サッポロビール、「極ZERO」を発泡酒に変更

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サッポロビールは6月4日、第三のビール「極ZERO」の販売を5月末の製造分で終了すると発表した。
税率が低い第三のビールと認められない恐れが出てきたため、7月15日に発泡酒として再発売する。

「極ZERO」は2013年6月に、世界初のプリン体ゼロ、糖質ゼロをうた って発売され、初年度は計画を6割上回る358万ケースを売り上げた。

プリン体は穀物の他、肉、魚、野菜など食物全般に含まれており、ヒトの体内でも生成、分解され る。
通常、プリン体は分解されて尿酸に変化し体外に排出されるが、尿酸量が排出能力を超え、体内に蓄積されると痛風の原因となるといわれている。
ビールや発泡酒に含まれているプリン体は
麦芽由来で、通常、ビールには100mlあたり約5-10mg程度、発泡酒にはその約半分量が含まれている。

また、ビールのカロリーの1/3は糖質で、これが脂肪に変わる。(カロリーの2/3はアルコール)

主要ビールの成分(350ml缶当たり):

  カロリー アルコール分 糖質  プリン体
キリン一番搾り生ビール 143.5kcal   5.0%
9.45g 30.8mg
アサヒスーパードライ 147.0kcal 5.0% 10.5g 17.5~21mg
サントリー モルツ 147.0kcal 5.0% 12.6g 29.4mg
サッポロ エビスビール 147.0kcal 5.5% 10.5g 38.5mg


「極ZERO」は、
麦芽・大麦・ホップとプリン体フリー原料を組み合わせ、工程の途中でプリン体を取り除くことなく世界初となる「プリン体 0.00」「糖質 0」を達成した。
 (栄養表示基準に基づき、100ml 当たり糖質 0.5g未満を「糖質ゼロ」と表記)

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ビール、発泡酒、第三のビールの定義と酒税(350ml 缶当たり円)は以下の通りとなっている。

ビール   麦芽 2/3以上 アルコール分 20度未満 77.00
発泡酒    麦芽 2/3未満     下記以外 77.00
麦芽 重量比率 25/100~50/100 
アルコール分10度未満
62.34
麦芽 重量比率 25/100未満   
アルコール分10度未満
46.98
〔第三のビール〕
その他の発泡性酒類
(ホップ又は苦味料を原料の一部とした酒類) 
その他の醸造酒(発泡性)① 糖類、ホップ、水及び政令で定める物品を原料として発酵させたもので、麦芽を含まない。
(エキス分が2度以上のものに限る。)
28.00
リキュール(発泡性)① 発泡酒にスピリッツを加えたもの
(エキス分が2度以上のものに限る。)
28.00


ビールは麦芽が2/3以上。
麦芽2/3未満が発泡酒となる。発泡酒は麦芽の比率で3つに分かれる。
第三のビールには、麦芽を含まないものと、発泡酒にスピリッツを加えたものがある。

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「極ZERO」の原材料は発泡酒+スピリッツ(大麦)で、サッポロビールではこれを「リキュール(発泡性)」 としていた。
この場合、酒税は350ml当たり28円となる。

本年1月に国税当局より「極ZERO」の税率適用区分に関連し、製造方法に関する情報提供の要請があった。

同社では、当局の酒税法に関する法令解釈を確認し、資料、データの自主検証を行ってきた。
現時点では最終結論は出ていないが、「極ZERO」が「リキュール(発泡性)①」に該当しないこととなる可能性があるため、今回の結論となった。

新しく販売する発泡酒の場合、税率は
350ml当たり46.98円となり、約19円のアップとなる。
販売価格は350ml缶で 20―30円の価格上昇になるという。
 

製法のどの部分に酒類区分上の疑義があるのかについては「商品開発の機密なので言えない」としている。

「リキュール(発泡性)①」は「発泡酒にスピリッツを加えたもの」となっており、スピリッツをいくら入れるかの規定はない。
スピリッツをどの工程で加えるか(発泡酒になった後かどうか)などが問題になると思われる。

サッポロビールでは、「極ZERO」が第三のビールと認められなかった場合、酒税の差額分の追加納付を求められる可能性があると発表した。
累計販売量から試算した差額は約116億円を見込んでいる。

付記

同社は6月20日、酒税の自主的な修正申告を発表した。

その後も国税当局から要請されている資料・データの検証作業を続けているが、国当局の酒税法に関する法令解釈に沿った形での事実確認には至っていない。
同社は「極ZERO」は「リキュール(発泡性)①」に該当するものと認識しており、今後もその方向で対応するが、財務的な追加負担軽減の観点(主張が否定された場合の延滞税など)から自主的に修正申告を行うこととした。

「極ZERO」の適用税率を「リキュール(発泡性)①」(350ml 当たり28円)から「発泡性酒類の基本税率」(同77円)として修正申告することにより、116億円の酒税納付額の差額(含む延滞税)が発生する見込みで、これを特別損失として計上する。

一般の発泡酒(麦芽25/100未満)の46.98円ではなく、77円を採用している。
極ZEROの成分は発泡酒にスピリッツ(大麦)となっており、後者を発泡酒が完成する前に投入したと看做されたと思われる。
酒税法では上記の「ビール」「発泡酒」「第三のビール」以外の製法で造られるビール類の税率を「ビールと同じ税率」としており、 ビールの税率77円が採用された。(6/24修正)
 

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酒税に関しては、日本酒を濃縮したものが「雑酒」とされ、税率が上がるケースを以前に紹介した。

2014/3/8   ゼオライト膜をつかった日本酒の濃縮


 


 

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