子分野向け高純度製品の材料として使用されているが、老朽化が著しく、事業継続には多額の投資が必要なため、停止する。
同工場は稼動後50年以上が経過しており、更新には30億円超が必要とされる。
蒲原工場は1940年に年産 9千トンでスタートした。
日本のアルミ精錬は1978年時点では164万体制で、日軽金も新潟、苫小牧を加えて合計能力377千トンであったが、石油危機による電力料の急騰で苦境に陥り、110万体制、70万体制、35万体制と順次縮小し、その後の円高
(安価な輸入品の流入)、関税引き下げを受け、他社は1987年を最後に全て停止した。
日軽金も1980年12月に新潟、1985年4月に苫小牧を停止したが、水力発電所をもつ蒲原工場のみ35千トンに規模を縮小し、生産を続けた。
その後、1995年に20千トン、1999年に11千トンに能力を落とし、現在能力は7,000トンとなっている。
2012年度の生産実績は4,141トンで、2013年度は2,600トンの予想。
日軽金蒲原工場は富士川の中・下流域にわたって6ヶ所、合計142,500KWの自家用水力発電所を持つ。
アルミ精錬には1トン当たり13,000~14,000kWhの電力が必要なため、「電気の缶詰」と呼ばれる。
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参考 日本メーカーは赤泥処理の問題から国内でのアルミナ生産からも撤退した。
2008/3/8 アルミナメーカー、ボーキサイトの国内精製から撤退へ
日軽金は現在も清水工場で水酸化アルミニウムとアルミナを生産している。
(同社はベトナムの新工場に水酸化アルミニウムの生産拠点を移転することを計画したが、取り止めた。)
日本のアルミニウム製錬各社の設備能力推移(単位:t)
164万t体制 |
110万t体制 |
70万t体制 |
35万t体制 |
|
|
全面停 |
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住友 |
磯浦 |
78,980 |
78,980 |
ー |
ー |
ー |
ー |
1982/3 |
名古屋 |
52,796 |
ー |
ー |
ー |
ー |
ー |
1979/3 |
|
富山 |
177,681 |
118,454 |
82,917 |
82,917 |
ー |
ー |
1986/10 |
|
東予 |
98,712 |
98,712 |
98,712 |
ー |
ー |
ー |
1984/12 |
|
計 |
408,169 |
296,146 |
181,629 |
82,917 |
ー |
ー |
|
|
日本軽金属 |
蒲原 |
94,960 |
63,854 |
63,854 |
63,854 |
34,691 |
7,000 |
2014/3 |
新潟 |
147,663 |
20,717 |
ー |
ー |
ー |
ー |
1980/12 |
|
苫小牧 |
134,413 |
134,413 |
72,365 |
ー |
ー |
ー |
1985/4 |
|
計 |
377,036 |
218,984 |
136,219 |
63,854 |
34,691 |
7,000 |
|
|
昭和軽金属 |
千葉 |
170,290 |
127,508 |
57,945 |
31,690 |
ー |
ー |
1986/3 |
喜多方 |
28,716 |
16,922 |
16,922 |
ー |
ー |
ー |
1982/9 |
|
大町 |
42,803 |
17,931 |
ー |
ー |
ー |
ー |
1982/6 |
|
計 |
241,809 |
162,361 |
74,867 |
31,690 |
ー |
ー |
|
|
三菱軽金属 |
直江津 |
160,164 |
160,164 |
ー |
ー |
ー |
ー |
1981/10 |
坂出 |
192,481 |
76,427 |
76,427 |
50,952 |
ー |
ー |
1987/2 |
|
計 |
352,645 |
236,591 |
76,427 |
50,952 |
ー |
ー |
|
|
三井 アルミニウム |
三池 |
163,827 |
144,366 |
144,366 |
124,906 |
ー |
ー |
1987/3 |
住軽 |
酒田 |
98,712 |
98,712 |
98,712 |
ー |
ー |
ー |
1982/5 |
合計 |
1,642,198 |
1,157,160 |
712,220 |
354,319 |
34,691 |
7,000 |
|
石油危機により深刻の度を深めるアルミニウム産業について、1977年と78年に産構審が答申を行った。
①最小の国民経済的コスト ②供給ソースとしての必要かつ十分性 ③国際競争力の回復の可能性の基準に基づき、中長期的、総合的に判断した製錬設備の「適正規模」の考え方が取り入れられ、それを超える設備の処理が提言されるようになった。
1977年11月中間答申で125万トン体制、1978年10月答申で110万トン体制とした。
1982年3月に特定不況産業安定臨時措置法(特安法)による第二次安定基本計画が告示され、処理対象設備能力を53万トンから93万トン(当初能力の57%)に拡大した。また、電力源の石炭転換への推進、新製錬法の技術開発などが基本計画に追加された。
これにより製錬業界は年産能力70万トン体制に入ることになった。
(1983年の産構法の制定で構造改善基本計画としてほぼ追認、告示された。)
1984年12月、産構審非鉄金属部会は、今後のアルミニウム産業およびその施策のあり方について答申を行った。
答申では、世界の生産能力は適正水準で推移し、中長期的には世界の製錬コストからみて適正な水準に回復するとしており、1988年までに高コスト設備の処理により、国内製錬能カを今後存続可能な年35万トン程度に削減するというものである。
これに基づき、1985年2月に「構造改善基本計画」が告示され、年産能力35万トン体制に入った。
政府は国内精錬設備の円滑な処理を図るため、産構法に基づく処理量を限度に、精錬業者の輸入する地金の関税を軽減する制度を導入した。
しかし、世界的なアルミニウム地金の構造的な供給過剰傾向、1985年秋以来の円高の一層の進行により、国内地金市況は低下し、長期的低迷から回復のめどが立たない状況となった。
さらに日米通商交渉の結果、地金の輸入関税(9%)が1988年から米国並みの1%と決定され、各社は撤退を決定した。
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