第一三共、ランバクシーを実質売却

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第一三共は4月7日、子会社 Ranbaxy Laboratories をインドのSun Pharmaceutical Industries Ltd. (Sun Pharma) が株式交換により吸収合併することでSun Pharmaと合意したと発表した。2014年12 月末迄に完了する予定。

Lanbaxyの2013年の売上高は18億ドル、Sun Pharmaの売上高は25億ドルで、統合後のSun Pharmaは売上高43億ドルで世界5位の後発薬メーカー、インド最大の医薬品メーカーとなる。

株式交換比率は、Ranbaxy株式 1に対し、Sun Pharma株式 0.8で、第一三共はRanbaxy株式の約63.4 %を保有しているが、合併により Sun Pharma株式の約9%を取得し、取締役1 名を派遣する権利を有する。
この交換比率はRanbaxy 1株を457ルピーで評価したもので、過去30日の加重平均株価に18%、過去60日の加重平均株価に24.3%のプレミアムを乗せたもの。

但し、ほぼ同規模の会社が統合し、Ranbaxyの63%株主の第一三共が新会社の9% しか得られないというのは理解しにくい。
入手しうる資料からは下記の通り第一三共の比率は15.6%となる。(同社に確認を求めている最中)

全くの推測だが、これでは連結対象となる(取締役派遣の場合は15%以上の出資で持分法連結対象となる)ため、一部を売却した可能性もある。

  株数 第一三共 比率
Ranbaxy (2012/12) 422,913,803 268,711,323 63.4%
 
Sun Pharma (2013/3) 1,035,581,955    
Ranbaxyへ割当 338,331,042 214,969,058  
割当後 1,373,912,997 214,969,058 15.6%

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第一三共は2008年11月7日、Ranbaxy株の63.9%を取得したと発表した。 公開買付けを行ったうえ、創業家一族からの取得、第三者割当増資、新株予約権の引受けを行ったもので、取得価格は1株当たり 737ルピーで、総額4,950億円になる。

この買収の最中の2008年9月16日に、米国FDAは品質管理等に問題があるとして、Ranbaxyの医薬品30種以上の輸入を一時停止した。

第一三共は2009年1月、2009年3月期第3四半期に、連結子会社であるRanbaxyに関し、連結決算において3,540億円ののれん一時償却の特別損失を計上すると発表した。

2009/1/8 第一三共、ランバクシーの評価損計上

Ranbaxyは 、製品の米国向け輸出が出来なくなったため、インドで生産した原薬を米国で製剤する方策を採ったが、その後も品質問題は解決せず、原薬工場も禁止対象となった。

2011/12/28 ランバクシー、米FDAと同意協定書締結
2013/9/21  米FDA、第一三共子会社Ranbaxyに再び輸入差し止め
2014/1/18      第一三共のRanbaxy、原体製造工場も問題か?

第一三共は経営陣を送り込み、品質問題に対処してきたが、「現場レベルまで行き届いた指導がなされなかった」という。
日経によると、現地では、「窓からハエが飛来している」「錠剤に異物が入っている」など、工場の品質問題を巡る報道が続いているという。

第一三共はRanbaxyの米国事業の早期解決が難しいと判断、Sun Pharma に売却することとした。

なお、第一三共は2013年5月に「当社は、Ranbaxyの特定の以前の株主が、DOJおよびFDAの調査に関する重要な情報を隠蔽したものと判断し、現在、法的な措置を講じております」と述べている。

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日経は第一三共の社内事情も報じている。

第一三共は2005年に「対等の精神」で統合したが、旧第一製薬と旧三共の勢力争いが今も続いているという。
「旧三共案件」のランバクシーが窮地に陥り、今回のサンファーマとの合併は旧第一が主導し、旧三共を排除して行われたという。

いまだに全社一体での対応がなされていないのは問題である。

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Sun Pharmaはインドのムンバイに本社を置くジェネリックメーカーで、1983年に設立後、ICNのハンガリー事業、Caraco Pharmaceutical、Taro Pharmaceutical などの買収、MSD(Merck)とのJV設立などで拡大、ジェネリック医薬品やノーブランド医薬品を中心に 米国やヨーロッパおよびアジアなど世界中に輸出している。

武田薬品は2012年にURL Pharmaを買収したが、その後同社の後発品事業をSun Pharmaの100%子会社のCaraco Pharmaceutical に譲渡し ている。

武田薬品とURL Pharmaは2012年4月、武田がURL Pharmaを800百万米ドルで買収することについて合意した。買収完了後、武田ファーマシューティカルズUSAに統合した。
URL Pharmaの2011年の売上高は約600百万米ドルで、そのうち痛風の予防および治療薬であるColcrysの売上高が430百万米ドル強を占めている。

武田薬品は2013年6月、Sun Pharma 及びイスラエルのTeva Pharmaceutical と特許侵害訴訟で和解している。

2013/6/19  武田薬品、米国での医薬品特許侵害訴訟で和解、但し和解金は収益にならず



統合後のSun Pharmaは売上高43億ドルで世界5位の後発薬メーカー、インド最大の医薬品メーカーとなる。
 


 

  ソース: http://www.sunpharma.com/Media/Press-Releases/Sun-Ranbaxy Investor Presentation.pdf

 

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