トルクメニスタン国営ガス会社Turkmengas はカスピ海東岸のTurkmenbashi地区のKyyanly(Kiyanlyとも表す)に 、 数期に分けてガス化学コンプレックスを建設する計画を立てているが、東洋エンジニアリングは5月12日、韓国の現代エンジニアリング、現代建設、LG International (LGI) と共同でこのコンプレックスの第1期の建設を受注したと発表した。
プロジェクト全体の投資額は100億ドルとされるが、第1期の投資額は30億ドルで、うち、東洋エンジの受注分は800億円超。完成は2018年を予定している。
Turkmengasと東洋エンジ・韓国勢との契約は、2013年9月のトルクメニスタン大統領の訪日時に日本で調印された。
首脳会談の席上、安倍総理から、日本企業が化学プラント建設で契約や枠組み協定に署名する運びとなったことに歓迎の意を表するとともに、日本政府としてもこれを支援していく旨述べた。
4月22日に現地で大統領や各社首脳が参列し、起工式が行われた。
カスピ海沿岸で産出される天然ガスを原料に、第1期として、エチレン
(年産40万トン)、高密度ポリエチレン(年産40万トン)、ポリプロピレン(年産8万トン)を製造するもので、東洋エンジは、ガス分離設備
(年間50億m³)、エチレン製造設備、ポリプロピレン製造設備に関する設計、調達及び試運転を担当する。
ガス分離設備には、東洋エンジのエタンとLPGを効率よく回収できるCOREFLUX®技術とBASFのOASE™酸性ガス除去技術を使う。
エチレン製造設備にはルーマスの技術、ポリプロピレンには米国グレース社の技術を使用する。
トルクメニスタンは天然ガス埋蔵量で世界6位を誇る。2011年に世界最大級のいくつかのガス田を評価した後、埋蔵量を94 tcf (兆立方フィート)から265 tcf に増やした。
南東部のGalkynish ガス田は埋蔵量 26.2tcf で世界第二位のガス田である。
カスピ海のトルクメニスタン領海内には121億トンの石油と6.1tcf のガスがあるとされ、Magtymguly、Diyarbekir、Garagol Deniz などのガス田は生産が開始されている。2011年にはガス処理設備と陸上ガスターミナルが稼動した。
このような大きな埋蔵量の天然ガスを持ちながら、2011年の生産量はわずか2.3tcf であり、パイプライン網の不足から、中国、ロシア、イランだけにしか輸出していない。
政府は石油とガスの生産量のアップを図っているが、欧州やアジアの天然ガス価格は今後下がる可能性が強く、経済発展を支えるためには 石油とガスの輸出だけに頼る訳にはいかない。
このため、政府は2012年にKyyanlyに数期に分けてワールドクラスの石油化学コンプレックスを建設することを決め、日本と韓国に資金と技術の支援を求め、協議を開始した。
2013年9月12日、トルクメニスタン国立対外経済関係銀行(TVEB)と日本の国際協力銀行(JBIC)は業務協力に関する覚書を締結した。
日本企業が輸出者として関与する同国でのプロジェクト等の実現に向けた協力等を両行間で行っていくこと等を目的とするもので、日本企業の事業機会獲得に向けた案件形成に協力すると共に、案件実現時の早期融資実施に繋げることで、日本企業とトルクメニスタン政府の双方の利益に貢献するとしている。
JBICはこれまでもTVEBとの間で新規プロジェクトの実現に向けた情報交換等の協力を実施してきており、2010年3月には、トルクメニスタン国営化学会社 (Turkmenhimiya)に対し、双日と川崎重工業からアンモニア及び尿素肥料製造プラントを購入するための資金450億円を貸し付けている。
他方、韓国も資金融資に関し、1年以上にわたりトルクメニスタン政府と交渉を進めた。
2014年4月に韓国輸出入銀行は本計画に770百万ドルのローン(直接融資492百万ドル、借入保証
215百万ドルなど)を供与することを決めた。
トルクメニスタン政府は第1期計画の資金計画を確立し、建設業者として東洋エンジと韓国3社を選んだ。
韓国の現代Engineering と LGI はトルクメニスタンで実績がある。
両社は2013年10月に同国南東部のGalkynyshガス田のガス処理設備を完成させている。
両社は続いて2013年5月にTurkmenbashi Refineryから原油精製プラントを受注、更に2013年7月にマレーシア国営のPetronas Carigali のトルクメニスタン子会社からKyyanly 原油処理プラントを受注している。
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