BASF と戸田工業、日本でリチウムイオン電池用正極材の合弁事業に向けた協議を開始

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BASFと戸田工業は4月3日、日本を拠点にリチウムイオン電池用正極材を展開する合弁事業に向けた独占交渉を開始したと発表した。

日本において、NCA(ニッケル系正極材)、LMO(マンガン系正極材)、NCM(三元系正極材)といったさまざまな正極材料の製造、マーケティング、販売に注力する予定で、両社はそれぞれの正極材ビジネス、知的財産権、日本における製造設備・拠点などを結集し、バッテリー産業における正極材のポートフォリオを拡大する。

合弁事業ではBASFが過半数の株式を保有する予定。

戸田工業の久保田社長は、「リチウムイオン電池市場における成長の鍵は、製品開発、性能、コスト、供給規模・能力の4つで、BASF との合弁事業のシナジー効果として、この4つのすべてが強化でき、その結果今後拡大する市場に的確に対応できる、望ましい提携である」としている。

戸田工業は負極材の事業を行っており、また、正極材事業では米国に進出している。ドイツ、中国、韓国にも販売拠点がある。
これらの事業がどうなるのか、不明である。

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戸田工業はベンガラ製造業としての創業から、およそ2世紀にわたる長い歴史をもつ企業で、現在は、金属酸化物の湿式合成技術を基盤とし、リチウムイオン電池正極材、顔料・トナーなどの各種着色材料、磁性体粉末材料・フェライト材料などの磁性体の多様な商品を製造している。

電子部品用材料(磁性材料等)
EMC/EMI電磁対策部品
顔料(コンクリート用、アスファルト用、CSファルト用着色材料)
デジタル記録材料(タル磁気記録材料、磁気記録用下層材料)
環境機能材料(ダイオキシン制御材料、土壌・地下水浄化、重金属不溶化剤)
電子印刷材料(カラープリンター用キャリア及びトナー材料)

リチウムイオン電池用材料

 

リチウムイオン電池の構成は以下の通り。

正極材としては、コバルト産リチウム(LiCoO2)以外に、3元系(LiNiMnCoO2)、マンガン系(LiMn2O4)、ニッケル系(LiNiCoAIO2)、鉄系(LiFePO4などがある。


戸田工業の電池事業の歴史は以下の通り。

1990's 正極材研究に着手  
2000 LiCoO2事業開始  
2002 LiNiCoAlO2事業化 富士化学工業から複数の特許を引継ぎ
2007 Ni(OH2)/LiNiCoMO2/CoOx事業化 HC.Starckより事業買収、カナダの正極材料および正極材料前駆体製造工場も。
→Toda Advanced Materials Inc.(カナダオンタリオ州Sarnia、年産4,000 トン)
2008 LiMn2O4事業化  
三成分系(LiNiMnCoO2)事業化 Argonne National Laboratories からライセンス受け
2009 米国工場建設開始 Toda America、立地:Battle Creek, Michigan
エネルギー省のAmerican Recovery and Reinvestment Act of 2009による助成金交付
ニッケル系、三元系を中心とした正極材、及びマンガン系(LiMn2O4)、年産4,000 トン
2010 米・加子会社を伊藤忠とのJV化 戸田50%、伊藤忠 50%
米国:Toda America
カナダ:Toda Advanced Materials
2011 正極材用リン酸鉄リチウム生産設備建設 M&Tオリビン(三井造船51%、戸田49%)が三井造船千葉事業所に年産2100トンプラント建設
2013 負極用炭素材料マーケティング開始 三菱商事とのJV MTケミカル(煆焼石油コークス製造のSGケミカル:旧三井鉱山化成の敷地内で生産)

  

H.C. Starck

H.C. Starck はタングステン、モリブデン等の希少金属の粉末及びコンパウンド、セラミック粉末、エレクトロニクス用スペシャリティケミカル等のメーカーで1986年にBayerグループに入った。

BayerはH.C. Starck を入札方式により売却先を選定していたが、2006年12月に投資会社の Advent International とCarlyle Group に売却することに決めた。

2006/12/2 Bayer、子会社 H.C. Starck を売却

H.C.Starck の電池材料事業部門は、ドイツに経営・開発拠点を置き(主な商品はLi-ion電池用正極材料の前駆体、Ni-MH電池正極材料 及び 触媒,メッキ用特殊Ni材料など)、カナダ、オンタリオ州 サーニャ市に年間4000トンのNi系電池用の正極材料および正極材料前駆体の工場を有していた。

戸田工業は2007年にH.C.Starckの電池材料事業部門を買収する契約を締結した。

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BASFはHED™ブランドでいろいろな正極材を扱っている。

同社は戸田工業と同じく、ニッケル・コバルト・マンガンの3元系技術のグローバルリーダーのArgonne National Laboratories からライセンスを受けている。
更に、燐酸鉄リチウム技術のリーダーのLiFePO4+C Licensing からもライセンスを受けている。

 

 

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