米国エネルギー省(DOE)は5月29日、FTA非締結国に対するLNG輸出承認手続きを変更する案を発表した。
45日のpublic review とコメントを経て、決定する。
米国ではNatural Gas Act of 1938 により、天然ガス輸出入にはエネルギー省の許可が必要とされており、輸出許可の判断基準には①公共の利益に反するか否か、②輸出先国で内国民待遇が与えられるかどうかがある。①の公共の利益については、国内供給を脅かさないことと、自由競争を阻害しないことが要件となる。
LNG輸出設備の建設には環境法や諸規則で求められるレビュー(National Environmental Policy Act review:NEPA review) が必要であるが、DOEはこれまで、この完了を待たず仮承認を与えてきた。
これまでは申請順に審査して仮承認を与えており、これまでに6ヶ所7件(Freeport 追加を含む)が認められた。
このうち、日本向けは3ヵ所ある。2014/3/27 米エネルギー省、西海岸からの非FTA締結国向けLNG輸出を承認
今回、DOEは、環境面でのNEPA
reviewが完了して後に初めて、申請を審査し、最終的に決定する案を提案した。
米国ではウクライナ情勢を受け、米同盟国がロシアの天然ガスに依存しなくても済むよう、WTO加盟国に政府の許可なしでLNG輸出を認めるなどの議論が出ていた。
現在のところ、24件が非FTA国向け輸出の承認を待っており、順位の一番はOregon
LNGである。
2014/4/1 米国からの欧州向けLNG輸出
ロシアを除く主要7カ国首脳会議(G7サミット)は6月5日、ブリュッセルで首脳宣言を採択して閉幕した。宣言はガス供給をロシアに依存する欧州を中心に、エネルギー調達先の多角化や消費の効率化に取り組む方針を明確にした。
具体策の一つが、新たなガス供給ルートの構築で、欧州には年約2000億立方メートル分のLNG受け入れ施設があり、フル稼働すればロシアからの輸入量(1600億立方フィート)を上回る。
オバマ米大統領もサミットに先立つ東欧歴訪で、米国産のシェールガスの欧州への輸出解禁に前向きな姿勢を示した。
このため、ロシアの天然ガスに依存する国にLNGを輸出することはかなり先になる。
(いずれにせよ、NEPA reviewが完了してから建設を始めるため、DOEの承認があってもすぐには輸出は出来ない。)
変更の目的は、商業的に有利な計画を優先して効率を上げるとともに、公共の利益に合うかどうかの決定に際し完全な情報が得られるということである。
これまではFTA非締結国への輸出が認められるかどうか、分かってから、NEPA reviewをするのが効率的と考えてきたが、NEPA reviewを完了し、実際に建設されるのが確実な計画について承認するよう変更することで、計画が公共の利益に与える影響をより正確に評価することが出来る。
また市場への影響の判断において、より正確な累積承認数量をベースに評価を行うことが出来るようになる。
NEPA reviewの申請費用は最大1億ドルと され、DOEへの申請費用(約2万ドル)を大きく上回っているため、NEPA reviewを先行させることで、実現性の低いプロジェクトをふるいにかけられるとみ られている。
米国からのLNG輸出に終始反対しているDow Chemical は今回のDOEの手続き変更に賛成し、この変更が輸出ラッシュに歯止めをかけ、天然ガス価格の値上げと供給の不安定から米国の消費者を守ることになると述べた。
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DOEは2012年にLNG Export Studyを発表した。
ここでは日量 60億~120億ft3 の輸出を前提に検討した。
2012/12/7 米エネルギー省、LNG輸出に向けての報告書を発表
今回DOEは、米国が日量 120億~200億ft3
の輸出の場合に公共の利益にどう影響するかについて理解を得るため、経済分析を実施する。
DOEは同時に、2つの資料を発表した。
① 非定型天然ガスの関連情報
Draft
Addendum To Environmental Review Documents Concerning Exports Of Natural Gas
From The United States
② 温室効果ガス関連
Life
Cycle Greenhouse Gas Perspective on Exporting Liquefied Natural Gas from USA
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