DuPont と韓国Kolonのアラミド繊維の技術盗用裁判、差し戻し

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Kolonは1979年にアラミドの基礎研究を開始、1994年に完成させ、2005年末から商業生産を開始した。

DuPont2007年に、同社を2006年初めに退職し、その後Kolon のために Aramid Fiber Systems LLC を設立した技術者の行動に疑念を持ち、FBIと商務省に懸念を伝え、共同で調査を続けた。

DuPont20092月にKolon を商業秘密盗用で訴えた。
これに対し、
KolonDuPont技術の盗用を否定、自社技術で生産していると反論していた。

バージニア州Richmondの連邦裁判所の陪審は2011年9月、Kolonに対し、DuPontのアラミド繊維(Kevlar)に関する商業秘密を盗んだとして、919.9百万ドルの損害賠償を支払うよう命じた。

 2011/9/21  DuPont、アラミド繊維の技術盗用裁判で韓国のKolonに勝訴 

DuPontは判決後、裁判長に対し、追加の懲罰賠償と裁判費用の支払い、Kolonの米国資産の凍結、DuPont技術の使用禁止の命令を求めた。

米地裁は2011年11月、懲罰賠償として35万ドル、合計920.3百万ドルの支払いを命じ、2012年8月にはKolonに対し Heracron® Aramid Fiber の20年間の製造停止を命じた。

 但し、製造停止命令は控訴審で差し止められ、実施されていない。

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今回、控訴裁判所は、Richmondの連邦裁判所の裁判長が、問題となった商業秘密が無効であるとの証拠を採用しなかったこと、商業秘密の一部をDuPontが以前のAkzo Nobelとの裁判で開示しているとのKolonの主張を受け入れなかったことは、思慮を欠く独断的な行為であるとし、再審を命じた。

どの証拠を認めるべきであったとするのではなく、証拠の全面除外("blanket exclusion")は著しく差別的であるとした。

Kolonとその5人の役員が、FBIが入手したKolonの明らかな違法行為の証拠に基づき、2012年8月に商業秘密盗用で起訴されたことを指摘し、しぶしぶ("with reluctance")この判断を下したとしている。

Kolonの勝訴ということではなく、手続き上の誤りで再審を命じたと見られる。
但し、Kolonは新しい裁判で、過去に提示できなかった証拠を提示し、主張を述べることが出来ることとなった。

Kolon 側が当初の裁判長を利害相反で忌避したため、再審は異なる裁判長の下で行われる。

当初の裁判長は、DuPontとAkzo との間の裁判の当時、DuPont側に立っていたMcGuireWoods法律事務所のパートナーであった。
但し、2011年の裁判時にはKolonは裁判長忌避を行わなかった。


DuPontがアラミド繊維で米国で70%以上のシェアを持ち、大需要家に需要の80%以上を同社から買うよう求めているというKolon側からの独禁法 違反の訴えについては、控訴裁判所は、DuPontのシェアは2006年から2009年の間に60%以下に低下し、日本の帝人に着実にシェアを奪われつつあるとした。

そして、DuPontがシェアを失いつつあること、長期の市場支配力を欠いていることから、DuPontが価格を支配したり、競争を排除したりする能力は持たず、市場を支配しているとは言えないとした。

 



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