MylanがAbbottのジェネリック事業の一部を買収、本社移転も目的の一つ

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米ジェネリック医薬品メーカーのMylan は、米医薬品大手 Abbott が保有する米国以外の先進国市場におけるBranded Generics事業を約53億ドル相当のMylan 株式で買収すると発表した。

Branded GenericsGenericsメーカーが、 長期収載品を新薬メーカーから ブランドをそのまま引き継いで生産・販売する医薬品。

Abbott はオランダで設立する新会社に欧州や日本、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの事業(フランスと日本の製造設備を含む)を移し、Mylanがこれと統合する。
Mylanはこれにより、本社を税金の安いオランダに置き、税負担を軽くする。

Mylanは買収により、消化薬のCreon®や鎮痛薬のBrufen®、インフルエンザワクチンなど、5つの分野(心血管代謝、消化器、抗感染/呼吸器疾患、 中枢神経系、女性・男性の健康)での100以上のジェネリック医薬品及びいくつかの特許で保護され成長が見込まれる製品を 借入金を含まないベースで獲得することになる。

これらの製品の売上高は約19億ドルで、Mylanの事業を更に多様化するとともに、米国以外での基盤を強化する。

欧州では、伊・英・独・仏などでの基盤を強化し、売上高をほぼ倍増する。
カナダと日本でも売上を倍増以上とし、豪州とニュージーランド、中欧、東欧でも基盤を強化する。

買収により、Mylanの売上高は100億ドル、EBITDAは約30億ドルになると見込まれる。


他方、 Abbottは新しいMylan
(Mylan NV)の株式1億500万株(現在のMylanの株価で53億ドル相当で、21%の株主となる)を受け取るが、これを比較的早期に売却してさらなる医療機器事業買収や自社株買いなどの資金に充当していく方針。

Abbott は 力強い成長が見込める新興国市場では引き続き、自社でBranded Generics事業を展開していく。オランダ、ドイツ、カナダの製造設備も維持する。
Abbottに残るBranded Generics事業の売上高は29億ドル。

Abbott は2014年5月にチリの製薬会社 CFR Pharmaceuticalsをおよそ29億ドルで買う合意締結を発表した。
急成長市場ラテンアメリカでのブランド後発医薬品売り上げや事業規模が倍以上に増えるとしている。



Mylanの前身の
Mylan Laboratoriesは2007年にドイツのMerck KGaA からgeneric部門のMerck Generic Groupを、また、インドのMatrix Laboratoriesを買収し、genericで世界第三位になった。

Mylanの事業は、ジェネリック、API(医薬品原体)、スペシャリティーの3種類に分類される。
ジェネリック事業はさらに、北米地域、欧州・中東・アフリカ地域、アジア太平洋地域と地域別に分けられている。

日本では20082月にマイラン製薬 を設立、同年5月にメルク製薬を吸収合併した。


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Mylanは買収を機の本社を税金の安いオランダに置き、税負担を軽くする が、同様の動きが広まっている。

最近の動き:

1)Medtronic

世界2位の医療機器メーカーで 心臓ペースメーカーでは世界最大のシェアを誇る米Medtronic は6月15日、アイルランドの手術関連製品メーカーのCovidienを429億ドルで買収することで合意した。
買収により、外科手術の縫合に使用するスキンステープラーや人工呼吸装置といった製品のラインアップが新たに加わり、医療機器分野で競合するJohnson & Johnson に対し優位に立つと見られる。

統合後のMedtronic Covidienの本部があるアイルランドのダブリンを本拠地とする。
Covidienは米マサチューセッツ州に本部を構えているが、2009年からはアイルランド法人として事業を展開している。

Medtronic の海外子会社がここ数年で205億ドルの非課税所得を計上しており、本社がアイルランドに移ることにより、米国の法人所得税率35%の適用を受けることなくこれらの資金にアクセスできるようになる 。
現状では米国でこれを利用しようとすれば、米国に持ち込む時点で課税されるが、アイルランド法人の場合は、米国での課税なしでフルに利用できる。

Medtronic のCEOは、米国外で得た利益をより有効に活用できることについて「米国の医療機器業界を活性化する上で重要だ。当社はこれらの資金から、向こう10年間で少なくとも100億ドルを米国内の事業に再投資する方針をすでに発表している」と述べた。

2)AbbVie Inc.

AbbVie Inc.は米国の製薬会社で、2013年初めに、米Abbott Laboratoriesからスピンオフして誕生した。

同社はアイルランドの製薬大手Shire Pharmaceuticalsに買収提案をしていたが、Shireは7月14日、AbbVieの提案を受け入れると表明、株主に受け入れるよう呼びかけた。

Shire は患者数の少ない希少疾病に強い製薬会社で、競合を避けながら4割弱の高い営業利益率を誇っている。

AbbVieは6月20日、Shireの取締役会に現金と株式を組み合わせた買収案を3度提示したと明らかにした。
3回目の案はShireの1株を46.26ポンドと評価する内容だったが、Shireの取締役会は安すぎるとして拒否した。

今回の提案はShireの1株を53.20ポンド と評価するもので、Shireの1株当たり現金24.44ポンドと新しいAbbVie株式 0.8960 株を与える。
買収が成立すれば、AbbVie株の約25%はShireの株主が保有することになる。
買収金額は従来の総額約270億ポンドから約310億ポンドに引き上げられた。

AbbVieは7月18日、Shire 買収で合意した。

AbbVieは売上高の柱となる大型薬の特許失効を控え、希少疾患に強いShire の持つ医薬品を取り込んで収益強化を図るが、買収後は、法人税率が低い英国に持ち株会社を設立し米国で上場する。

3)Pfizer

Pfizerは本年1月からAstraZenecaに買収提案を行ってきたが、5月26日、Pfizerは 買収断念を発表した。

Pfizerの経営幹部が、買収目的の一つを「効果的な租税負担を構築する」こととした。
買収後は英国に多くの利益を留保・移転し、米国の高い税を回避するというものであった。

2014/5/12   Pfizer が AstraZenecaに買収提案

 

ある国に本拠を置く多国籍企業グループが外国に法人を設立し、この外国法人がその企業グループの最終的な親会社になる組織再編は inversion と呼ばれる。

米国や欧州はこれらの動きを問題視している。

Pfizerの行動や、AppleやGoogleの「合法的脱税」が米国議会で問題となり、課税逃れ阻止の法案提出の動きも出てきた。

2013年6月に北アイルランドで開かれたG8サミットは、首脳宣言に多国籍企業の税逃れを防ぐための国際協調などを盛り込んだ。
経済協力開発機構(OECD)と連携し、「多国籍企業がどこで利益を生み、税を払っているか」を把握する仕組み作りを進めることで合意した。


欧州委員会は6月11日、Apple、Starbucks、Fiat Finance and Trade 3社の法人税に関して、それぞれアイルランド、オランダ、ルクセンブルクの各国税務当局が下した判断について、本格的な調査を開始したことを明らかにした。

企業を対象とした調査ではなく、各国の税制が問題ないかどうかの調査である。

2014/6/13 欧州委員会、Apple等の法人税を調査

 


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