大阪大学発ベンチャーのマイクロ波化学株式会社は4月、マイクロ波を使った世界初の化学品量産工場を大阪市で稼働させる。工場廃油などを原料に環境負荷の低い脂肪酸エステルを製造、東洋インキなどに供給する。マイクロ波を使うと、熱と圧力で化学反応を起こす従来の製造法に比べ、エネルギー消費量を約3分の1に減らせるという。
(2014/3/31 日本経済新聞)
脂肪酸エステルは、インキやプラスチックなど幅広い用途で製品の原料となるが、石油や大豆油などを原料としている。
マイクロ波化学では、工場から排出される動植物系の工業廃油から脂肪酸エステルを製造するプロセスを開発した。
動植物系の工業廃油には遊離脂肪酸が多く含まれており、従来法では2段階反応が必要であった。
反応性の高いマイクロ波プロセスを用いることでワンポット合成が可能となり、商業レベルでの製品供給を実現した。生産される脂肪酸エステルは、超低エネルギー反応で、
高純度の特性を有している。
マイクロ波化学は2013年2月、
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マイクロ波化学は2007年8月に設立された(当初名はマイクロ波環境化学)。
大阪大学工学研究科マイクロ波化学共同研究講座と共同で、「省エネ・高効率・コンパクト」
取締役CSOの塚原保徳氏は大阪大学大学院工学研究科特任准教授で、マイクロ波化学、光化学専攻。
マイクロ波はレーダーや加速器、電子レンジなど幅広く利用されている。
化学反応にマイクロ波を適用した場合、革新的な新規反応場を用いた魅力的な化学プロセスとなることは知られている。
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これまで化学プロセスにおいて実用化されてこなかったのは、スケールアップが困難であったことが一因である。
同社では2009年春に世界初となる日産2トンレベルの燃料製造用の
完全フロー型マイクロ波リアクター(1号機)の開発に成功、2011年には化成品製造用の日産2トンレベルの大規模完全フロー型マイクロ波リアクター(2号機)を立上げた。
同社はさらに、化学反応をより効率よく促進させるため、マイクロ波に適したハイブリッド触媒を開発した。
同社では、将来的にはエステル化反応を核として、油脂化学の上流から下流までの各種プロセスにマイクロ波を用いて天然資源から燃料からプラスチックまで製造することのできるバイオリファイナリーの実現を目指す。
1) 基礎化成品 〜石油由来のガスやポリマー
マイクロ波化学プロセスは、ガスやポリマーの製造プロセスにおける気固反応系や液固反応系において、マイクロ波に適した触媒を用いることにより、反応温度低下、反応時間短縮が可能になる。
それに伴い、製品の高純度化、触媒の長寿命化を実現する。
2) 機能性化成品 〜ナノ粒子の製造
電子材料を構成する化成品においても高純度化、ナノ粒子化が求められている。
マイクロ波利用の利点
・反応溶液の急速加熱
・均一な粒子が合成可能
・内分均一加熱
・選択加熱が可能
・短時間で反応終了
3) 未利用資源の活用 〜バイオディーゼル燃料
エネルギー源として期待されているのが、油脂を細胞内に含み「石油を作る藻」と言われる微細藻類だが、細胞内に油脂があるため細胞壁を壊し油脂を抽出しないとバイオ燃料として利用できなかった。
デンソーとマイクロ波化学は共同で、マイクロ波を用いて、世界で初めて藻から抽出したクルードオイルをバイオ燃料( 脂肪酸メチルエステル:FAME)へ変換することに成功した。
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