(このほか、4つの契約書が調印された。5/27に記事)
ウクライナ情勢をめぐり欧州諸国がロシア産ガスへの依存度を引き下げようとするなか、アジアでの新たな協力関係構築を目指すプーチン大統領にとっては成功を収めた格好となった 。
ロシアから中国への天然ガス輸出計画は1994年から交渉してきたが、価格で折り合いがつかず、平行線をたどってきた。
1994 天然ガスパイプライン建設のMOU 1999 Gazprom とCNPC、天然ガス売買のLOI 2006 中国とロシア、天然ガス供給のMOU 2008 中国とロシア、副首相級の天然ガス契約の交渉開始 2011 価格交渉がデッドロックに 2012 プーチン訪中で交渉再開 2013 習近平訪ソ、CNPCとGazpromが初期契約を締結
今回、 プーチン大統領が輸出価格引き下げにつながる税制優遇策を適用する方針を伝え、妥結した。
契約によると、ロシア側は2018年から30年間にわたり毎年380億m3の天然ガスを供給する。総契約額は4,000億ドルを上回ったとみられる。
中国の天然ガスの需給状況は以下の通り。(億m3)
生産 消費 輸入 2012 1,070 1,460 390 2013 1,170 1,680 510
なお、2013年のロシアからの欧州向け天然ガス輸出は約1,600億m3となっている。
契約では、Gazpromが天然ガス開発、ガス処理、ロシア内のパイプライン建設を担当、CNPCが中国内のパイプライン建設を担当する。
プーチン大統領は、ロシアが天然ガス探査と中国に続くパイプラインの建設に550億ドルを投資すると表明した。
また、中国がロシア側のインフラ開発などを支援するために約200億ドルを支払う。
ロシアのエネルギー相は、中国が最大250億ドルのガス代を前払いする可能性があることを明らかにした。
プーチン大統領は今回の契約について「旧ソビエト連邦時代を含め、ガス部門で最大規模の契約となった」とし、「ロシアのガス部門にとり歴史的な出来事となった」と述べた。
価格は「商業機密」として明らかにしていないが、数量 380億m3x 30年で4000億ドルとすると、価格は1000m3当たり350ドル程度となる。西欧諸国への供給価格は長期契約の下で350ー380ドルとなって
おり、Gazpromは350ドル以下での供給には反対したとされる。
これまでの交渉では、ロシア側の提示は最低 9.67$/MMBTU(387$/1000m3)であったとされる。
ガスは西シベリアのガス田からウラジオストックまでをつなぐ計画中のEastern Pipeline で輸送する。
注)石油については既にパイプラインがつながっている。
プーチン大統領は、「ロシアと中国は西ルートでもガスを供給することを協議する」と述べ、西シベリアからモンゴルの西側を通り中国につなげる2本目も敷設することを明らかにした。
2006年3月のプーチン・胡錦涛会談で 西シベリアからアルタイ共和国経由で「西気東輸」(中国の東西ガスパイプライン)につなぐAltai Pipelineの建設で合意したが、価格交渉が難航したこともあり、これまで実現していない。
中央アジアからのガスパイプラインも「西気東輸」につながっている。
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