6月7日付けの日本経済新聞は、茂木経産相のインタビュー記事とともに、「製油所、過剰解消へ再編 経産相が新制度で3年内に」との記事を掲載した。
昨年度の国内の石油精製能力は日量447万バレルだが、需要は332万バレルしかなく、各社は赤字経営が続くが、このままでは、過疎地などでの給油網の維持が難しくなる恐れや、都市部も含めて災害時の燃料供給が滞るリスクがあるとする。
経産省の構想は、まず、2013年12月4日に成立した「産業競争力強化法」 第50条に基づき政府が市場構造を調査し、その結果を踏まえ、今後3年を期限とした製油所の設備削減計画や、他社の製油所との統合案などを盛り込んだ再編計画を提出させるというもので、政府は税制措置や補助金も総動員して、各社の取り組みを後押しする。
合理化への取り組みが著しく不十分な企業には、経産相による勧告・命令や罰金(100万円以下)を科すことも検討するとしている。
日経は合わせて、コスモ石油と東燃ゼネラル石油が2014年度中に共同事業会社を設立し、コスモの千葉製油所と極東石油工業(東燃ゼネラル石油子会社)の千葉製油所を新会社に移し、2016年度までに石油精製能力を2~3割削減すると報じた。
コスモは110千バレルと130千バレルの2系列、極東石油は152千バレル1系列である。
付記
両社は6月18日、両製油所を統合することにより、「国際競争力を持った国内トップクラスの製油所を目指す」との認識で一致したと発表した。本年中の基本契約締結を目指す。
付記
茂木経済産業相は6月10日の閣議後記者会見で、過剰供給構造の解消を目指す産業競争力強化法に基づき、石油業界の市場構造調査に乗り出す方針を表明した。
6月末をめどに石油製品の需給動向や製油所の供給能力を調査し、公表する。
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「産業競争力強化法」 はアベノミクスの第三の矢である「日本再興戦略」に盛り込まれた施策を確実に実行し、日本経済を再生し、産業競争力を強化することを目的とし、「創業期」、「成長期」及び「成熟期」の発展段階に合わせたいろいろな支援策により産業競争力を強化する。
産業競争力強化のためには、日本経済の3つの歪み、すなわち「過剰規制」、「過小投資」、「過当競争」を是正していくことが重要で、この法律は、そのキードライバーとしての役割を果たすものであるとしている。
同法第50条(調査等)は以下の通り。
政府は、事業者による事業再編の実施の円滑化のために必要があると認めるときは、商品若しくは役務の需給の動向又は各事業分野が過剰供給構造にあるか否かその他の市場構造に関する調査を行い、その結果を公表するものとする。
設備削減については、経産省は既に 「エネルギー供給構造高度化法」に基づく告示という形で、実質的に削減を強制した。
2010/7/7 エネルギー供給構造高度化法で重質油利用促す新基準、石油業界の再編圧力に 2014/3/14 エネルギー供給構造高度化法 処理期限
今回は、更なる設備削減と、他の製油所との統合を強制しようというものである。
既存の法律では強制は出来ないため、恐らく、「エネルギー供給構造高度化法」の改正か、この法に基づく新たな告示により実施することを考えていると思われる。
(同法では「命令に違反した者は、百万円以下の罰金」となっており、上の記事に合致する)
地区 能力 エネルギー供給構造高度化法処理 千葉 コスモ石油 240 統合の報道 東燃ゼネラル石油(極東石油工業) 152 2014/3 23千バレル削減を報告 出光興産 220 富士石油 140 52千バレル削減 川崎 昭和シェル石油(東亜石油) 65 昭和シェル扇町(120千バレル)停止 東燃ゼネラル石油 268 67千バレル削減
分解能力 34.5千バレル増強四日市 昭和シェル石油(昭和四日市) 260 休止分 50千バレル復活 コスモ石油 112 43千バレル削減 堺 コスモ石油 100 東燃ゼネラル石油 156
当ブログは「エネルギー供給構造高度化法」に基づく告示という形での実質的な設備削減の強制を批判してきた。
2010/7/21 エネルギー供給構造高度化法は第二の産構法か?
産構法の場合は法律に基づく設備カルテルと共販会社設立であったが、申請により承認を得るものであり、強制ではなかった。
政府による市場調査は問題ないが、製油所の統廃合(当然、人員整理なども伴う)を強制するなどが許されるであろうか。
(第二次世界大戦中には非軍需企業について企業整備令により法的強制力をもって企業の整理が行われた。)
日経のインタビューで、民間の経営への過剰介入ではないかとの質問に対し、経産相は以下のように述べている。
「事業の再編は企業の自主的な判断でしてもらう。
一方で石油産業の収益体質の改善は、国のエネルギー安全保障の根幹に関わる。どの製油所が連携するかとか、どことどこが合併するかは当事者の決めること。
国は民間企業がみずから取り組む事業再編の環境整備をする。」
しかし、合理化への取り組みが著しく不十分な企業には、経産相による勧告・命令や罰金(100万円以下)を科すことも検討するとしており、明らかな過剰介入である。
なお、産業競争力強化法では公正取引委員会との関係について、以下の通り述べている。
・主務大臣は、当該認定に係る申請書の写しを公正取引委員会に送付するとともに、あらかじめ公正取引委員会に協議するものとする。
・協議に当たっては、産業競争力の強化を図ることの必要性に鑑み、所要の手続の迅速かつ的確な実施を図るため、相互に緊密に連絡するものとする。
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