BRICS (ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)の第6回首脳会議が7月15日、ブラジルのFortalezaで開かれ、新興国や途上国の社会基盤整備支援を目的としたNew Development Bank と、5カ国が金融危機の際に資金を融通しあう外貨準備基金(BRICS Contingent Reserve Arrangement)の設立に合意する「Fortaleza Declaration and Action Plan」に署名した。
各国議会の承認を得て設立・実行される。
BRICSは以前から、世銀とIMFの政策に途上国の意思が公平に反映されていないと指摘し、IMFと世界銀行での発言権拡大を求めてきた。
今回合意した開発銀行と準備基金は、欧米がIMFや世界銀行で支配的地位を維持していることや、新興国にほとんど発言権が与えられないといった現状を打破することにある。
同時に、BRICS内での中国と他国の勢力争いが明らかになった。
2年にわたる交渉で、最大の懸案だったのは資金の不足ではなく、中国の存在だったとされる。
中国1カ国の経済力は、他の4カ国のそれを合わせたものより大きい。
世界第2位の経済力を誇る中国が、その政治力を拡大すべく、影響力を行使しようとするのではないかとの懸念がくすぶっている。
1)New
Development Bank
本部 上海 本部を中国とするかインドとするか、ギリギリまで交渉。
インドを立てるため、ブラジルが初代総裁をインドに譲り、まとまった。Africa Regional Center 南ア 総裁 輪番制
初代:インドから授権資本 1000億ドル 当初出資 500億ドル(各国100億ドルずつ) 中国は当初、他国よりも資本金を多く拠出したいと主張 。
同額拠出とするブラジルとインドの意見が採用された。今後の増資 7年以内に1000億ドルまで
他国出資受入
BRICS出資が55%を下回らない。
中国が影響力を持つ国々に出資させ、銀行の実質的な支配権を握ろうとするのではないかとの危惧がある。運営開始 「出来るだけ早期」
2016年目標
2)BRICS Contingent Reserve Arrangement
拠出額 1000億ドル 国別 中国 410億ドル
ブラジル 180億ドル
ロシア 180億ドル
インド 180億ドル
南ア 50億ドル
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IMFは2010年に、新興国の出資比率を引き上げ、理事会への登用を増やす「IMF改革」に合意した。
改革案が実現すれば、IMFへの出資比率で米国、日本に続く第3位に中国が浮上、更に上位10カ国にインド、ロシア、ブラジルが入り、新興国の発言力が増す。
IMFへの出資比率 (%)
現状 改革後 米国 17.67 米国 17.41 日本 6.56 日本 6.46 ドイツ 6.11 中国 6.39 英国 4.51 ドイツ 5.59 フランス 4.51 英国 4.23 中国 4.00 フランス 4.23 イタリア 3.31 イタリア 3.16 サウジ 2.93 インド 2.75 カナダ 2.67 ロシア 2.71 ロシア 2.50 ブラジル 2.32
大半の国はすでに批准手続きを進めているが、米国では議会の賛成が得られず、批准されていない。
G20財務相・中央銀行総裁会議は本年4月、米国に対しIMF改革案を年末までに批准するよう求め、批准できなかった場合は米国抜きでIMF改革を進めるとする共同声明を採択した。
実際には、米国の承認なしで改革を進めるのは難しい。
今回の宣言でも「2010年に採択されたIMF改革案が実行されないことに失望し、深刻な懸念を持っている。これはIMFの正当性、信用性、有効性を傷つけている」と厳しく批判した。
世銀に対しても、もっと民主的な運営を求めている。
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南米11カ国(スリナム、アルゼンチン、ボリビア、コロンビア、チリ、エクアドル、ガイアナ、パラグアイ、ペルー、ウルガイ、ベネズエラ)の首脳は7月16日、BRICS首脳とブラジリアで会談し、「選択肢が増える」と支持した。
ボリビアのモラレス大統領はIMF・世銀による貸付制度を「脅迫まがい」と非難し「それに代わる枠組みを世界は待ち望んでいた。新自由主義と新植民地主義の台頭に歯止めをきかすことができる」と力説した。
ウルグアイのムヒカ大統領も「財政難の小国にとって選択肢が増えるのは良い」と期待を寄せた。
世銀やIMFは融資の際、緊縮財政や規制緩和、国営企業の民営化などの厳しい条件を課しており、世銀・IMFを批判する声が高まっている。
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