ユニチカは5月26日、主力取引銀行に金融支援を要請したと発表した。
繊維事業の縮小や、それに代わる収益源の育成が遅れたことから業績が低迷しているが、創業事業である繊維事業からの大幅な撤退を含む聖域なき構造改革を断行することとした。
これまでは、「(財務悪化で)スピーディーな構造改革や、稼げる事業への大型投資ができなかった」
新中期経営計画を新たに策定し、低採算事業及びノンコア事業の縮小・撤退による事業ポートフォリオ改革を通じて、経営資源を高収益事業である高分子事業及び成長市場であるアジア地域向けの事業へ積極的に投下し、持続的な成長を目指す。
産業繊維事業のうち、ポリエステルの短繊維など汎用品事業を縮小する。この製品を生産する岡崎事業所も規模を見直す。
このほかにも採算が低く、中核事業でない部門は縮小、撤退する方針で、「この1年間で構造改革をやり遂げたい」としている。
大胆な事業ポートフォリオ改革には、多額の自己資本の毀損を伴うこと、また成長分野への積極的な投資を行い、一刻も早い抜本的な成長戦略へのシフトを可能とするために、金融支援を求める。
2015年3月期で440億円の特別損失を計上するため、370億円の当期損失を見込む。
2014年3月末の連結ベース純資本は193億68百万円のため、160億円の債務超過に陥る。
金融支援の内容は以下の通り。
1)主力取引銀行に優先株を発行、払込金額をそのまま、各行への債務返済に充てる。
A) 三菱東京UFJ銀行 217.4 億円 優先株配当率 年1.20% B) みずほ銀行 36.35億円 三菱UFJ信託銀行 21.24億円 (小計) 57.59億円 優先株配当率 年2.374% 合計 274.99億円 払込金額を各行への債務の弁済に充てる
2) ジャパン・インダストリアル・ソリューションズ第壱号投資事業有限責任組合(JIS)に優先株を発行
総額100 億円 優先株配当率 年6.0%
資金は下記の成長分野への積極的な投資に充てる。
(ア)フィルム事業 国内・中国向け差別化フィルム拡販 1,850 百万円 (イ)樹脂事業 耐熱樹脂拡販 2,900 百万円 (ウ)不織布事業 アジア市場向けPETスパンボンド拡販 4,800 百万円
注)JISは産業再生を視野に入れた事業の再編・再生をサポートする投資ファンドで、日本政策投資銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行、三菱商事が各14.9%出資している。
3) 債務返済条件の変更の要請
借入先金融機関に対し、債務残高の維持を目的として、借入約1,600 億円について返済期日の2017年9月末までの延長を要請。
債務免除又は金利の減免は要請していない。
以上により、このままでは2015年3月末時点で連結ベースで約160億円の債務超過に陥る見込みだが、優先株発行で総額約375億円の資金を調達し、純資産額が約215億円まで増加することに加えて、当該資金により借入金の一部を弁済することで有利子負債が約275億円減少する。
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新中期計画の概要は以下の通り。
(1)アジア市場向け、新素材・新用途向け拡販
成長市場である中国及び東南アジアへの製品供給能力の向上を図るとともに、国内外で高付加価値品を導入するための投資を積極的に実施することで、収益事業の拡大を目指す。
① フィルム事業:アジア地域での能力増強と差別化品の拡販
・包装用ナイロンフィルムのグローバルトップブランド維持・強化
・新フィルム開発と新事業の展開:耐熱フィルム、非食品用ナイロンフィルム② 樹脂事業:新素材・新用途向け拡販と、中央研究所開発素材の積極的な製品化
・グローバルニッチ戦略の推進③ 不織布(スパンボンド)事業
・アジアグローバルシェア拡大
(2)事業ポートフォリオ改革
事業を収益性、将来性、グループシナジーを踏まえて峻別し、事業及び子会社数をスリム化することで、事業ポートフォリオの改革を行い、成長事業へ経営資源を集中投下する。
(3)管理コスト削減と組織力強化
抜本的事業再構築の推進、連結経営体制の整備及び地道なコスト削減努力を推進することで、収益体質の強化を図る。
(4)財務体質の健全化
各種施策を実現するための資金余力、財務基盤を確保することで、本計画を着実に遂行する。
(5)損益計画(億円)
2013年度
実績2014年度
予想2017年度
計画売上高 1,627 1,650 1,460 営業利益 68 80 140 経常利益 47 60 120 当期利益 6 -370
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ユニチカは1969年にニチボーと日本レイヨンが合併して誕生した。
ニチボー 日本レイヨン 1889年 尼崎紡績会社設立 1918年 摂津紡績と合併、
大日本紡績と改称1926年 日本レイヨン設立 1964年 ニチボーと改称 1969年 合併、ユニチカ 発足
高分子事業をコア事業とする国内屈指の素材メーカーであり、特にナイロンフィルムにおいては、国内・アジア地域において圧倒的なシェアを有している。
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