EU、高圧電力ケーブルカルテルに制裁金

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欧州委員会は4月2日、欧州内で日本メーカーを含む企業が、10年近くにわたって電力網の構築などに使う地下及び海底の高圧電力ケーブルでカルテル行為を実施したとして、総額で3億164万ユーロの制裁金を科したと発表した。

欧州6グループ (ABB、Brugg、Nexans、NKT、Prysmian、Silec)、日本3グループ(J-Power、ビスキャス、エクシム)、韓国2社(LS Cable、大韓電線)の11グループが1999年から2009年1月(調査開始時)までの間、カルテルを結び、欧州メーカーと日韓メーカーが相手のホームテリトリーに入らないこと、その他の市場を分け合うことを決めていた。

欧州メーカーは欧州経済領域(European Economic Area:EEA)内でプロジェクトを分け合っていた。日韓メーカーが欧州需要家から要請を受けた場合は、欧州メーカーに連絡した上で断った。各社は価格情報を交換し、決められたメーカーが受注できるようにし、他のメーカーは入札を取り止めるとか、受けられない高い価格を提示した。

ABBはカルテルの存在を通知し、 33百万ユーロの制裁金を免除された。

J-Power Systems と株主の住友電工、日立金属は調査に協力し、制裁金の45%を免除された。
3社はまた、最初に証拠を提出したため、カルテルの最初の2年間については制裁金を免除された。

ーーー

日本企業が取り決めに従って欧州で応札せず、直接的に欧州での競争を制限したとして、多額の制裁金を課せられたのには、電力用ガス絶縁開閉装置のケースがある。

2007/1/26 EU、電力用ガス絶縁開閉装置のカルテルで1200億円の制裁金

欧州企業は日本での競争を制限しているため、日本で課徴金を課せられる筈だが、この例では、欧州委からの通報がなかったために、時効により公取委はカルテルの調査に入れなかった。

2008/4/19 電力用ガス絶縁開閉装置のカルテルの日本での扱い 

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今回の制裁金は以下の通り。

 

Leniency

Fine (€)

ABB 100% 0

Brugg Cables

 

8,490,000

Nexans

 

70,670,000

NKT Cables

 

3,887,000

Prysmian Group

 

104,613,000

(内 Pirelli Group)  

 

(67,310,000)

(内 Goldman Sachs)
2005年 Pirelli Cable & System買収、改称、
調査開始後に売却した。

 

(37,303,000)

Silec Cable 

 

1,976,000

(内 General Cable)

 

(1,852,500)

(内 Safran) 

 

(123,500)

 Safran 
   2005年、Silec Cable をGeneral Cable に売却
  8,567,000
J-Power Systems
 2001/10住友電工、日立電線 50/50
 2014/4 住友電工100%
45 %

20,741,000

 住友電工

45 %

2,630,000

 日立電線(現 日立金属)

45 %

2,346,000

ビスキャス(VISCAS)
 2001/10 古河電工、フジクラ 50/50 
  34,992,000

 古河電工

 

8,858,000

 フジクラ

 

8,152,000

エクシム(EXSYM)
 2012/4 昭和電線 60%、三菱電線 40%
  6,551,000

 昭和電線

 

844,000

 三菱電線 

 

750,000

LS Cable

 

11,349,000

大韓電線Taihan Electric Wire)

 

6,223,000

TOTAL

 

301,639,000



欧州委員会は3月19日、自動車向けのベアリングで、日本企業と欧州企業 5社に9億5300万ユーロの制裁金を科したが、この際は全社がカルテルへの参加を認め、責任を認めて示談制度による10%減額を受けている。

   
2014/3/22 EU、ベアリングカルテルで制裁金

今回はどの社も減額を受けていない。

日本の公取委による解説では以下の通り。

和解手続は,審査手続の迅速化・簡略化を目的としていますが、すべてのカルテル事件に適用されるわけではありません。欧州委員会は、事業者との間で事件についての共通理解が得られるか、手続をどの程度効率化できるかといったことを踏まえて、和解手続を適用するかどうかを判断します。

本件の場合、この決定が不服で、裁判で争うとする企業が多い。

このうち、特に問題となるのは「投資会社」のGoldman Sachsである。

Goldman Sachs では、カルテル行為は同社がPrysmian を買収する数年前に始まっていたが、そういう行為を全く気がつかなかったとし、裁判で争うとしている。

これに対し欧州委員会は、Goldman Sachs はPrysmian に 5~6名の取締役を派遣しており、定期的に戦略的決定についての報告を受けているとし、投資会社であっても法令順守のカルチャーを維持する義務があるとしている。


ーーー

日本では、発電所から変電所に高圧電力を送る電力ケーブルを巡るカルテルについては、2000年1月に下記の3社に排除措置命令と課徴金納付命令を出した。

3社は2005年以降、国内の電力会社が発電所から変電所への送電に用いる高圧電力ケーブルについて、担当者が受注割合や価格などを話し合って決めていた。

課徴金(千円)
  東京電力
電源開発
東北
電力
中部
電力
北陸
電力
中国
電力
九州
電力
沖縄
電力
合計
エクシム 100,070 12,600 30,010 29,220 9,060 62,400 8,210 251,570
J-Power Systems 128,580 5,610 14,940 15,220 22,530 33,600 7,620 228,100
ビスキャス 54,680 17,680 34,440 2,470 9,370 25,130 9,570 153,340
課徴金合計 283,330 35,890 79,390 46,910 40,960 121,130 25,400 633,010


報道によると、公取委は2009年1月、欧州企業を含めた国際的な受注調整が行われていたとみて欧州委員会や米司法省と同時に調査を開始したが、証拠が足りないため国際カルテルの解明は断念したとされる。

今回、欧州委員会は証拠をもとに欧州で販売していない日本企業にも多額の制裁金を課したが、日本の公取委は日本で販売しないことで日本での競争を制限した欧州企業及び韓国企業に対し、措置を取るのであろうか。

同じ事件で欧州と日本で扱いが異なるのはおかしい。


なお、日本市場での電線カルテルについては、他に下記のものがある。

2010/5/26  光ファイバーケーブルのカルテルで過去最高の課徴金

2010/11/30 公取委、建設・電販向け電線カルテルで排除措置命令及び課徴金納付命令



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